80/136
9-4
田舎村の小学校の体育館で、子供達がバスケの授業を受けていた。スーツを着た秘書役のテリーが、コートに入って熱血指導していた。
「ディフェンス!サボらない!」
「リバウンドしっかり!簡単な事だよ!」
生徒は胸を反り返らせて敬礼し、「イエスマム!」を連呼した。それを見て、普段内気な三つ編みの女の子が楽しそうに笑った。
坊やと先生は、スコアボードの後ろに立って、秋水の事を話していた。
「最近よく来てたよ。ずっと悩んでた。秋水に避けられていたの、気付いてた?」
坊やは頷いた。
「君と話すのが怖かったって。君が変わったかもしれない、それが分かってしまうのが。そうさせたのは、九九%君の責任だからね?」
しかし先生は先生で、別の悩みを抱えているようにも見えた。大竹を倒すと言いながら、こんな田舎で子供の相手をさせられている。坊やは彼女の美しい横顔をじっと見つめた。
「……私の事はどうでもいいの。明日有給取るから、一緒に探しましょ?」
校庭の木に、カラスの群れが止まっていた。群れは体育館の方をじっと見ていた。




