復讐その1
「おい、ユート」
僕とウラが村に向かおうとしていると突然後ろから話しかけられた。振り返ると、そこには僕を森王の餌にした人物の一人、ゴルドがいた。
「お前森王をみつけたんだろ? どこだ? あの森のどこにいた?」
「ゴルド? 貴様がうちのユートを殺そうとしたパーティーの一人か」
僕に突っかかってくるゴルドの前にウラが立つ。
「なんだ女ぁ?」
「なんでもいいだろう。貴様にかまっている暇はないんだ。うせろ」
と、ウラはゴルドを睨みながら言って「行くぞ」と僕の手を引きゴルドの横を通り過ぎる。
「待てコラぁ!」
ゴルドがバチンと指を鳴らす。すると僕の目に前に魔法陣のようなものが出現した。ゴルドの方を見ると、彼の付近にも同じく魔法陣がある。
「まずい!」
僕がそう叫んだと同時に、ゴルドは付近の魔法陣を殴る。彼の手は魔法陣の中に入っていった。すると僕の目の前にあった魔法陣から拳が飛び出した。その拳は僕の顔面に当たり、僕はそのまま後ろに倒れる。
「ユート!」
ウラが僕に駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ」
僕は鼻血を垂らしながらそう言った。実際そんなのに痛くないし。だがウラはお怒りになったようだ。
「貴様!」
彼女の背中からは黒い翼が、お尻からは黒い尻尾がそれぞれ生える。
「ユートに手を出せばどうなるか、教えてやる」
「なんだ、なんだぁ。女が俺とやろうってかぁ!」
ゴルドの近くに再び魔法陣が出現する。同様にウラの真後ろにも魔法陣が現れる。
あの二つの魔法陣は離れているが繋がっている。例えば片方の魔方陣に手を突っ込めばもう片方の魔方陣から突っ込んだ手が出る。
これがゴルドのスキル。
ゴルドは自分の付近に創った魔方陣を殴る。
まずい。
このままじゃゴルドの拳が魔方陣を通してウラに当たる。ウラは見ただけでその人のスキルがわかるが、後ろの魔法陣に気づいていない。
「ウラ!」
僕は心配でそう叫んだが、ウラは後ろの魔法陣から拳が放たれるのと同時にしゃがんでゴルドの攻撃をあっさりとかわした。
「単純で読みやすい攻撃だな」
「ちっ」
ゴルドは悔しそうに魔法陣から手を抜く。
「ところでこの魔法陣は繋がっているんだよな?」
言うとウラは尻尾で真後ろの魔法陣を突いた。その突きはゴルド付近の魔方陣から飛び出て、彼の腹にクリーンヒット。ゴルドは気を失った。
今まで女の人を見下していたに見ていた人間だ。彼のプライドはボロボロだろう。
「いつまで寝ているんだ? 早く起きろ」
と、ウラが倒れている僕に手を差し伸べる。僕はその手を握って立ち上がった。
「嬉しいな」
「何がだ?」
僕がにこにこしているとウラが怪訝な表情で聞いてきた。
「ウラが僕のために怒ってくれたことがだよ」
「其方が私の石集めに必要なコマだからだ」
そうだ。ウラにとって僕は石を集めるためのかんけい道具に過ぎない。ウラは僕を利用している。そして、僕も力を使うためにウラを利用している。
お互いがお互いを利用し合う関係。きっとそれが僕らにとって一番健全な関係なんだろう。