人助けか効率か
情報収集を終え、僕はギルド内にいるはずのウラを探す。
きょろきょろ辺りを見渡すとつまらなそうに肩肘をついてギルドの休憩所に座っている彼女を発見した。
僕がウラに近づくと、彼女はちょっと不機嫌そうに「遅い」と言った。
「ウラが余計なこと言うからだろ? なんだよ、ユー君って」
「其方が私のことをウラと呼ぶからだ。でもたしかにユー君はちょっときもかったな。まあ、そんなことはどうでもいい。石の情報は掴めたのか?」
僕はウラにさっき受けてきた依頼のことを話した。
「なるほど。それは間違いなく私の石だな」
「すぐに向かうぞ」
ウラは腰を上げる。
「ちょっと待って。その前に聞きたいことがある」
額に黒い石が埋まっている魔物の話を聞いたとき僕はいくつか疑問を感じた。
三ヶ月森の中で一緒にいたが僕は結局、彼女のことをなにも知らない。だからこの機会に色々聞いておこうと思ったのだ。
「なんだ?」
と、ウラは不機嫌そうに腕を組む。
「何で君の石が魔物に埋まっているんだ?」
「其方の体内に石が入ってるのと同じ原理だ」
「てことは僕みたいに神力が使えるの?」
「そうだ。ただ扱いきれず暴走状態になっている」
それでも十分脅威だな。
「だったら君は魔物が暴れる度に体力を消耗しているの? 大丈夫?」
「大丈夫だ。前にも言った通り私のエネルギー源は手元にある三個の石だ。残り七個の石は封印で神力を放出し、貯めるという機能を失っている。私のエネルギー源になってないんだ。だからどれだけ神力を使われても私は疲れない」
「じゃあ魔物が使ってる神力は何なの?」
「恐らく私が封印される前に貯蓄されていた神力の残りだ」
なるほど。要するに魔物が神力を使ってもウラには害ないんだな。それなら安心だ。
「封印はどうやったら解除されるの?」
「私が取り込めばいい」
つまり魔物から討伐して、ウラが石を取り込むまでが今回のお仕事ってわけか。
「石回収の手筈はこうだ。まず現地に行って私が石にどの程度神力が残っているか確認する。あとは何もしなくていい。魔物が神力を使い切るまで待つ。神力を使い切ればただの魔物。楽に討伐できる」
「ダメだ。魔物のせいで村の人たちは別の村に避難してる。故郷に帰れない状況なんだ。一秒でも早く魔物を倒して、村を取り戻すべきだ」
「何を言ってる? そんな気にしていられるか。今日で石を全部回収できるわけじゃない。戦いはこれからも続くんだ。其方にもしものことがあっては困る。無駄な戦闘は避けるべきだ」
「それなら僕は石回収に協力しない」
僕とウラはしばらく睨み合う。が、やがてウラの方が……
「わかった、わかった。好きにしろ。その代わり絶対に石を回収しろよ」
「はいはい」