表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第3章 アボルダージュ
21/136

3-6

 午後になった。五郎八姫の友人のお嬢様JK、アシュリーが離宮の庭にやってきた。白いコットンワンピースに、涼しげなアンクルリボンサンダルを合わせている。人々は清涼感のある美少女を目で追った。提督は手を振り、彼女は強張った表情で会釈した。アシュリーは二人の前に立って、警戒した面持ちで挨拶した。


「初めまして坊やさん。秋水さん。アシュリーアーバインと申します。綿業会館までご案内させていただきます」


 二人はアシュリーが運転する自動車に乗って、目的地に向かった。世界中の最先端が集まるこの街でも、自動車は珍しい存在だった。通行人は車ばかりに目を取られて、乗っている人間の方は見なかった。「王統派のスパイが入り込んでいます。正面から行くのが一番安全です」とアシュリー。車は堂々と市内中心部に進入した。

 街の中心部はイタリア建築のオフィスビル街になっていた。その一角に、千代浜綿業会館があった。エレベーター付きの、石油王のような建物だった。

 会館の三階会議室前に、SP数名が立っていた。「こちらです」とアシュリーは会議室のドアを開けた。威厳のある白漆喰の部屋に、千代浜議会上院参与(議員)のリオアーバインが立っていた。アシュリーの父親である。

 ゆるキャラのような男だった。どんぐり眼のふっくらした顔。ビール腹でふかふかの中年体型。全体的に丸くて可愛いが、身に付けているのはどれも一流ブランド品で、全く緩くなかった。ちゃんと見たら目も怖い。

 坊や、秋水、ゆるパパはここで極秘会談を行った。部屋には京薩摩焼のティーセットやケーキが用意されていたが、誰も手を付けなかった。


「手紙をご拝読いたしました。ここに来るまで大変苦しい思いをなさったでしょう。もう何の心配もいりませんよ。ここを第二の故郷だと思って」

「逃げ切れたのはただただ幸運でした。上院参与、お聞きしたいのですが」

「お部屋もご用意させていただきました。公爵家の方々には狭いと思いますが」

「感謝します。それでお聞きしたいのですが、王国艦隊が蓮沼まで進出しています。千代浜政府はこの艦隊に対して、どう対応なさるおつもりですか?」

「色んな考えがあるようですな。この街は今、全くの無防備です。東の番犬を雇うか、南のハゲワシに降伏するか。城の誰もが、どちらに転んでも損しないように上手く立ち回ろうとしています。でもね、ここは発想を転換させないと。これはピンチじゃなくてチャンスなんだと。今となっては海軍の脱走に感謝しています」

「交渉で敵を追い払えると思っているのなら、それは間違っています。口先で覆せる状況ではありません」

「そのために、実戦経験豊富なお二人を招いたのです。いざという時のために。

 我々とハゲワシは、ありとあらゆる事で千年争ってきました。特に譜代家臣の方々は、あいつらに降伏するなら魔王の下で生きる方が百倍マシと考えています。しかしそれは政治家として手抜きです。税金で飯食ってる以上、私は簡単な答えに逃げない。怨念の相手ともタフに交渉を重ねていきます」


 ドアをノックして、秘書官が入ってきた。彼はゆるパパにメモを手渡した。ゆるパパはメモを一読して立ち上がった。


「蓮沼から御勅使(王子の使者)がいらっしゃったそうです。申し訳ありませんが、これから千代浜城に行かなくてはなりません。ゆっくりなさってください」


 ゆるパパと秘書官は部屋を出て行った。二人きりになった後、坊やは感想を述べた。


 A「怪しい奴だ」

 B「危うい奴だ」

 C「アシュリーが可哀相だ」


「はい。上院参与は王子と交渉出来ると考えている。決裂しても、僕達の身柄を引き渡して命だけは助けてもらうつもりでしょう。確かに、結城とは交渉する余地があります。でも王子は蛇だ。蛇と話し合おうとすれば全員死ぬ」


 坊やはケーキに手を付けた。秋水は窓から外を眺めた。先ほどの秘書官も含めた一グループが、通りで市民にビラを配っていた。受け取った市民は城へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