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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第9章 赤き血のイチゾク
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9-11

 大広間の山崎は、上機嫌で酒盃を重ねていた。長谷川がやってきて、小声で彼に告げた。山崎は手を叩いて、客の注目を集めた。


「皆さん!殿下がいらっしゃいます!盛大な拍手でお出迎えください!」


 会場の電気が落とされて、スモークが焚かれた。ドアにライトが当てられた。楽団は帝国国歌を演奏し、招待客は笑顔で拍手した。

 ドアから、殿下ではなく秋水が現れた。

 神々しいほど清らかで、そして帝王の威厳に溢れていた。白のローブデコルテ姿。胸に大綬を掛けて、手にはオペラグローブを付けて、杖の代わりに鞘袋の刀を持っていた。銀髪を下ろして、銀のティアラを被っていた。慎ましく化粧された瞳には、神であろうと平伏させる絶対的強者の光が宿っていた。

 客は拍手を止めて、穢れない高貴な美少女を土下座で出迎えた。楽団も演奏を止めて、床に這いつくばった。立っているのは山崎と長谷川だけになった。

 秋水に遅れて、アリサ殿下と、太刀持ち役の女官がやってきた。彼女は源氏物語から抜け出てきたような十二単姿で、長い髪を床まで垂らし、顔を白く塗ってマロ眉を描いていた。見た目は雅で上品で、普通ならこれで皆騙されていただろう。しかし秋水と並ぶと、百姓娘とワルキューレほどの違いがあった。内側から滲み出る品格や、生まれた時に付いていた「差」のようなものが、彼と全く違っていた。

 殿下は秋水に掴みかかろうとした。


「てめえざけんなよブス!何勝手してんだよ!」


 皇女にあるまじき言葉だった。聞いた人々は、彼女は偽物だと確信した。刑事は秋水を守ろうとして、殿下と揉み合いになった。十二単の袖がずれて、生々しいリストカット痕が露わになった。

 皇女はシルバを思い切り殴った。彼の唇が切れて、青い血が出た。シルバは痛そうに、でも嬉しそうに血を拭いながら、秋水の耳元で囁いた。


「公妨(公務執行妨害)で現行犯逮捕します」


 秋水は首を横に振って、怒り心頭の山崎と、青ざめた長谷川を睨んだ。二人は目力に気圧されて視線を反らした。秋水は二人に尋ねた。


「ここにあるのは、あの鷹の絵以外全て偽物です。あなた方は、一割の真実と九割の嘘で被害者を絡め取っていった。事件の夜、あの絵は葦河離宮に飾られていました。そして襲撃者は犯行後、離宮に火を放った……どこから手に入れたんです?」


 山崎は女官から太刀を奪って、鞘を払った。刀身は赤く塗られていた。


「皆さんご覧ください!これが真なる皇帝の証、神剣血吸の太刀です!こいつは名和のスパイだ!皇帝を貶めようとしている!」

「山崎寿一。セルゲイモストボイ。あなた達には大逆罪の嫌疑がかかっている。裁判なしで今夜処刑されるか、今すぐ詐欺罪で自首するか、ここで選びなさい!」

「俺に何かあれば!千代浜伯爵はお前を絶対に許さないだろう!」


 外がざわついた。黒服の精鋭部隊を引き連れて、先生、テリー、そして坊やが入ってきた。

 山崎は「誰だお前は!」と叫んだ。シルバは「千代浜伯爵、です……」と答えた。

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