6 多いのよん!
ガキ大将はつっかかって来た。
「俺達の縄張りで仕事すんなよ? ここで流星打ちしたいなら、みかじめ料を払いな?」
2人の子分が調子に乗ってぎゃんぎゃん喋るので、ガキ大将は「うるせぇ!」と怒って黙らせた。
じゃじゃ馬アルミはガキ大将のケンカを買う姿勢を見せる。
「ここがいつからアンタ達の縄張りになったのよ? 自分達の店も持たないフリーランスじゃん」
「うるせぇ! 俺の居る所、歩き回るとこ全部が縄張りだ!」
「そうやって他の流星打ちから仕事を横取りしてんでしょ? 町を守ったから金払えって客にたかってんでしょ? サイテー」
「このじゃじゃ馬! 店持ってるからってカタギなのか? 今年でお前の店のガキは隕石で、何人死んだよ? ぁあ? 店で働いててもお前はゴミ溜め育ちだよな〜」
ガキ大将が大笑いすると、あおるように2人の子分も笑った。
言われたくないことだったらしく、歯ぎしりして悔しがるアルミは、3人組の後ろの空を指差して叫ぶ。
「あっ!? 隕石!」
ガキ大将と子分は鳥が天敵が来て驚き群れが一斉に首を振り向くように、背後の空を見てハンマーを構える。
その間にアルミは地面に落ちた拳よりも大きい瓦礫を拾って、頭上に放り投げるとハンマーで大きく振りかぶり、スマッシュ打ちで鉄球に瓦礫を当てて飛ばす。
風のように気持ちの良い金属の当たる音が響いた。
ガキ大将がこっちに目を戻すと同時に、アルミへ文句を言いかけた。
「おい、アルミ。隕石なんて降ってこねぇ……」
じゃじゃ馬アルミが打った瓦礫は、大砲のように真っ直ぐ飛んで、ガキ大将のデッカイ鼻先に命中。
「ぎゃふんっ!」とガキ大将は叫んで頭と背中がくっつきそうなくらいのけ反った。
2人の子分が驚く間にガキ大将はぶっ倒れた。
い、痛そう。
僕も倒れたガキ大将に釘付けになってると、じゃじゃ馬アルミが「逃げるぞっ!」と言って音速と共に走るので、わけわからない内に走った。
走る背中をガキ大将の怒鳴り声が追いかけた。
かなり走って街並みも変わり、隣の地区まで来た。
僕は膝を付いて激しく息を切らす。
ハンマーを持って走るから余計にキツイ!
アルミはジョギングでもしたくらいの余裕で、汗を腕で拭っていた。
「アルミ。いいの? あれはスゴく痛いよ?」
「いいのよ。アイツら嫌いだから」
「なんか、流星打ちもいろいろいるね?」
「町中にいるわよ。流星打ちは街の組合に登録すれば、簡単になれるから」
それを言われて、この町に来たばかりのことを思い出した。
「あ! 僕も役場で流星打ちの登録した」
「でしょ? でもね。流星打ちになれるのは子供の時だけね。私達は成長期だから受けた刺激をなんでも吸収できる柔軟なセンスを持ってるわ。隕石の落下は瞬きした時には着弾してる。落ちる寸前の隕石を目で追える動体視力も、隕石を打ち返す為の身体作りも、子供の時でないと身につかない」
「それで役場には僕と同い年の人が、いっぱい居たんだね?」
「まぁ、それだけじゃないわ。流星打ちはすぐお金になるの。その場で現金払い! だから身寄りの無い子供や家でした子供、家族がお金で困ってる子供が殺到するのよ」
最後の話は僕のことだな。
アルミの話は続く。
「たまに大人の流星打ちもいるけど、子供の時から流星打ちになった人しかいないし、大人になると隕石を打ち返す能力も衰える。子供の時に流星打ちでお金を稼いで、大人になって引退した後、貯めたお金でお店を開く人がほとんどね」
「じゃぁ、流星打ちの人って町にかなりいるんだ?」
アルミはポニーテールを揺らし振り向き様、片目をパチリと閉じて、伸ばした人差し指をアゴに当てながら返す。
「それくらい、町の流星災害は多いのよん!」




