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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第12章 虹を架ける
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12-5

 大竹の一撃で、五郎八は地面に叩き付けられた。大竹は白い炎で黄金骨を焼き払った。さすがに、大竹の顔にも焦りの色が浮かび始めていた。

 先生は空中の大竹を見上げて言った。


「人間は恐ろしいでしょ?霧山の大魔縁をここまで追い詰めた相手は、川の向こうにはいなかった。あんたの計画、全部ぶっ潰してやった!」

「まだだ。まだまだだ。この頭にはここから盛り返す策が六十四個入っている。君達を殺して、私が乱世に武を布こう!」

「鬼にとっての敵は、ただ壊すもの。人にとっての敵は、学ぶもの。教師であり、ライバルであり、何より友人。あんたは百万回戦っても何も変わらない。彼を鬼怒川で倒せなかった時、この運命は決まったのよ!」


 大竹は全身から七色の炎を吹き出して、巨大な虹の火竜に化けた。

 先生は二人に言った。


「ここで決める!いい!?二人共超全力だよ!」


 二人は頷いた。

 先生は全身から黒い稲妻を放射して、巨大な黒い狼に化けた。両ヒゲと尻尾が鋭い刃になっていた。

 五郎八は全身から白い炎を吹き出して、巨大な白い隼に化けた。

 七色の火竜は天高く上昇した。稲妻の三刀流狼と炎の隼も空へと駆け上った。三匹の魔物は七色の火を吐き、黒い稲妻を撒き散らし、白い炎のビームを打ちながら、王都の空を縦横無尽に飛び回った。

 坊やは全身から霧状の黒い血を飛散させた。血は寄り集まって、赤鬼の分身に化けた。一つの分身は千に増え、千の分身は万に増えた。

 虹の火竜は極太の七色ビームを市街地に打ち落とした。稲妻の狼は急降下で地面に降り立ち、街を覆うほどの三重曼荼羅シールドを展開した。

 ビームは一枚目を容易く貫き、二枚目を時間をかけて抉り抜き、三枚目の表面を炙った所で消滅した。大量の黒い光の粒子が、火の粉のように街中に飛び散った。

 虹の火竜は炎の隼に向かって、七色の小火球を乱れ打った。炎の隼は火球弾幕に正面から飛び込んだ。炎の隼は弾幕の隙間を高速で飛び抜けて、ドリル回転で火竜に体当たりした。火竜の巨体がぐらついた。

 地上の分身軍団は一斉に飛び上がった。軍団は単縦陣に連なって、波打ちながら火竜を何度も攻撃した。無数の赤鬼が縦に連なって荒れ狂う様は、巨大な赤ムカデのようだった。

 赤ムカデは火竜を咬んで、太陽目がけて一直線に駆け上がった。王都の空に、田村家の旗が掲げられた。

 空高く突き上げられた火竜は、力を失って北の郊外に落下した。

 三人は人の姿に戻って、本丸御殿の屋上に着地した。「やったの?」と五郎八は独り言のように尋ねた。先生は北の方角をじっと見ていたが、やがて「あ」と声を出した。

 北の郊外は黒い血の霧に包まれた。その中から、エベレストより大きな黒い鬼が現れた。超巨大黒鬼は、遥か上空から王都を見下ろした。

 王都の市民は絶望した。先生と五郎八は黒鬼を睨んだ。頭に血が昇った二人の目には、正面の敵しか見えていなかった。

 坊やは冷静に、二人を落ち着かせるように言った。


 A「戦いとは、如何にして自分の得意に引き込むか。ここは僕の距離だ!」

 B「思考の死角からの攻撃。ここを突かれると、どんな敵でも容易く崩れる」

 C「戻ったら、尾てい骨が疲労骨折するまでお尻ペンペンしてくれ」


 坊やは空に太刀を掲げた。眩しい赤色の光が周囲に満ちて、二人は目を閉じた。

 宇宙空間に、坊やは太陽系と同じ大きさのアスラ王を召喚した。足は冥王星の位置に、顔は太陽の位置にあった。背後で真っ赤に燃える太陽が、仏像が背負う光の輪のようだった。六本の腕を広げれば太陽系の両端に届いた。

 坊やは赤鬼に化けて、アスラ王の顔の隣に立っていた。アスラ王は足で地球の黒鬼を踏み付けた。

 地球の空から、木星よりも大きな足の裏が降ってきた。足は風も音も生まず、ただ静かに降りてきて、黒鬼だけを踏み潰した。それ以外は、草木一本折る事なかった。揺れも一切起きなかった。黒鬼を踏んづけた所で、アスラ王の足は消失した。

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