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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第12章 虹を架ける
127/136

12-2

 坊や達は本丸御殿の一階ロビーに突入した。

 この宮殿は、小国の国家予算にも等しい額で建設されていた。ロビーには黄金の燭台が並び立ち、柱にはエメラルドグリーンの孔雀石が使われていて、床は市松模様の大理石だった。いつもなら、このロビーは、大臣や女官が忙しく歩き回って騒がしいぐらいなのに、今は誰もいなかった。普段の王宮を知っているアシュリーと愛は、少なからぬショックを受けた。

 鬼庭は坊やに言った。


「私と太后様(愛)は陛下のお部屋に向かう。お前は玉座の間へ向かえ。道は複雑だが、ガイドが優秀だから大丈夫だろう。迷っても、壁を壊して道を作るなよ?絶対にやるなよ。ここは本当に高いからな」


 アシュリーは「お任せください」と請け負った。彼女はミニスカートにロングブーツの黒軍服を着て、サンタのように袋を肩に担いでいた。

 愛はロングスカートにミリタリーブーツの青軍服を着ていた。彼女は坊やに頼んだ。


「瓢箪を使えば、大竹を封じ込める事が出来るんですよね?なら、そうしてください。

 大竹の罪は絶対に許されません。だけど大竹を逮捕して、裁判で有罪に出来ますか?証拠はありません。共犯者ももういません。真実を明らかにするには、大竹本人に自供させるしかない。そんなの無理です」


 大竹は反論した。


「悪魔に裁きの場を与える必要はありません!殺せばいい!」

「ですがもし大竹を殺せば、あなたは永久に濡れ衣を晴らす機会を失います。その時、あなたは本当の詐欺師になるのです」


 一同は言葉を失った。口を割らせるのはほぼ不可能だが、ゼロではない。しかし大竹を殺せば、潔白を証明する手がかりは完全に消える。

 愛は坊やに提案した。


「だから、大竹を行方不明にしてください。裁判は開かれません。真相は永久に明らかにされません。大竹が真犯人かも知れないし、あなたは詐欺師かも知れない。そんな状態がずっと続いて、いつか世の中は事件を忘れていくでしょう。

 法が裁けないなら、私達が裁くしかないのです。大竹は自由を尊び、檻を憎む。瓢箪に閉じ込めて、あの男に永遠の苦しみを与えて……!」


 アシュリーは呟いた。


「私刑、ですね……」


 美しくも恐ろしい王妃の申し出に、坊やはこう答えた。


 A「私刑は駄目だ」

 B「家族を殺された恨みを晴らす」

 C「分かったからその靴で顔を踏め」

 ↓

 A「あなたもあの男に苦しめられたでしょう?あいつを裁くにはこれしかないのです。ヒーローなら、正義を貫いて」


 B「お願い……」愛は憎しみだけが宿った瞳で坊やを見据えた。


 C 王妃は冷たい憤怒を湛えた瞳で一瞥した後、ゴキブリでも見たかのように目を反らした。ロイヤルファミリーのリアル女王様からのご褒美に、坊やはただ心の底から「ありがとうございます」と言うしかなかった。

 鬼庭「お前本当にいい加減にしろよ?」

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