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第3章 アボルダージュ
王室の菩提寺の大仏殿で、前国王の葬儀が営まれた。
大仏の前で、全国から集められた高僧がお経を挙げた。特別席で、王族や各国要人の参列者が涙を流した。大仏殿の上階から、王子は一人、その様子を軽蔑しきった目で見下ろした。
境内は政府関係の参列者(スーツの政治家、役人や、軍服の軍人)に埋め尽くされていた。寺の外には、和洋の喪服を着た一般国民が集結していた。彼らは地面に額づき、あるいは手を合わせて冥福を祈った。
国全体が喪に服していた。国民は先王の写真に頭を垂れた。役所、学校、会社は臨時休業となった。どの街もゴーストタウンと化していた。国中に、先王への弔意と、田村家への恨みが充満していた。
「何であんなにいい王様を……何も悪い事してないのに……」
「墓壊されたってよ!ざまあみろだな!」
「あの一家、俺が皆殺しにしてやりたい」
「次男はまだ逃げてる奴らしい。絶対許せねえ……」
大仏殿の王子の元に、大竹がやってきた。彼は状況を報告した。
「三人の所在は未だ掴めていません。しかしまだ国内に潜伏しているものと考えられます。今後は強力な討伐部隊を編成し、軍、警察共同で三人を追跡します」
「北と南の腹が読めない以上、軽率に軍を動かせない」
「ですが鬼の力を野放しには出来ません。国家の総力を挙げて三人を逮捕しなければ、この国は滅ぼされてしまいます」
「鬼に何が出来る。天地を引き裂く力があっても、使う気がなければないのと同じだ。有能な鬼がいれば、今頃脱藩して国事に奔走しているだろうな。
奴らは千代浜に逃げ込む。秋水だけは生きて捕らえろ。北と南の動きは?」
「北は同盟の条件に、旧田村領の割譲と、第一王子と姫様の結婚を求めています。南は千代浜を狙っていますが、喪中の国に攻め込む大義を得られず、議会は反対しています。
千代浜は分裂です。侍は我々側。商人は独立を求めています。亘理伯爵はどっち付かずで両方にいい顔をしています。商人が作った艦隊は岩島に脱走しました」
「俺はここで北との戦いに備える。お前は千代浜に行って亘理を脅してこい」
「優しいだけが取り得の男にその仕事キツイなあ。アメリカからペリー呼んできてくれません?降伏シテクダサ~イ」
「向こうの態度をはっきりさせるだけでいい。降伏も良し、独立も良し。亘理の心をズタズタに引き裂いて帰って来い」




