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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第6章 革命のヒーロー
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6-4

 フリゲート艦の一室で、痴女スーツの先生は雑誌や新聞を切り取って、スクラップブックを作っていた。

 部屋は様々な雑誌に埋もれていた。淡々と事実のみを報じる一流紙から、イケイケドンドンで威勢のいい夕刊紙、ある事ない事書き立てる週刊誌まで沢山あった。

 先生はインタビュー記事を読んだ。三刀流の美少女剣士の師匠を名乗る男が、記者に「狼と森で暮らしている所を出会った」「好物はガマガエルの卵の甘露煮」等々と答えており、先生は「美少女しか合ってないじゃない」と苦笑いした。

 報道は真実四割、虚構六割といった感じだった。マスコミはこの世に存在しないヒーローを作り上げていた。人々の頭の中では、彼は伝説の勇者だった。悲劇の少年が街を救い、強大な敵に立ち向かっていく英雄譚に、誰もが酔いしれていた。

 記事の日付や内容、記者名を注意深く見ていくと、各紙が左派政党の党員向け機関紙「あけぼの」を後追いしている事に気付いた。普通の人はまず読まない新聞なので、世間は、大手が坊や報道の先陣を切っているように感じているだろう。もちろん、あけぼのにも嘘はあったし、政府批判の視線から否定的な論調も多かった。しかし彼らは、栄岡から千代浜までの逃避ルートや、千代浜城での大竹と譜代とのやりとり等を、ほぼ正確に報じていた。坊や報道のエース記者はウェインという男だった。

 ドアをノックして、テリーが入ってきた。先生は鼻歌混じりにあけぼの記事を切り取って、スクラップブックに貼り付けていた。一見、弟子の活躍を喜ぶ師匠のようにも見えた。テリーは今後の予定を伝えた。


「一時間後に作戦開始になります。本隊は笹浜海岸に上陸後、八幡台場を目指します」

「そう。鬼が出たら信号弾で教えて。それまでここで待機する」


 テリーは千代浜城の事をまだ悔やんでいるようで、用事が終わっても、そこから立ち去れずにいた。先生は作業しながら言った。


「姿を晒してしまったのは、彼の不用意な仕掛けから始まるミスの連鎖と、それをフォローし切れなかった私のせい。悔やむ気があるなら、あの学校にプールと無料給食付けて」


 テリーは無言で頭を下げて、その場を後にした。

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