4.平和な日々が終わる時。
日間ランキングで、こんなに上位に上がるとは思いませんでした。
皆様、読んで頂きありがとうございます。
お礼に、『苦労が絶えない面々』の1人の後日談などを。
『ダヤンの場合』
予想もしていなかった………。
魔術団の施設内、リザちゃんの研究室のドアを開けたら、そこにギルバート様がいるなんて。
リザちゃんが、大人の身体になって数日が経った。
今まで通り魔術団に所属し研究を続けるのか、退職し必要時に研究へ協力する形にするのか。
そりゃ、もう凄く揉めた(主にギルバート様が……)
そもそもギルバート様は、魔術団にリザちゃんが所属している事が気に食わないのだし。無事に成長したリザちゃんをさっさと嫁に貰って閉じ込めてしまいたいのだろう。
だがそれに関しても、そりゃ目も当てられないくらい揉めた(主にリザちゃんが……かーわいい!)
我々魔術団としては、リザちゃんが幼女姿でも大人姿でも、何ら変わらない。
いつも一生懸命なリザちゃんを見守り、サポートし、時々愛でる、ただそれだけ。
愛でる対象が愛らしい幼女から、思わず拝みたくなる美女になったとしても、魔術団団員のリザちゃんに向ける気持ちは変わらないのだ。
ただただ、ひたすら可愛い!!
だけどギルバート様にとっては、漸く成長した愛しい婚約者だから、遠慮なく溺愛したいのだろう。
油断すると直ぐ魔術団の施設に入り込もうとするギルバート様対策に、施設入り口に特別な道具を設置する事になった。登録しないと、扉が開かない仕様だ。
つか、そもそも施設は関係者以外、立ち入り禁止だっての。高位貴族なんだから、皆んなの手本の為にもルールは守ってよ。
忌々しい程に整っているギルバート様の顔を思い浮かべ、困ったものだと嘆息しつつリザちゃんの部屋のドアを開けた。
「リーザちゃーん!!依頼分の資料持ってきたよー!」
そして。部屋に足を踏み入れて、俺は自分の失敗を悟った。
何でギルバート様が、ここにいるんだよ!!
入り口のギルバート様対策は、どうしたんだ!!
顔を引き攣らせてギルバート様を見ると、彼は優しく微笑みながら振り返ってきた。
「ああ、ダヤンか。突然乱入してくるから、どこの不審者かと思ったよ?」
え……笑顔なのに、背後に暗雲を感じる……。
「ところで、シュナ?」
ギルバート様は視線をリザちゃんに戻した。
「聞き間違いじゃなければ、今彼は『リザちゃん』って呼んでたと思うんだが。それは誰のことかな?」
やっぱり聞こえていたーーー!!
ヤバいな、と冷や汗を流し必死で首を横に振る俺は視界に入らず、不思議そうにリザちゃんは言った。
「え、私の事に決まってるじゃないですか。ここに入団してから、ずっとリザちゃんって呼んで貰ってますよ?」
……………………。終わった。
そうだよ。団員達にはギルバート様の前では呼び方に注意する様に伝達してしてたけど。
リザちゃん本人には説明してなかったもんなー……。
思わず遠い目になる俺に、彼は笑みを深めていった。
「ダヤン?君とは少し話し合いの場を設ける必要がありそうだな」
ゴゴゴゴと音を響かせながら広がる暗雲に、不吉な予感しかない。
「いやー俺、片付いてない仕事がまだあるんですよねー」
「ダヤン?ギルバート様もお忙しい身です。仕事は私に回していいから、行ってきてください」
ニコニコ、悪気なんて一切ないリザちゃんの天使の微笑みに膝から崩れ落ちる。
「シュナもああ言ってくれているし、少し時間を貰おうか」
無表情で俺を見下ろすギルバート様。
はいはい、分かりましたよ。行けば良いんでしょ。
でも、もし可能なら半殺しくらいで留めてくださいよ。
読んで頂きありがとうございました。
※追記
活動報告の5月19日の所に、サウザリー公爵が少し顔を出しています。
お暇な時に、どうぞ。