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たそがれ怪奇譚第1部 追憶篇   作者: 狐好亭黒介
追憶篇最終話後篇 かなえさま 
38/40

無謀



『神様相手に戦いを挑むなんて君ぐらいだよ?』



祠の側で胡座をかき透き通った金色の眼差しで『かなえさま』はそう言うと



かなえさまの目の前に狐月が光りと共に現れ地面に刺さったナイフを抜き…



矛先をかなえさまに向け



「零二の所へは行かせない…」



呆れた表情を浮かべる『かなえさま』



『彼は私を必要としていたから彼の望みを叶えて後は代償を払えさえすればな~にも問題無かったのに。』



やがて胡座を崩しその場で寝そべるかなえさま




『他の人間だってそうだよ?叶わない願いが叶っちゃうんだよ!買い物する時にお金を払うのと一緒さ』




『何にも払わず物だけ持っていくのはルール違反、考えてもみてよ?払うもの払うだけで良いんだよ?』




『例えそれが命でも……ね♪』




その言動に狐月は堪忍袋の緒が切れ『かなえさま』に斬りかかっていた。



「お前は神じゃない、人の皮を被った忌々しい怪異だ!!!!」



『ふぁ~ーん……』



あくびをしながら狐月のナイフによる、斬撃をかなえさまの影に潜む大蛇が結界を張り防ぐ……



一旦後ろへ回避し、服の両袖から2本のナイフを取り出し



1本目をスローイン



ビュン!!



ナイフの弾道は大蛇の真横を通り過ぎると



転位神光印てんいじんこうい!」



狐月が唱えた術で先程投げたナイフへ瞬間移動すると完全に背後を取り大蛇が現れた『かなえさま』の影に向かってナイフをスローイン



ザクッ!



更に術を唱える狐月



影縫不動陣かげぬいふどうじん



この術により大蛇の動きは固定され



次に空中へナイフを放り投げ「転位神光印てんいじんこうい」で更に高度を上げ『かなえさま』の真上をとると



霊滅光矢れいめつこうや!」



術により5本の光りの矢が生成され、その矢は『かなえさま』を囲むように突き刺さり




そして……




五芒星ごぼうせい蓮獄業火陣れんごくごうかじん)!!」




その術を唱えた瞬間



かなえさまを囲む光りの矢が五芒星を描き



そこからマグマの如く緋色の火柱が立ち上り



周辺を焦土と化した……



狐月がいち早く術を使い回避し……自身が修行の末編み出した現時点で最強の妖術の威力を思い知る……



「ここまで威力があるなんてな……」



だが……




『もう終わりかい?』




かなえさまは無傷だった…



というより今までがサービスタイムだったのであろう…



「そんな……」



『神の天罰を味わうといい。』



その瞬間、かなえさまの背後の大蛇が千手観音ぐらいある腕を伸ばし襲い掛かってきた。



狐月はナイフを空中へスローインし「転位神光印」で上空へ逃げるが



大蛇の口が大きく開くと、そこからサッカーボールぐらいの球体が発射され



空中で弾け、無数の光りの矢となり狐月へ迫る



狐月はすぐさまナイフをスローインしようとするが、矢のスピードは尋常じゃないくらいの早さで狐月に直後……ナイフが手から離れてしまった……



「冗談じゃない!!」



瞬間移動を諦めた狐月は残されたもう一本のナイフを片手に急降下し……



鍛えぬかれた動体視力を駆使し、直撃するものはナイフで弾き…回避できるものは体を僅かにずらし光りの矢を回避した




バシュッ! バシュッ!



「くっ!?」




矢はやがて狐月の右肩と左足の脹ら脛を掠め、頬に切り傷を負ってしまった。



何とか全て避けきり、体を回転させ



大蛇へ妖力を乗せたかかと落としをくらわせた




神震裂落じんしんれつらく!!」




ドン!!




岩も砕く踵落としは大蛇の張った結界にヒビを入れた……



『今のはまぁまぁだったよ?』



ブワァン!!!!



かなえさまは圧縮した妖力を放出し狐月を吹き飛ばし……



狐月は息を切らしながらも空中で受け身をとり着地したと同時に満面の笑みを浮かべた『かなえさま』が白い刃の刀を手に狐月へ斬りかかる。



『ちょっと遊ぼうよ!』



最初の不意を突かれた一撃を体を反らしバクテンで後方へ回避すると残された1本のナイフを逆持ちにし次の攻撃に備えた




『えい♪やぁーとぉー♪』




シュンッ!シュンッ!シュンッ!



掛け声とは裏腹に素早い剣技



的確に急所を攻め逃げ道を完全に塞ぐ隙のない剣術…



「まだまだいくよ~」



今度は刀を突きだし弾丸と等しい速さで高速の突きによる攻撃を繰り出す



ギリギリ目で追える速さだが、回避するだけがやっとの状況……



どこか……どこか隙はないかと攻めず探りを入れる狐月……



突き刺さしに不規則で高速の斬撃……



手や膝、脇腹等に斬撃がかすり、傷が増えていくがそれでも攻めない狐月



そして……



「(突破口が見えた。)」



それは突き刺さし攻撃から不規則な斬撃による攻撃への切り返し時



僅かにロスタイムがあること……



不自然だが……この二種の剣術は全く別の型だ……



月影との修行で叩き込まれた知識に



「使う者によって剣技は多種多様だが、癖や動作は個人だけのもの」だと……



つまり突きと斬撃の切り返しの際もその癖が残るということ。



『もう首ちょんぱしてもいいよね♪』



かなえさまが突き刺さし攻撃から不規則な斬撃による攻撃へ切り換えた瞬間



狐月のナイフが『かなえさま』の刀の刃を滑るように懐に入り遂にかなえさまの手元から刀を弾くことに成功した



「くらいやがれ!!」



狐月は『かなえさま』を蹴り飛ばすと



ナイフをスローインさせ



グサッ!!



かなえさまの心臓目掛けてスローインしたナイフが突き刺さり



起き上がった『かなえさま』が不思議そうな顔で胸に刺さったナイフに手をかける



『あらら~抜けない。』



狐月は全妖力を集中させ妖術を放つ



紅花朧一夜こうかおぼろいちや!!」



術を唱えた瞬間……



かなえさまの心臓に突き刺さったナイフは赤く染まり、紅炎が燃え上がると



かなえさまの肉体が朧月のような赤い球体へと封じ込まれると



空中へ舞い上がりまるで花火のように



バァンッ!!と綺麗な赤い彼岸花のように散っていった。



「はぁ……はぁ……はぁ……」



体力も妖力もほとんど使い切り立っているだけでやっとの狐月……



渾身の一撃で『かなえさま』を遂に倒したかに思われた





『いや~夏の風物詩は花火に限るけど、ここまでのようだね。』




まるで何事も無かったように『かなえさま』は無傷であった……



既に術をねる妖力も残されていない狐月を大蛇の無数の腕により拘束され



かなえさまが持つ白い刀の刃がちらつく……



そして……狐月はようやく『かなえさま』に抱いていた謎が解決した



それは……かなえさまの本体は人型のほうではなく大蛇の方だということに……



『ま、暇潰しにはなったかな。大丈夫だよ零二も直にそっちに逝くから。』



『彼とずっと一緒にいられるから君の願いはもう叶ったも同然だよ。』



かなえさまは微笑みながらそう呟くと狐月の心臓目掛けて一突きしようとした時



とある介入者によってそれは防がれた。



「僕ならここだ、かなえさま!!」




それは先程まで狐月によって気絶させられていた零二であった。





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