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第10章 天使の証明
王宮の林の中に、シンプルな神明造りの神殿があった。この伊勢神宮似の建物の中で、五郎八姫の即位の礼が執り行われていた。
神殿の祭壇には、邪馬台国時代の古い銅鏡が飾られていた。鋳造技術が低いので、中国製と違って鏡の縁がクリアになっていないのが、邪馬台国の銅鏡の特徴である。祭壇の前で神官団が祝詞を挙げ、卑弥呼のような格好の五郎八がそれを正座で聞いていた。純白の装束を着た彼女は、伏し目がちで表情も固く、その小さな体に清らかな悲しみが息づいていた。
祝詞が終わった。神官の一人が、金銅の歩揺冠(卑弥呼が被っているような金の冠)を五郎八の頭に被せた。
玉座の間に、王国の重臣数百人が集結していた。誰もが絶望した表情だった。
青服の近衛隊を従えて、玉座の間に五郎八が現われた。重臣は平伏して、幼い女王を出迎えた。五郎八は赤絨毯の真ん中を歩いて玉座に向かった。歩くたびに冠の飾りが揺れて、鈴のような音が鳴った。重臣はその痛々しさに涙を流した。大竹だけは笑顔だった。
五郎八は玉座に座って、一同に最初の命令を下した。
「今日より、わらわがお前達を指図する。現在、国家は未曾有の国難に瀕している。この危機を乗り越えるため、長らく空位だった宰相職に大竹伯爵を就ける。伯爵の命はわらわの命と思え。伯爵が白を黒と言えば、真っ黒と言え。違背は許さない。伯爵」
大竹は立ち上がって、重臣を見下した。彼らは忌々しげな顔で頭を下げた。
「それでは、皆様に勝利の秘策を伝授いたします」




