5-11
土埃が濛々と立ち込めるクレーターの中心に、坊やは荒い呼吸で立っていた。
彼の足元に、裸のテリーが横向きに倒れていた。無駄な贅肉が付いていない、女性アスリートの体だった。手足は引き締まっていて、お腹はうっすら六つに割れていた。それでいて、腰やお尻の辺りは女性的な柔らかさに溢れていた。
坊やはソハヤを抜いて、彼女の脇腹を突き刺した。引き抜くと、青く光る剣先に、体内に潜んでいた大竹の手が刺さっていた。手は湯気となって消滅した。テリーの瞳の色が、赤から元の緑に戻った。
ソハヤの暖かい光が周囲に満ちた。「どうして……?」テリーは消え入りそうな声で尋ねた。坊やは剣を鞘に納めて答えた。
A「テリーが助けを求める目をしていた」
B「敵が友になる。その時、敵を完全に滅ぼしたと言えないか?」
C「いいからおっぱいを見せろ」
↓
A「助けなんていらない!あのまま死なせてくれたらどんなに……」
B「今まで、負けたら死ぬって思ってた。負けたら、こんな気持ちになれるのね。勝ちしか知らないって、とても脆い事……」
C「私の見たって何も楽しくないよ。鈴虫がキュウリ食べてるの見てる方が百倍楽しい」
坊やは自分の上着を裸のテリーに掛けてあげた。彼女はゴロンと仰向けになって、坊やを見上げながら優しい気持ちを伝えた。
「蛇の中で、色んな事を考えてた。どんな事を思っても、最後は必ず家族に行き着くの。おじいちゃんに会いたい、パパに会いたい、アシュリーに会いたい、死んだママに会いたい。蛇の中で、ずっと助けを待ってた。また、皆に会える。ありがとう……」
坊やは頷いた。ずっと眉間に皺を寄せていたテリーが、穏やかな表情で微笑んだ。
しかし分身でこの強さ。本体を倒すには戦力が足りない。雉とか猿とか、ともかくお供を増やす必要があった。そうして、思考の死角から強力な一撃を叩き込む……
(続く)




