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帰ってきた猫ちゃん  作者: 転生新語
第五章 『それから』
33/64

3 猫ちゃん、電子書籍を前足でめくる

 気が付くと吾輩、一階の部屋で、タブレットで電子書籍を読んで寝落ちしていた。龍之介くんは、たぶん二階で寝ているだろう。改めて画面を見ると、読んでいたのは『それから』であった。(ぞく)に漱石作品の、前期三部作と呼ばれている中で二つ目のものである。


『三四郎』の次に書かれた作品で、その中で描かれた大学生活の()()()()を、別の主人公で書いたから『それから』というタイトルなのだそうだ。つまりは大人の話である。


 大人の話だから、所々(ところどころ)ドロドロとした展開で、だから龍之介くんには見せたくない。なので吾輩、こうして(ひと)りで読んでいる。こういうのを保護者気取(きど)りというのであろうか。


 話は簡単に言えば、不倫のストーリーである。作品の時代には姦通(かんつう)(ざい)というのがあって、現代と違い不倫は法的に(ばっ)せられていたから、大事(おおごと)であった。


 主人公は金持ちの家の次男坊(じなんぼう)で、名前を(だい)(すけ)という。家は長男が()ぐので、その分、主人公は気楽な生活が許されている。次男が家を継ぐのは不測の事態があった時くらいで、つまり主人公は、言わば長男の予備(スペア)である。()助という名前は、そういう立ち位置を表している。


 代助の年齢はそろそろ三十才で、世間体(せけんてい)もあるので、周囲から結婚を(すす)められている。ちなみに代助は無職で、これまで働いた事が無い。しかし父親の援助で一軒家はあるし、結婚すれば(さら)に援助は受けられるのである。主人公に金銭的な不安は全く無い。


 それでも主人公は、縁談の話を受けようとはしなかった。何故なら彼には(おも)(びと)が居たからである……


 吾輩、前足で電子書籍のページをめくる。代助の想い人の女性は三千代(みちよ)といって、(すで)に人妻になっている。三千代の夫は平岡といって、代助と平岡は友人(ゆうじん)同士だ。


 代助は三千代を愛していたのだが、友人の平岡に(ゆず)る形で、平岡と三千代を結婚させる。その方が平岡も三千代も幸せなのだと、自分に言い聞かせたのだろう。


 しかし平岡は、経済的に困窮(こんきゅう)していく。夫婦仲も()めて、裕福な代助とも疎遠(そえん)になる。


 吾輩、更にページをめくる。ざっと話を進めると、代助は三千代と再会し、かつての愛が(よみがえ)る。三千代も代助の事を愛していたのである。三千代は不幸な結婚生活の中、心臓病を(わずら)っている。三千代の書かれ方は同情的で、この女性が罰せられるのなら法律の方がおかしいと思わせられる。


 愛が無い結婚というのは不幸なものだ。前作の『三四郎』でも、そういう事が書かれていたのだと吾輩は思う。猫の吾輩が結婚に付いて語るのも滑稽(こっけい)ではあるが。


 吾輩、更に更にページをめくる。現代も不倫は許されないのだから、明治時代は尚更(なおさら)である。代助と三千代は、周囲の社会と敵対していく事となる。三千代の夫である平岡に、彼の家で代助は自分が三千代と愛し合っていると告げる。その三千代は心臓病が悪くなって寝込んでいる。

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