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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第12章 虹を架ける
128/136

12-3

 坊やとアシュリーは、一階ロビーの螺旋階段を昇って、二階中央ホールへ移動した。愛と鬼庭と青服隊は、ロビーを横断して一階右翼部へ向かった。

 坊や達はドーム屋根の二階中央ホールを通って、鏡の壁の廊下を移動した。この先には玉座の間があった。

 鏡の廊下の途中に、黒ローブの五郎八が冷たい顔で立っていた。アシュリーの姿を見て、女王の凍えた表情が揺らいだ。


 A「愛を悲しませるな」

 B「そこをどけ」

 C「君を助けに来た」

 ↓

 A 五郎八は俯いて、黙りこくった。


 B「この先には行かせない!敵は!絶対に通さない!」


 C「来るの遅いよ、お兄さん……」


 アシュリーは袋の中身を床にばら撒いた。中には沢山の手紙が入っていた。送り主はアシュリーだけではなかった。千代浜市民や村の子供、軍人、役人、鬼、様々な名前が記されていた。

 五郎八は自分の唇を噛んで、嗚咽を堪えた。アシュリーは手を差し伸べた。


「ごめんね、友達なのに気付いてあげられなくて。本当に辛い時、隣にいてあげられなくて。今日からは一緒だよ」

「……ママが、五郎八は要らない子だって。ママの本当の気持ち、分かってあげれなかった……」

「そんな事、本当に言うと思う?どんなに疲れていても、ゴロちゃんにご飯作ってくれた。周りの大反対を押し切って、家族で一緒に暮らせるようにした。わがまま言って困らせる事があったかも知れないけど、それで大好きなゴロちゃんの事を嫌いになるはずないよ!」

「分かんない。もう、何も分かんない。誰を信じたらいいの?ママに会いたいよ……」


 五郎八は両手で顔を抑えた。


 A「五郎八の国は五郎八が守れ」

 B「大竹は愛を殺しに行った」

 C「お兄さんを信じろ」

 ↓

 A「五郎八の国……女王様……」


 B 五郎八は泣きじゃくった。しかし確かに、後ろの玉座の間に人気は感じられなかった。母親が消えれば、女王は完全に篭絡されるだろう。自分達は、大竹の仕掛けた分断の罠に嵌った。

 アシュリーは坊やを咎めた。


「そんな言い方!……あなたは確かに正しい。だけど冷たい人、怖い人」


 C「五郎八より弱いくせに、悪い人のくせに……何回も戦ったから分かる。お兄さんがどんな人か。お兄さんだって、五郎八の事分かるでしょ?」


 坊やは頷いた。五郎八は涙を拭って、二人を見つめた。その幼い赤い瞳には、王者の風格が漂っていた。


「ママを、この国を守りたい。五郎八を助けて、お願い……」


 坊やとアシュリーは頷いた。

 坊やは何かを察して振り返った。二人はまだ何も気付いていなかった。坊やは全身を黄金骨で覆うと、体当たりで壁を破壊した。

 愛と鬼庭、青服隊は、五郎八の私室に通じる一本道の廊下を歩いていた。二階から大きな音がして、一行は立ち止まった。

 一人の兵士は天井を見上げた。天井から、黒い液体が垂れ落ちてきて、兵士の口に入った。兵士は棒立ちで全身を痙攣させながら、白目を剥いた。

 兵士は愛に襲いかかった。鬼庭は愛の前に仁王立ちになって、突っ込んでくる兵士を(急所を全力で蹴り上げる古流の)巴投げで放り投げた。兵士は背中から地面に落ちて、大の字になった。

 天井が崩れて、黄金骨坊やが落ちてきた。彼は血吸の太刀で兵士を突き刺した。鬼庭はこの世の終わりのような顔になった。

 坊やは長く伸びる巨大筋肉腕で、廊下の先にある私室をぶん殴った。私室のドアは打ち壊され、中の家具類はもれなく破壊された。鬼庭は腐乱死体のような顔になった。

 本丸御殿の壁が崩れて、瓦礫と一緒に大きな腕が飛び出てきた。瓦礫の中には大竹が混じっていた。彼と瓦礫は芝生の庭の上に投げ出された。

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