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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第12章 虹を架ける
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 C 第12話 強い気持ち、強い愛


 坊やと大竹は表舞台から同時に消えた。強力な指導者を失った両陣営は歩み寄り、王国と千代浜、そして鬼の王国は解体統合されて、新たに西海岸共和国が成立した。

 常夏のリゾート都市、旧結城王家の首都郊外で、坊やは新生活をスタートさせた。高級住宅街の丘の上に建つ、泉布観似のコロニアル様式の洋館が、彼の新しい家となった。

 目を開けると、坊やは窓を開け放った部屋に布団を敷いて、横になっていた。朝から気温は三十度を越えており、体はじっとりと汗ばんでいた。

 坊やは起き上がろうとした。誰かが後ろで左手を握っていた。坊やは振り返った。

 浴衣姿の秋水が、背中に寄り添うような格好で、同じ布団に横になっていた。浴衣は大分はだけていて、汗ばんだ鎖骨や、幼い胸の谷間が露わになっていた。微かに見える縞々の下着や、細く白い太ももが艶かしかった。

 物音で彼女も起きた。長い黒髪には少し寝癖が付いていて、表情も寝ぼけていた。普段しっかりしている彼女とは正反対だった。


「おはようございます。汗、すごいよ?」


 秋水は坊やの顔をタオルで拭った。目の前には、清らかな美少女の無防備な肢体があった。秋水の鎖骨の汗が、仄かな胸の谷間や、雪のように真っ白なお腹を流れ落ちていった。

  二人は水着に着替えた二人は、庭のプールに向かった。秋水は中学校のスクール水着だった。紺色の薄い布地が、まだ蕾のような体にピッタリ張り付いていた。手足は細く、お腹は凹んでいた。

 坊やは秋水の手を握った。全体的に骨張っていて硬い印象の体だったが、握った手は柔らかく、優しかった。秋水も微笑んで、彼の手を握り返した。

 廊下の窓から見える庭は南国そのものだった。椰子の木が茂り、ハイビスカスが咲いていた。廊下を人間と鬼のメイドが掃除していた。二人が通りがかると、彼女達は丁寧に頭を下げた。二人も挨拶を返した。

 秋水は坊やに訴えた。


「学校面白くない。授業、楽しくない。先生、知ってる事しか言わないし。隣の男子はすぐ意地悪してくるし。クラスの女子とは話が合わないし。それに何か、裏で陰口叩かれてるみたいで。生意気とか、先輩と付き合って調子に乗ってるとか」


 坊やは尋ねた。孤立してるんだ?と。


「敢えてね。学校なんて、人生のほんの一部。今の友達なんて、大人になったら顔も名前も覚えてないよ。そんな人達のために、怒ったり喜んだりするなんて、馬鹿らしくない?友達なんていらない」


 坊やは体育教師が笛を吹く真似をした。じゃあ好きな子同士で組んでー、と。トラウマを直撃された秋水は、両耳を塞いで「止めてよお!」と頼んだ。

 二人はプールにやってきた。テリーがクロールでがっつり泳いでいた。

 坊やはプールサイドのベンチに座り、秋水はプールに入った。テリーは秋水とハイタッチして、プールから上がった。

 テリーは坊やの隣で体を拭いた。彼女はハイレグの競泳水着を着ていた。無駄を削ぎ落としたアスリートの体に、泳ぐためだけの水着をまとった姿は、清新な色香に溢れていた。

 明るい場所で、健康的な彼女の体を見るのは初めてだった。青い布地が、綺麗な胸と、六つに割れたお腹と、引き締まったお尻を強調していた。鍛え込まれた背中は強くしなやかで、手足は健やかに伸びていた。

 アシュリーがプールにやってきた。彼女は姉を見て、一旦奥に引っ込んだ。

 テリーは体を拭き終わると、坊やの右隣に座って、ジュースを飲んだ。テリーは安らいだ表情で坊やを見つめ、それから、恥ずかしがって目を反らした。


「胸、隠してくれない?恥ずかしい……」


 坊やは手ブラで胸を隠した。

 テリーは笑いを押し殺しながら、真面目に語り出した。手ブラ坊やも真剣な表情で聞き入った。


「今日も暑いなって、この街に来てから何回言ったかな。私はここで、あなたと一緒に、ププッ、生きていく。あなたの、はー、隣で笑っていられる場所が、私の、あた、新しい故きょっ……卑怯だよその顔!笑わせようとして!」


