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同じ頃、誰もいない本丸御殿玉座の間で、愛王妃と大竹が向き合っていた。
愛は怒りの余り、ダイヤの杖を大竹に投げ付けた。彼の額から黒血が流れ落ちた。
「よくもそんな事!夫を殺しておきながら!お義父様も、叔父様も!」
大竹は手で血を拭ってから、冷静に答えた。傷はすぐに塞がった。
「先王陛下を害したのは田村佑国です。王子をお止め出来なかったという意味では、僕が殺した事になります。でも正直、王子が死んで一番ほっとしているのはあなたでは?」
「……この国から追放します。永久に、二度と顔を見せないで」
「姫様がご帰城され次第、すぐに即位の礼を執り行います。王太子妃様には鶴山城にお移りいただきます。女王様にお会いしたければ、一週間前に御相談ください。その間、僕は城を離れます」
大竹は手に付いた血を払った。その血は黒いカラスの群れに化けて、王妃の頭上に渦巻いた。
「そう、それが目的だったのね。この国を、最初から乗っ取るつもりで」
「この国だけじゃない。大陸全土をあるべき姿に戻します」
「あの子はどこ?一目でいい、最後にあの子に会わせて」
「それが……あれが噂の反抗期かな?まあ、いずれ戻ってくるでしょう。どうせどこにも行けませんよ」
(続く)




