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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第12章 虹を架ける
135/136

12-7-C-2

 プールで泳いだ後、坊や達は食堂の大テーブルで朝食を取った。

 最初にテリーが席を立った。着替えた彼女は、フレッシュな新人女性教師という感じだった。爽やかなパフスリーブブラウスと、甘々のマーメイドスカートを合わせていた。

 着替えた愛はクールビューティな女上司という感じだった。ビシっとしたブラウスと、スーツスカートを合わせていた。彼女はテリーに尋ねた。


「準備は大丈夫?教育実習って言っても?」

「舐めると食われる!」

「軍隊と同じようにやって」


 テリーは「行ってくるね」と坊やの頬にキスして、先に出かけた。家の外から、馬の嘶きと、蹄の足音が聞こえた。彼女は馬通勤だった。

 次に愛が立ち上がって、行ってきますのキスとハグを娘と交わした。

 五郎八は食べ終わって、歯磨きもして、隣のアシュリーと話していた。プリプリのJS読者モデルという感じで、可愛らしいフリルタンクトップに、フェミニンなティアードスカートを合わせていた。

 愛は部屋を出て行こうとした所で、一旦立ち止まった。彼女は坊やの曲がったネクタイを直してやった。

 すぐ目の前に、香水が香る愛の胸があった。ブラウスの切れ間から、人妻の豊満な谷間と、大人の女性の黒のレースブラジャーが見えた。直す動作で、愛の胸も優しく揺れた。


「うん。いい男。じゃあね」


 愛は頬にキスして出勤した。家の外から、車のエンジン音が聞こえた。彼女は車通勤だった。

 玄関のチャイムが鳴った。外から、「五郎八ちゃん!一緒に学校行―こ!」と子供達の声がした。

 五郎八はランドセルを背負うと、全員の頬に行ってきますのキスをした。五郎八は最後に坊やにキスした後、彼の耳元で「三秒だけいい?」と小鳥のように囁いた。坊やが頷くと、彼女は嬉しそうにハグしてきた。彼女の中の小さな鼓動が伝わってきた。


「はースッキリ。ありがとお兄さん!じゃねー」


 五郎八は元気に手を振って登校していった。家の外から、皆で歌ったり、笑ったりする声が聞こえた。

 アシュリーは少し寂しそうに言った。


「ゴロちゃん、最近遊んでくれないんだ。小学校で沢山友達出来たから。毎日学校行くの楽しいって」


 彼女は涼しげな夏服姿だった。青い紐タイを結んだ白ブラウスに、紺のプリーツスカートを履いていた。バックとソックスは学校指定。靴は地味なローファーだった。

 先生はからかった。


「取られて悔しい?」


 先生もアシュリーと同じ高校の夏服を着ていた。しかし彼女は、大分エロ可愛く着崩していた。紐タイは緩く結んで、ブラウスの第一ボタンは外していた。スカートはミニにして、バックは改造済みの学校指定。靴は革の高いスポーツシューズだった。


「ほんのり悔しい。でも、楽しそうでよかったよ~。後は、こっちだけか」


 秋水は猫背でパンケーキを食べていた。軽やかなサイドテールと、爽やかな白のセーラー服を着ているが、しかし表情は暗く、動きは鈍かった。星柄のハイソックスを履いていた。

 秋水はアシュリーに頼んだ。


「アシュリー、僕のクラスに転校してきて。休み時間、ずっと一人だ」

「さすがにJCは無理だよ」

「じゃあ先生」

「私何歳か知ってる?十万十六才だよ?」

「じゃあお兄ちゃんJCになってよ!誰かが何か言ってきたら全力で叩き潰すから!」


 朝食を食べた後、坊や達はメイドに見送られて屋敷を出た。

 麓に続く坂道を、人間と鬼の小中高生が下っていた。通勤する鬼や、近所の奥さんと談笑する鬼の姿もあった。

 坂道の途中に、秋水の通う中学校があった。その校門前で、セーラー服の気弱な美術部員が、やんちゃな男子にからかわれていた。

 男子はキャンパスを奪い取って、彼女が頑張って描いた油絵を「おやおや、これはこれは」としたり顔で品評した。美術部員は泣きそうになった。

 秋水は「あいつ……」と静かに怒った。先生は彼女の肩に手を置いた。秋水は頷いて、背後から二人に歩み寄った。

 秋水は後ろから、男子の肩をポンポンと叩いた。振り返った瞬間、秋水は強烈なハイキックを叩き込んだ。直撃を食らった男子は卒倒した。新しい世界が開けたようで、どことなく幸せそうな顔をしていた。助けてもらった美術部員は引いた。

 秋水は彼女が描いた、スパニッシュバロック風の油絵を眺めた。


「よく描けてるね。私もベラスケス好き」


 美術部員は恐る恐るお礼を述べて、絵が好きなのかと秋水に尋ねた。二人は芸術の話題でぎこちなく話し始めた。

 秋水は困って、兄の方を振り返った。坊やは体育教師が笛を吹く真似をした。秋水はもう、という顔をした。

 二人は手探りで話しながら、校門を潜っていった。

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