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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第2章 ラストピース
15/136

2-7

 秋水は七号車を目指していた。彼はやっとの思いで六号車出口に辿り着き、体全体で弱々しく扉を開けた。

 連結部に青服隊が待ち構えていた。七号車内にも大勢いた。

 鬼庭が七号車入口近くに立っていた。彼は秋水に頼んだ。


「軍師殿、このまま戻りください。逆族一家は処刑されるべきだが、あなたには何の罪もない。共に新帝国を築きましょう」


 秋水は一歩も引かずに鬼庭を見据えた。鬼庭は部下に命じた。


「まず肩。次に足を打ち抜け」


 七号車入り口が鬼の口に化けて、連結部の兵士を一口に飲み込んだ。

 秋水の後ろから足音がした。彼は振り返った。黒霧の中から、ゴーグルを外しつつ、死んだはずの兄が現れた。秋水は彼を見て一瞬喜び、しかしすぐに冷静な表情を作った。


「言いたい事は沢山あるけど、全部ここを脱出してからです……助けてくれてありがとう、馬鹿お兄ちゃん。生きていてくれて、ありがとう」


 七号車の兵士が押し寄せてきた。

 七号車の内側が、鬼の食道に変化した。鬼庭は窓を蹴破って飛び降りた。逃げ遅れた兵士は、反対の八号車側へ送り込まれていった。

 坊やと秋水は列車を降りた。五号車側から、そして八号車側から、鬼庭と新手の部隊が両側から押し寄せてきた。坊やは空中に大目玉を出した。鬼庭は咄嗟に目を瞑ったが、まともに見た部隊は全員白目を剥いて卒倒した。

 鬼庭は馬殺しの大型拳銃を抜いて、坊やのいる方に連射した。大目玉が消えた。坊やは体の前面を鬼の骨で覆って、ボクサーのようにガードした。鬼の骨は大口径の強力弾をことごとく弾いたが、その衝撃で坊やの体は後ずさり、鼻や耳から血が流れ出し、やがて立っていられなくなって、最後の一発を浴びると地面に倒れ落ちた。プロテクターの上から三百キロの剛速球を何発も当てられたようなものだった。鬼の骨は自然消滅した。

 鬼庭は拳銃を投げ捨てて、目を見開き、刀で切りかかってきた。坊やは何とか立ち上がって、左手を水晶製の鬼の骨で覆った。鬼庭は重い斬撃を振り下ろし、それを坊やは左手でガードした。刀は二つにへし折れたが、鬼庭は折れた刀でみぞおちを突いてきた。鉄パイプで腹を突かれた痛みが襲った。左手の骨が消えた。

 坊やは反吐を吐いた。鬼庭は止めの突きを打ちにいった。吐き出す坊やの舌に、鬼の目が付いていた。鬼庭は舌の目を見てしまった。彼は気を失いかけたが、折れた剣先を腿に突き刺して、何とか正気を保った。先生は窓からドロップキックして、耐える鬼庭を蹴り飛ばした。

 坊やは秋水に支えられて逃走した。先生は剣ファンネル二本を飛ばして彼らを守った。自身は一剣を握って殿に立った。鬼庭は倒れたまま叫んだ。


「絶対に捕まえるぞ!陛下を害した罪、田村の血で償わせてやる!」


 装甲列車はガトリング砲や大砲を打ってきた。先生は曼荼羅シールドで玉を防ぎ、上下に跳ね回る牛若丸の動きで砲弾をかわした。剣ファンネルは曼荼羅シールドを張って、流れ玉から二人をガードした。

 坊やと秋水は畑の中ほどまでやってきた。坊やは鞘の切っ先を列車に向けた。

 坊やの背後の地面から、原油が吹き上がるようにして、東京タワーほど大きな足が飛び出してきた。東京タワー足はそのまま列車側に倒れ落ちていった。

 畑に大きな影が差した。敵も鳥も小動物も逃げ出した。東京タワー足は(列車前方の)線路にかかと落としを決めた。地面が震えて、瓦礫と土埃が舞い上がった。線路は分断されて、深く大きな穴が開いた。

 敵が呆気に取られている間に、三人は戦場を離脱した。

(続く)

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