ウラとムーンちゃん
修行を始めて三か月、僕とウラヌスは死の森を抜けた。
この三か月僕らはたくさんの魔物と戦ったけど、どれも同じぐらいの強さだったからたぶん森王には出会ってないと思う。やっぱり森王はウラヌスのことなんだろうか。
ちなみに森にいる間、オウマたちが僕の死亡報告をしているだろうから家族や友人には手紙を出しておいた。
「ウラ、何食べたい?」
森の中ではずっと魔物の肉ばっかりだったので、久しぶりにまともな食事ができるのが僕は楽しみでならなかった。しかしウラヌスは興味なさそうに「私は何も食べない」と言った。
森の中でもずっとそうだ。彼女は何も口にしようとしなかった。彼女の身体の創りはわからないが、一応味覚はあるようなので何か食べればいいのになと思う。
ちなみに僕はウラヌスをウラと呼ぶことにした。
「それより石の手がかりだ」
「そればっかだね。ウラは復活したら何するの?」
「さあな」
ウラはどうでもよさそうに言う。彼女にとっては復活が最優先。それ以外には興味がないようだ。
「とりあえずギルドに行ってみようか。ギルドには色んな人がいるから石の情報が掴めるかも」
「よし。ギルドに向かうぞ」
「先ご飯にしようよ」
「ギルドが先だ」
彼女には悪癖がある。石のことになると身勝手になることだ。いや、石のことにならなくても身勝手だけど。どちらが家来だかわからなくなる。
「わかったよ」
というわけで僕らはギルドに向かうことになった。
ギルドに入ると突然、
「ユートさぁん!」
と赤髪の女の子に抱きしめられた。
「く、苦しい」
首を絞められたときのような声で僕が言うと女の子は離れる。
「ごめんなさい」
彼女はぺこりと頭を下げる。彼女の名はムーン。このギルドで受付嬢をしている可愛らしい顔立ちの女の子だ。こう見えても元冒険者らしい。
「とにかく無事でよかったぁ」
僕の無事を喜んでくれているようだ。ムーンちゃんにも手紙は出したんだけどな。
「ありがと」
僕は笑顔でお礼を言う。
「ところでその人誰ですか?」
ムーンちゃんが冷たい目でウラを睨む。
「え、えーっと……」
「ユー君のお世話になっているものです」
と僕の声を遮って言いウラは僕の腕にしがみついた。
ちょっと。この人何やってんの!
「ユー君? どういうことですか?」
ムーンちゃんの声がどんどん冷たくなる。
「それじゃあな、後は任せたぞ」
そう言い残してウラは去っていく。あいつ……!
「待ってよ」
僕はウラの背中を追おうとしたが、その間にムーンちゃんが割って入る。
「ユートさん、少しお話しましょうか」
ムーンちゃんの顔こそ笑顔だが額には血管が浮かび上がっている。怖い。
一方、ウラは振り返って僕に向けてざまあみろと言わんばかりに舌を出していた。最悪の家来である。