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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第4章 ウォルステッターモデルの戦い
27/136

4-2

 船内に食料(残ったケータリング)はあったが、武器はなかった。老人の半数は火炎瓶を作った。もう半数は船を掃除した。彼らは真鍮の手すりをピカピカになるまで磨き上げた。服を着崩したり、仕事中にタバコを吸うような不良老人はいなかった。

 士官室のソファで、坊やは新聞を読んでいた。船の揺れが心地よく、自然とあくびが出てきた。紙面には「交渉決裂 揺れる南北関係」「栄岡の領有譲らず 話し合い平行線に」「社説 戦争は望まないが 受けて立つ用意はある」といった文言が踊っていた。

 ドアをノックして、秋水が入ってきた。雨で濡れた彼は、地味ジャージから、セーラー服+ミニスカート+ニーハイのJCファッションに着替えていた。手足は棒のように細く、体はまな板のように薄かったが、胸や、腰や、尻に、仄かな膨らみや凹みが出来ていた。妖精のような美少年だった。

 坊やは半笑いでその姿を眺めた。秋水は「着るのこれしかなかったんです」と半切れで彼の隣に座った。坊やは賢い可愛いインテリ美少女JCに要求した。


 A 可愛いので膝枕してもらう

 B そんな事より作戦を聞く

 C せっかくなのでアイドル挨拶をしてもらう

 ↓

 A 坊やは秋水の肩にもたれかかった。「寝るならちゃんと寝てください」と秋水が困った顔で言うと、坊やはそのまま秋水の太もも(というか、ほぼほぼ股の間)に頭を乗せた。太ももには全く贅肉が付いていないけども、すべすべで柔らかった。股枕された秋水は、観念したように、顔を赤くして天井を見上げた。


「歌った方いい?(坊やが頷く)……♪烏 何故鳴くの 烏の山に……」


 B「明日の午後三時に富島に到着します。作戦開始は六時の予定。結城との決戦に備えて、出来るだけ多くの船を接舷乗り込みで奪います」


 C「全力で?」と秋水は嫌そうな顔で聞き返し、坊やは半笑いで頷いた。「ハァ……」ため息を付いて立ち上がった後、秋水はスイッチを入れてプロアイドルに全力変身した。


 秋水「ポニテの天使が本日降臨!寂しい子はいねがー!」

 坊や「会いたい!会いたい!震えてる!」

 秋水「泣いてる子はいねがー!」

 坊や「ふぇーんふぇーん!助けてしゆりん!」

 秋水「いいよ!み~んなまとめてしゆりんヘブンに連れてったげる!黒髪クールな甘えん坊天使、しゆりんこと田村秋水です!しゆりんのここ、永遠に空いてますよ!」


 しゆりんはフルパワーでやり切った。坊やは引いている。秋水は無表情で席に戻った。


 先生とアシュリーが入ってきた。二人は姿勢を正して彼女達を出迎えた。

 アシュリーはセーラー服姿で、全身から眩しいくらいのJKオーラを出していた。やや小さめのサイズの制服が、彼女のハレンチボディを強調していた。

 先生の方は青い痴女スーツで、全身からブヒィと鳴きたくなるような女王様オーラを出していた。ピッチピチのラバースーツが、彼女の芸術的な肢体にピッタリと張り付いていた。

 二人は坊や達の対面に座った。アシュリーは秋水に尋ねた。


「先生から伺いました。その、坊やさんには本当に鬼の力が?」

「一度きちんと説明した方がいいですね……」


 秋水はこれまでの経緯を説明した。

 時計の針が一時間ほど進んだ。アシュリーの表情は最初半信半疑だったが、最後には事実を受け入れてくれたようだった。


「王子殿下が摂政になられてから、この国は何もかも変わってしまいました。それが鬼のせいだったなんて。何て事……。そうだ、この事実を公表したら」


 先生は首を横に振った。


「向こうでは、政府に批判的な記者は家族ごと行方不明になるんでしょ。新聞社ごと焼かれるわ。逆にあいつが私の事を公表してきたら?桃太郎が鬼と癒着していたと知れれば、彼は被害者から詐欺師に転落する。それは避けたい」

「だからそのマスクなんですね」と秋水。

「いやこれはお洒落。私と彼の関係は、最大のストロングポイントであると同時に、致命的なウィークポイントでもある。君もこれから私と会う時は、影武者を使うとか、周りに口裏を合わせてもらうとか、細心の注意を払って。私も気を付ける」


 坊やは頷いた。「グッボーイ」と先生。アシュリーは坊やを真っ直ぐ見つめて問い質した。


「私は殿下は騙されていると思います。私の知る殿下は、あんな人じゃなかった。だから聞かせてください。坊やさんと先生はどんな関係なんですか」


 A「友達だ」

 B「桃太郎とお供の犬だ」

 C「高貴なる女王様とご褒美待ちの豚だ」

 ↓

 A「泣いたり笑ったり出来なくされたい?私にとっての君は、豚の絵を貼り付けたソハヤの鞘だよ」


 B「そうそう、大好きな御主人様と今日も鬼退治。ご褒美にキビ団子をもらって、とってもワン!ダフルな立烏帽子なのでした~、っておい」


 C「キモ……」


 ナチュラルボーンクィーンは、カメムシの死骸を見る目で豚坊やを蔑んだ。口から無意識に「ありがとうございます」と感謝の言葉が出るほどの、凍て付いた眼差しだった。


 先生はアシュリーを安心させた。


「私が騙して戦わせているんじゃないよ?彼は自分の信じる事をやっている。だから、彼のまっさらな気持ちを信じてあげて欲しいの」

「なら、先生の信じる事って何ですか?」

「あいつを殺して国に帰る。それだけ」

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