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プールで泳いだ後、坊や達は食堂の大テーブルで朝食を取った。
最初にテリーが席を立った。着替えた彼女は、フレッシュな新人女性教師という感じだった。爽やかなパフスリーブブラウスと、甘々のマーメイドスカートを合わせていた。
着替えた愛はクールビューティな女上司という感じだった。ビシっとしたブラウスと、スーツスカートを合わせていた。彼女はテリーに尋ねた。
「準備は大丈夫?教育実習って言っても?」
「舐めると食われる!」
「軍隊と同じようにやって」
テリーは「行ってくるね」と坊やの頬にキスして、先に出かけた。家の外から、馬の嘶きと、蹄の足音が聞こえた。彼女は馬通勤だった。
次に愛が立ち上がって、行ってきますのキスとハグを娘と交わした。
五郎八は食べ終わって、歯磨きもして、隣のアシュリーと話していた。プリプリのJS読者モデルという感じで、可愛らしいフリルタンクトップに、フェミニンなティアードスカートを合わせていた。
愛は部屋を出て行こうとした所で、一旦立ち止まった。彼女は坊やの曲がったネクタイを直してやった。
すぐ目の前に、香水が香る愛の胸があった。ブラウスの切れ間から、人妻の豊満な谷間と、大人の女性の黒のレースブラジャーが見えた。直す動作で、愛の胸も優しく揺れた。
「うん。いい男。じゃあね」
愛は頬にキスして出勤した。家の外から、車のエンジン音が聞こえた。彼女は車通勤だった。
玄関のチャイムが鳴った。外から、「五郎八ちゃん!一緒に学校行―こ!」と子供達の声がした。
五郎八はランドセルを背負うと、全員の頬に行ってきますのキスをした。五郎八は最後に坊やにキスした後、彼の耳元で「三秒だけいい?」と小鳥のように囁いた。坊やが頷くと、彼女は嬉しそうにハグしてきた。彼女の中の小さな鼓動が伝わってきた。
「はースッキリ。ありがとお兄さん!じゃねー」
五郎八は元気に手を振って登校していった。家の外から、皆で歌ったり、笑ったりする声が聞こえた。
アシュリーは少し寂しそうに言った。
「ゴロちゃん、最近遊んでくれないんだ。小学校で沢山友達出来たから。毎日学校行くの楽しいって」
彼女は涼しげな夏服姿だった。青い紐タイを結んだ白ブラウスに、紺のプリーツスカートを履いていた。バックとソックスは学校指定。靴は地味なローファーだった。
先生はからかった。
「取られて悔しい?」
先生もアシュリーと同じ高校の夏服を着ていた。しかし彼女は、大分エロ可愛く着崩していた。紐タイは緩く結んで、ブラウスの第一ボタンは外していた。スカートはミニにして、バックは改造済みの学校指定。靴は革の高いスポーツシューズだった。
「ほんのり悔しい。でも、楽しそうでよかったよ~。後は、こっちだけか」
秋水は猫背でパンケーキを食べていた。軽やかなサイドテールと、爽やかな白のセーラー服を着ているが、しかし表情は暗く、動きは鈍かった。星柄のハイソックスを履いていた。
秋水はアシュリーに頼んだ。
「アシュリー、僕のクラスに転校してきて。休み時間、ずっと一人だ」
「さすがにJCは無理だよ」
「じゃあ先生」
「私何歳か知ってる?十万十六才だよ?」
「じゃあお兄ちゃんJCになってよ!誰かが何か言ってきたら全力で叩き潰すから!」
朝食を食べた後、坊や達はメイドに見送られて屋敷を出た。
麓に続く坂道を、人間と鬼の小中高生が下っていた。通勤する鬼や、近所の奥さんと談笑する鬼の姿もあった。
坂道の途中に、秋水の通う中学校があった。その校門前で、セーラー服の気弱な美術部員が、やんちゃな男子にからかわれていた。
男子はキャンパスを奪い取って、彼女が頑張って描いた油絵を「おやおや、これはこれは」としたり顔で品評した。美術部員は泣きそうになった。
秋水は「あいつ……」と静かに怒った。先生は彼女の肩に手を置いた。秋水は頷いて、背後から二人に歩み寄った。
秋水は後ろから、男子の肩をポンポンと叩いた。振り返った瞬間、秋水は強烈なハイキックを叩き込んだ。直撃を食らった男子は卒倒した。新しい世界が開けたようで、どことなく幸せそうな顔をしていた。助けてもらった美術部員は引いた。
秋水は彼女が描いた、スパニッシュバロック風の油絵を眺めた。
「よく描けてるね。私もベラスケス好き」
美術部員は恐る恐るお礼を述べて、絵が好きなのかと秋水に尋ねた。二人は芸術の話題でぎこちなく話し始めた。
秋水は困って、兄の方を振り返った。坊やは体育教師が笛を吹く真似をした。秋水はもう、という顔をした。
二人は手探りで話しながら、校門を潜っていった。