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第一話 日本一危険な田舎町

 ここはT県T市の郊外にあるT町。どこにでもある田舎ののんびりした町であった。この田舎町がある日から日本中の注目を浴びる事になった。日本中を脅かす事件が起きたのだった。


 その事件の犯人中川卓容疑者はごく普通の真面目なサラリーマンだった。彼はその朝いつものように家を出て駅への道を歩いていた。駅への道は出勤途中の人達で混んでいた。目撃者によると中川は突然大きな奇声をあげて歩道にうずくまったそうだ。何が起きたと周囲が注目する中、中川は立ち上がると凄いスピードで走り始めたそうだった。その際に進路上の人達をなぎ倒し、出勤途中の人達で込み合う駅に駆け込んだというわけだ。駅に着いた中川の手にはどこで手に入れたか一本の包丁が握られていた。奇声を上げながら包丁を振り回す男の出現に、込み合う駅はパニックに陥った。パニックになりながら逃げ惑う人々を次々に切りつけ、ねじ伏せあるいは殴りつけながら死の行進を中川は続けた。ようやく駆けつけた警察官達によって中川の死の行進も終わるかと人々がほっとした後もそれは終わらなかった。とても人間技とは思えない怪力で警察官達を投げ飛ばし、あるいは殴り飛ばしたからだった。投げ飛ばされた警察官は警告の後発砲した。弾丸は足に当たったが、それでもひるまず撃った警察官を切りつけようとした中川を別の警察官が射殺した。こうして、日本犯罪史上でも類を見ない凄惨な通り魔事件は幕を閉じた。死亡者は中川を含めて5人、負傷者は30人を超えた。


 警察は中川の家族に聞き込みをし、会社関係、交友関係を調べたが凶行に至る原因はわからなかった。誰もが判で押したようにあんな真面目でおとなしくていい人がまさか信じられないと言ったからだ。納得のいかない視聴者に代わってマスコミ各社も調査したが、はっきりとした答えは出なかった。現代社会のストレスに押しつぶされての犯行だとマスコミと識者達が結論付けようとしたところに第二の事件が同じT町で起きた。


 犯人の高原静子容疑者は子供一人と旦那の三人家族のごく普通の主婦であった。その日も旦那と子供を送り出して家事を済ますと回覧板を持って家を出た。隣家のA子は疑いもなく静子を招き入れ、回覧板の代わりに包丁による死の回覧を受け取った。こうやって、在宅していたご近所さん達を次々と刺し殺して回った静子は異変に気付いて戸を開けなかったご近所さんによって呼ばれた警察官数人に取り囲まれた。警官は刃物を渡すように警告したが、一向に言う事を聞かない静子にしびれを切らして飛びかかった。150センチにも満たない小柄なおばさんが相手である。刃物さえ気を付ければ簡単に取り押さえられると警察官達は油断していた。さすまたで包丁をたたき落とすと、一人の警察官が飛びかかったのであった。しかし、あろうことか取り押さえられたのは飛びかかった警察官の方であった。静子はその若い警察官の腕を躊躇することなく折った。その音と若い警察官の悲鳴に我を取り戻した警察官達が一斉に飛びかかったが、静子は素早く起き上がりそれをかわした。そして包丁を拾おうとしたのを撃った警察官の判断は間違ってはいなかった。静子は撃たれても怯むことなく、包丁を拾い上げ襲ってきたからである。振り下ろされた包丁によって一人の警察官が切りつけられた。その警察官が切り倒されると、残りの警察官は一斉に発砲した。手足ではなくて急所を狙ってであった。こうして高原静子による死の回覧事件は幕を閉じた。実に死者7人負傷者5人の大惨事であった。


 こうして、ただの田舎町が日本一危険な町として全国の注目を浴びる事になった。なぜ、ただの田舎町に殺人事件が連続して突然起きたのか警察も政府もはっきりとした理由を言わなかった。いや、言いたくともわからなかったのだ。マスコミや識者はただの偶然が重なっただの、T町の生活習慣が市民に悪影響を与えているだのもっともらしい事を言ったがどれもこれも決め手にかけていた。T町の町民はキツネが憑いただの、悪魔が憑いただのうわさし合い戦々恐々の日々を送っていた。


 T市の隣の市のA大学に通う一年生の田中一郎もその一人であった。この町はどうなってるんだと思っていたが、同時に半分他人事であった。なぜなら、ただの偶然が重なっただけであり、自分には関係のない事だとも思っていたからだ。


 学校に行くために、いつものようにアパートを出て、駅までの道をのんびりと歩いていた。しばらく歩くと、ただならぬ気配に足を止めた。男が若い女性に馬乗りになり刃物でめった刺しにしていたからだ。


『やばい。逃げなければ。』


 しかし、突然の出来事に凍り付いた体は高速で回る頭に反して動かなかった。


 案の定、一郎に気づいた殺人鬼は立ち上がるとまさに鬼人のスピードで走ってきた。


『ああ、オレは死ぬんだな。でもまだ死にたくねえよ。誰か助けて。』


 腰が抜けた一郎はその場にうずくまった。その時だった。




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