 テリーは大声で笑った。坊やは彼女を褒めた。キリッとしてるテリーは綺麗だけど、笑ってる時は一番可愛い、と。坊やは彼女にある事を頼んだ。


「今の気持ちを?カナやんの歌で表現して?馬鹿じゃないの?

 ♪ずっと前からー君が好きー、今すぐこの気持ちをー伝えたいよー、もう誰かに取られたくない……本当嫌だこの人!」


 坊やは笑い、テリーは怒って顔にタオルを投げ付けた。

 アシュリーが体にタオルを巻いて、再度プールにやってきた。妹の姿を見て、姉は尋ねた。


「何その格好?」

「少し焼こうと思って」

「人目の付かない所で焼きなさいよ」


 テリーは新しいジュースを取りに行った。

 姉がいなくなると、妹は恥ずかしそうにタオルを取って、坊やだけに、際どいチューブビキニの水着姿を見せてくれた。男の欲情を煮詰めたようなハレンチな体に、ハレンチなだけの水着をまとった姿は、とろけるような色香に満ちていた。

 水着姿を見るのは二度目だが、見るたびに強制的にハレンチな気持ちにさせられた。チューブトップで最小限の部分を隠した、こぼれ落ちそうな豊かな胸。抱き寄せたら崩れてしまいそうな華奢な腰。小さな紐パンツが際立たせる、ため息が出そうな十六歳のお尻。


「お姉ちゃんがいない時に、ちゃんと見せてあげるね?」


 アシュリーははにかんで、またタオルを羽織った。彼女の後ろを、全裸の銀髪黒ギャルが通り過ぎていった。

 女体の傑作だった。完璧なプロポーションに、すらりとした華のある手足。長い銀髪がよく映える、小麦色の美しい肌。堂々と歩く姿は神々しく、男女問わず目を引き付けた。アシュリーの方がよほど痴女らしく見えた。先生は宝石のようなお尻を見せて、プールに飛び込んだ。

 アシュリーは呆気に取られて、力なく坊やの左に座り込んだ。

 テリーと手を繋いで、五郎八がやってきた。小学校のセパレートのスクール水着を着ていた。まだ何者でもない、発育途上の無垢な姿だった。体付きはあどけなく、肉や毛がどこにも付いていなかった。手足は棒切れのようで、痛々しいほど細かった。何もかもが小さいのに、その体には無限の生命力が宿っていた。

 五郎八はアシュリーの股の間に座った。アシュリーが笑って後ろから抱き締めると、五郎八は満足げに顔を両腕に埋めた。

 テリーは坊やの右隣に座って、五郎八に小言を言った。


「クラスの子に何て言われてるか知ってる?チューチューマンだよ?」


 五郎八は反論した。


「考えが古いの!アシュリー聞いて。テリーがね、大人になるまで家族以外に好きって言っちゃ駄目って言うの。ハグも駄目って」


 アシュリーは尋ねた。


「うーん。嫌がる人に無理矢理ハグしてる?」

「大好きな人にしかしてない。私、そんなに安い女じゃないから。勇君でしょ、ミッチーでしょ、涙愛螺ティアラちゃん、みゆゆ、将太……」


 誰も突っ込まなかった。見かねた先生が遠くから叫んだ。


「激安じゃねーか!」


 先生は切れ気味にプールから上がった。テリーは彼女にタオルを投げた。五郎八は「見ちゃ駄目!」と坊やの両目を塞いだ。先生は体にタオルを巻いた。

 秋水もプールから上がって、タオルで体を拭いた。彼女は五郎八を諭した。


「じゃあ、テリーが嫌がる事もしたら駄目じゃないかな?」

「うーん……」

「好きという気持ちは人を強くもするし、傷付けもする。五郎八がハグする事で、傷付いたり、悲しんだりする人が出るかもしれない。五郎八自身が傷付くかも。テリーは五郎八の事が大々大好きだから、心配して言ってるんだよ」

