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街の郊外に、千代浜軍の司令基地があった。基地の中央に、赤レンガの洋館が建っていた。その洋館の作戦室で、司令と秋水、幹部スタッフは、将校から損害の報告を受けていた。報告を読み上げる者も、それを聞く者も、等しく虫のような目をしていた。耳を塞ぎたくなる数字も、彼らは淡々と受け入れた。サンキュー司令だけは微笑を浮かべていた。
報告が終わると、スタッフは作戦室を退出した。秋水は椅子に座ったまま、じっと外を見ていた。スタッフの一人が労わった。
「軍師殿もお疲れでしょう。少し散歩でもなされてはどうですか」
秋水は疲れた顔で司令部を出た。今日も暑かった。林は青々としていて、セミが高らかに鳴いていた。時折、遠くから砲声が聞こえた。
演習場で、新兵が銃剣訓練を行っていた。真面目な指揮官がホイッスルを吹き、汗だくの新兵がそれに合わせて木銃を突いていた。街の外で行われている事とは正反対の、部活のように爽やかな光景だった。街の外に出たら役に立たないだろうとも思われた。
指揮官は訓練を一旦止めた。突然現れた常勝の美少年軍師を見て、新兵はざわついた。
「一旦止め。知っている者もいるだろう。我らが軍師殿だ。挨拶しなさい」
新兵は声を合わせて「お疲れ様です!」と挨拶した。彼らは純粋で、溌剌とした目をしていた。国家や上官に対して何の疑いも持っていなかった。彼らの眩しすぎる目を、命令一つで殺す事になる秋水は、視線を反らさず見つめ返した。
今日は暑いからと、指揮官は給水休憩を取った。新兵は喜んで水場へ走った。「元気が有り余って困ります」と指揮官は笑った。秋水は残った新兵に尋ねた。
「毎日お疲れ様です。困っている事はありますか?」
「いえ何も。上官の皆さんも良くしてくれますし、諸先輩方も親切に教えてくださいます。不満は全くありません」
「毎日ベッドに寝て、美味しい物を食べてます!シャワーなんてものがあるって、ここに来て初めて知りました!」
「昨日のお弁当にはシャケが付いてたんです。こんなご馳走を食わせてもらって、何の手柄もなく田舎には帰れません!」
秋水は挨拶した後、その場を逃げるように立ち去った。最初は駆け足で、次第に走り出し、いつの間にか、彼は基地外れの林までやってきていた。
林の近くに、白い大きな病院が建っていた。林の中に、五十メートルプール状の大穴が掘られていて、その中に、切り落とされた手足が大量に捨てられていた。プールには青い血が溜まり、ハエもたかっていた。
病院から、看護師が荷車を押して出てきた。荷台には、手術で切り落とされた手足が乗っていた。看護師はプールに手足を投げ捨てると、鼻歌を歌いながら戻っていった。




