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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第6章 革命のヒーロー
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6-3

 早朝、千代浜海軍の小艦隊が、瀬戸内海で言えば松山の沖合に現れた。普段は交通量の多い大河も、戦時の今は静まり返っていた。自由に行き来出来るのは、制海権を握った千代浜軍だけだった。

 敵は松山港を固めていた。歩兵はコンクリートの胸壁を築いて立て篭もり、砲兵は大砲を沖へ向けていた。

 提督が千代浜小艦隊を指揮していた。敵を前に、彼は苛立ちを隠そうとしなかった。


「この俺が囮だぁ……こんな米ヌカみたいな敵、川に流してやってもいいんだぞ!」


 松山とは正反対の、瀬戸内海で言えば西条の沖合に、千代浜軍のフリゲート艦一隻が現れた。敵は松山攻撃ばかり気にして、裏の西条は全く無防備だった。

 坊やと秋水、ピアースの三人は船の甲板に立っていた。皆新しい黒の軍服を着ていた。

 東西に流れる大河を挟んで、北岸が千代浜領、南岸が結城領である。北も南も似たような風景だった。白い綿畑があって、豪農の屋敷が建っていて……

 秋水は「北と南の違いが分かりますか?」と坊やに尋ねた。


 A「線路の数」

 B「国の仕組み」

 C「方角」

 ↓

 A「ええ、そうです。鉄道が未発達なんですよ」


 B「物作りが好きな北は新興メーカーが、物の売り買いが好きな南は大財閥が力を持っています。何も決められないのは同じですが、南は変わろうとする意思さえありません。陸に打ち上げられたクジラのような国です」


 C 秋水「ハァ……」 

 ピアース「神様に脳みそ返品してこいよ」


 間違い探しのように似たような風景だったが、北は鉄道が、南は港が発達しているという違いがあった。ピアースは南を眺めながら説明した。


「一番の違いはプライドだな。南はそれはもう誇り高いよ。兵士なんて本当に最後の一兵まで戦う。絶対降伏しない。将軍もプライドの塊だから、絶対にミスを認めないし、ミスしても直さない。戦い続ける一流兵士と、ミスし続ける三流将軍の軍隊だ。

 北は逆にプライドゼロ。流行ってる物が好き。熱しやすく、冷めやすい」

「南はアウタルキー(自給自足)な国産主義に拘っていますね。軍はまだマシですが。

 鉄道を建設するには、海外からお金を借りてこないといけません。南は外国に頭を下げるのを嫌がりました。父(田村佑国)は他人のために喜んで土下座する人でした。

 鉄道は船より早い。その鉄道と船を敵は使えない。敵に百万の兵があったとしても、この攻撃を弾き返す事は出来ません」

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