「分かった。じゃあ、ハグは大々大々大好きな人にしかしない。大好きな人とはキスするだけ。これならいい?」


 誰も処理しなかった。先生が切れて叫んだ。


「ただのアバズレじゃねーか!」


 問題を解決した五郎八は、スッキリした顔で立ち上がり、プールに入ろうとした。


「あ。ねえ、お兄さん。ちょっといい?」


 坊やは頷いた。

 五郎八は坊やに抱き付いた。子供の熱い体温と、薄い肉の下の未成熟な骨格をダイレクトに感じた。焼けた石を抱いているようだった。力は異様に強く、背骨が痛むほど抱き締めてきた。

 五郎八は幸せそうに首筋に顔を埋めてから、目を瞑って、キスをせがんだ。数センチ先に、天使のような洋ロリJSの、無邪気な唇があった。

 左から、アシュリーも坊やを抱き締めた。JKグラビアアイドルの、とろけるような美少女の体を左半身に感じた。甘い肌の香りと、体の温もりも伝わってきた。彼女は微笑んで、いやらしい唇を差し出した。

 右からテリーが坊やをハグした。JDアスリートの、凛とした美女の体を右半身に感じた。絹のような肌の潤いと、心臓の脈打つ鼓動も伝わってきた。彼女は恥じらいながら、綺麗な唇を差し出した。

 前から、先生は五郎八もろとも坊やを抱いた。JKモデルの、芸術作品のような美少女の体を五郎八越しに感じた。体温はまだ冷たく、背中を愛おしげに撫でる手はまだ濡れていた。彼女は満天の笑顔を見せて、美しい唇を差し出した。

 後ろから、秋水は坊やを抱いた。JCプリンセスの、気高い美少女の体を背中に感じた。体は芯から冷えていて、胸に絡み付く白い腕が雪女のようだった。彼女は妖しく微笑み、儚げな唇を差し出した。

 五人の美少女は瑞々しい体を預けて、無防備な表情で口付けをせがんできた。五人に強く抱きつかれた坊やは、圧迫で顔が青くなってきた。

 愛がプールにやってきた。人妻らしい、地味なタンキニビキニを着ていた。節制と適度な運動で培われた体は、しっとりとした大人の色香に満ちていた。武道の達人は全身に静かな闘気を宿すと言うけれど、エロスの達人は全身から童貞を殺すオーラを無意識に発していた。

 じゃれあっている六人を見て、愛はため息を付いた。

 五人はまたプールに入って、楽しく遊んだ。坊やは愛に膝枕してもらいながら、その様子を眺めた。

 愛は真剣な表情で、新聞の国際面を読んでいた。坊やは下から、その生真面目でエロティックな顔を見上げた。


「もしかして戻りたいのかな?って思ってる?違います。今の私の国は、この屋敷と学校。それをしっかり守っていく。もちろん、あなたの事もね」


 坊やは愛の太ももに頬ずりした。「こら」と愛は彼の頬を優しくつねった。それでも彼は止めなかった。愛は彼の頭を優しく撫でて、ポツリと呟いた。


「私もあんな風に、好きな人に好きって伝えられる子になりたかったな……」


 坊やは愛を抱き締めた。全身に、綺麗なお姉さんの体を感じた。肌はなめらかで心地よく、少しボディソープの匂いがした。


「大人をからかうんじゃありません」


 愛は弱い力で突き離した。坊やはまた抱き締め、愛もまた引き離した。そのやりとりを二度、三度と繰り返すと、愛は明るく笑い出した。娘に似た、屈託のない無邪気な笑顔だった。


「うーん。じゃあ、三秒だけだよ」


 坊やは笑う愛を抱き締めて、母性溢れる胸に顔を埋めた。愛は赤ちゃんをげっぷさせるように、背中を軽く擦った。三秒を過ぎても、彼女はずっと抱き締めさせてくれた。

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