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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第5章 城巻き姫
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5-7

  テリーの緑の目が赤く光った。彼女の口から、ペディキュアを塗った大竹の手が半分ほど出てきて、またすぐに引っ込んだ。テリーは縋るような目で二人を見つめた。彼女の全身が、蛇の抜け殻状に白く乾いていった。

 やがて顔の部分が破けて、中からぬるりと怪物が出てきた。上半分がムキムキ豚ゴリラ、下半分が太くて短いツチノコ。蛇メスゴリラだ。

 坊やは腸を消してかゆうまモードに変化した。そして一気に突っ込み右ストレートを打ち込んだ。

 蛇ゴリラは左手でパンチを受け止めて、右手のアッパーで坊やを吹っ飛ばした(坊やは咄嗟に左でガードしたが、馬鹿力の蛇ゴリラはガードごと持っていった)。坊やは天井を突き破って二階に消えた。

 蛇ゴリラはジャンプして、天井の穴から二階に移動した。二階の端で、血まみれの坊やが這いつくばっていた。かゆうまモードは解除されていた。左腕は砕けて千切れかけていた。腹はトイレットペーパー大の木片に貫かれ、両足は知恵の輪の形に曲がっていた。

 一階の階段から、先生が上がってきた。背を向けた状態の蛇ゴリラに、先生は両手から黒い電撃を放射した。蛇ゴリラは体を丸めてガードした。先生は電撃を打ち続け、蛇ゴリラはガードし続けた。

 先生は剣ファンネル一本を飛ばした。先生が蛇ゴリラを足止めしている間に、剣ファンネルは二階の床を大きく四角に切り抜いていった。

 二階の床が抜けた。いつの間にか、一階は鬼の胃に変化していた。蛇ゴリラは強力な胃酸のプールに落下した。蛇ゴリラはしばらくもがき苦しんでいたが、やがて力を失って、プールの底に沈んでいった。

 蛇ゴリラの抜け殻が水面に浮かんできた。薄くて中身のない皮は、すぐに溶けて消滅した。

 胃散のプールから、脱皮した蛇女が飛び上がってきた。蛇女は二階の天井に張り付いた。

 上半分は全身に鱗が生えたテリー、下半身は細くて長いブラックマンバ。両手の爪は鋭く発達し、シザーハンズ状になっていた。

 蛇女は全身の鱗を逆立たせて、部屋中に手裏剣のような鱗を全力発射した。先生は曼荼羅シールドを張って鱗手裏剣を防いだ。動けない坊やは、剣ファンネルが曼荼羅シールドでガードしてくれた。シールドに当たった鱗は消滅し、プールに落ちた鱗は溶けた。壁や床に刺さった鱗は、ドライアイス状に気化して紫色の毒ガスに変化した。一~二階に、紫の毒ガスが充満していった。

 先生は二刀流で天井の蛇女に飛びかかった。蛇女も両手のシザーハンズで応戦した。二人は天井に逆さまに立って、両手の刃で激しく切り結んだ。

 坊やは少量ながら毒ガスを吸い込んでしまった。目は充血して鼻血が出た。折れた手足が痙攣して、体は大量の汗を掻き出した。

 坊やは一階の胃酸プールを消して、自分の近くの二階の壁に、大きな天狗の赤鼻を出した。鼻は部屋の毒ガスを吸い取っていった。毒ガスは鬼には通じないが、人間には猛毒だった。

 先生はカウンター剣法で相手を圧倒した。蛇女の素早いが乱暴な両手振り回し攻撃を、先生は左の切り上げ/切り下ろしで丁寧に弾いて、隙を見ては右の突きを鋭く打ち込んだ。硬い鱗に覆われた体には、まともなダメージは通らなかった。鱗の間を突いても、浅い傷はすぐ再生されてしまった。先生はそれでも前に出て左で捌き、右で突いた。

 ハイペースで仕掛け続けた蛇女の息が上がってきた。攻撃の手数が少なく、動きも遅くなってきた。先生は捌きと突きを機械的に続けて、蛇女のスタミナを削り続けた。

 先生の攻撃が多く、深く入るようになった。ゲリラ豪雨のような猛撃の合間を縫って何とか一撃入れていたのか、ぱさつく小雨を掻い潜って二発、三発と入れられるようになり、硬い鱗の隙間を剣先で浅く突いていたのが、柔らかい脇や腕の内側を深く切り付けられるようになり、切られてもすぐ再生した傷は、治りが遅く体に残るようになった。

 先生はガードを捨てて、両手で突きかかった。蛇女は防戦一方で後ずさり、全身血まみれ、傷だらけの姿になった。

 鬼を倒すには坊やの力が必要だった。が、肝心の彼は二階の床に這いつくばっていた。大量出血のショックで目は虚ろに、表情はぼんやりしていた。痙攣と発汗が止まらなかった。鼻を消さないと新たな鬼の部位を使えないので、今のままでは攻撃参加出来なかった。毒ガスはまだ半分近く吸収されずに残っていた。

 蛇女は尻尾を伸ばして坊やを攻撃した。ファンネル剣が体当たりしたが、尻尾に弾き飛ばされた。先生は左手の剣を投げ付けた。黒い稲妻と化した左手剣は、蛇女の尻尾の先を切断した。蛇女は再生中の尻尾で再び坊やを攻撃し、ファンネル剣二本は彼をガードした。動けない坊やの前で、二剣と尻尾は火花を散らして打ち合った。

 天井の蛇女は、先生目がけて両手を振り回した。一刀流の先生は防御に徹して後ずさった。蛇女の体はまた再生を始めて、元の姿に戻っていった。

 坊やは虚ろな表情で、壁に生えた天狗の大鼻と、天井で火花を散らす二人を見上げた。

 不用意に仕掛けて、師匠を危険に晒した。鼻を消して攻撃参加すれば自分は死ぬ。死ねばこの国は鬼に滅ぼされる。鼻を残してこのまま見ていれば、アシュリー達は死ぬ……

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