番外編 第一章のあらすじ
あらすじです。これを読めば、本編を読まなくても第二章以降が読めます。できれば本編も読んでください。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の舞台を現代に変えた、パロディーではなくオマージュ。これまで数多くの作家たちが書いてきた、続編の最新版。時代設定は二〇二一年(令和三年)。
一人称の語り手は五才の無名猫。冒頭、その無名猫が見ている夢の中から始まる。猫の特技はテレパシーや夢見術で、夢の中で猫は星空をタッチパネル式に操作する。星空からは、これまで小説で書かれてきた猫キャラが生まれ、空を駆けていくのだった。
無名猫が目を覚ますと、飼い主である売れない小説家(四十代)が、女性の編集者(二十代後半)から原稿を催促されている。求められているのは新作で、これが売れないと無名猫の主人は、もう出版社から本を出してもらえない。
その最中、無名猫はキンドルで電子書籍を読んでいる。飼い主は、猫が言葉を理解し、時には開きっぱなしのノートパソコンでネットサーフィンをしている事を全く知らない。
書けない飼い主は、同世代の飲み友達(猫は『山師』と呼んでいる)と昼から呑みに行く。
飼い主は結婚しているが、妻とはプチ別居中。一才に満たない息子の龍之介くんは、テレパシーで無名猫と会話ができる友人同士だ。猫は飼い主を救う方法は無いかと、近所の屋敷に向かう。屋敷の前には、ガールフレンドの猫であるシロ(二才未満)が居た。
シロは無名猫に、「貴方は文章の才能があるから、書いてみたら」と言う。無名猫は自分を卑下しているが、シロは今の時代に必要なのは愛であり、マイノリティーの無名猫が愛を叫ぶ事に意味があると説得する。無名猫は家に帰って、龍之介くんとテレパシーで繋がり、小説のあらすじをワープロソフトで書き上げる。それを飼い主が見つけ、喜んで小説執筆を開始するのだった。飼い主が『帰ってきた猫ちゃん』とタイトルを付けて終わり。
コロナ時代は精神も荒みがちで、その中では愛や文学が一層、価値を持つ。無名猫が希望を持って生きていく物語です。
某賞に、第一章部分を短編として応募した時、一緒に付けたあらすじです。少し手直ししてます。
本編で最後に、猫が書いたあらすじは、このあらすじの一部をそのまま使っているというメタ的な仕掛けになってました。
第二章以降は、一章よりも各章が短くなってますので、読みやすくなると思います。