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たそがれ怪奇譚第1部 追憶篇   作者: 狐好亭黒介
追憶篇最終話前篇 神隠し
32/40

不向き

狐月は焦りを感じていた…



『ヒトクイ』という怪異の遭遇。



自身の得意とする妖術と体術がヒトクイには通用しなかったからだ…



月影と死神の協力があって退治することが出来たが…



二人が来なかったら…零二や淳也…理佳を守ることは出来なかったと思う…



心の何処かで慢心していたかもしれない…人とは違う力があることに…



ヒトクイだけではない…恐らくこれからもヒトクイような私の手におえない怪異が現れるかもしれない…



もしもの時の私なのに……



その私が皆を守ることが出来なければ……






バチンッ!!





「いっ!!」



狐月の左肩に警策を振り下ろされ…



月影が一言



「雑念がありますよ。」 



そう言うと月影が持つ警策が狐月の背中にあて



バチンッ!!



と背中に打ち付けた。



線香が完全に燃焼すること三本目…



大体一本の線香が完全に燃焼するまでに約1時間…それが三本…つなり座禅を3時間続けたことになる…



次に狐月は神埼家の屋敷に隣接されている道場に移動…







正座のまま剣道の防具を身につけ竹刀を手に取り立ち上がり…



目の前の相手に一礼……相手は月影…



互いの竹刀の矛先が向き合い…




出方を探り…最初に動いたのは狐月だった



「面!!」



振り下ろした竹刀が鞭のようにしなり月影の面を狙う…



バチンッ!!



だが簡単に防がれてしまった。




続けて、面、胴、小手と狙うがそれらも竹刀を巧みに構え防がれ…



攻撃を防ぐばかりでなかなか攻撃に移らない月影



狐月は月影に対し



「本気でこいよ……ヒトクイを圧倒した時の剣技を……」



「…………そこまで言うのでしたら。」




狐月が一旦後ろに下がり呼吸を整え…



ダン!ダン!



強く踏み込み面に向かって竹刀を振り下ろす。



「面っ!」



その時……月影は狐月の攻撃をするばかりでおろそかになった足元を軽く引っかけ



ゴテンッ!



「!?」




転ばせ、たまらず起き上がり後ろに下がる狐月



そして……竹刀を構える間もなく



急速接近した月影の横からの一撃で竹刀が狐月の手を離れ



月影の矛先が狐月の目と鼻の先で静止し



「勝負ありですよ。」



僅か二撃で狐月は敗れた。




二人は防具を取り…その場で正座し月影は狐月に…



「やはり…あなたは剣術には向いてません。」



「…………」



無言の狐月に続けて話す月影。



「まず、力が入りすぎています…これでは一撃目はよくても二、三と一撃目と同じく全力で繰り出してはスタミナを早く消耗してしまいます。」



「体術と妖術を扱っているから相手に攻撃の隙を一切与えず攻め続ける戦法は剣術では自殺行為に等しいですよ。」




「現に私があなたに足を引っかけ転ばせたのは、あなたが前しか見てない何よりの証拠……」




「座禅の時もそうですが、ヒトクイの一件以来どこか焦りを感じているようですが……それでは的確な見極めはおろか剣術に必要な判断力が皆無です。」




剣術を扱う月影の辛い発言が狐月をブスブスと突き刺していく。



「月影の言う通り、私には剣術は不向きなのは承知のうえだ…でも私が強くならねば…零二達を守ることなんて…」

 


狐月の握りこぶしが強くなり手から血が滲み出る…



「なるほど…それで私に剣術を教えてほしいと……気持ちは痛い程わかりますが……」



「ですが…無理に会得しようとするのは逆効果……実戦ではまず使えません。」



「だからあなたには体術と妖術…これを駆使した戦法の方があっています…もしかしたらナイフを使った戦術の方が良いかもしれませんね。」



月影が提案したナイフを使った戦術…



狐月はこの戦術に妖力を乗せた体術をフルにいかした新しい戦法の修行を続けた。



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