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坊やの攻撃で、白鬼は川面に叩き付けられた。坊やは距離を取って着地した。
白鬼は血だらけの姿で立ち上がった。その黒血は川に落ちて、白鬼の分身となった。一つの分身は百個に増え、千個に増えた。分身はネズミ算式に増えていって、とうとう百万の白鬼に化けた。分身は無傷だが、オリジナルの白鬼はまだ血を流していた。
坊やの隣に、天を突くような大巨人鬼が現われた。
「だいだらぼっち。お前が最初に呼んだ鬼だ。俺の両手を使え。俺達の力で、この戦いを終わらせよう!」
坊やは頷いた。彼の背中から、スカイツリーほど大きな両腕が生えてきた。岸の鬼達が叫んだ。
「俺の手も使え、坊や!」
「ワイの手はカッチカチやぞ!」
「僕の手も頼む!」
「こんな手、何の役にも立たないけど!」
坊やの背中から、大小無数の鬼の腕が生えてきた。それらは互いに寄り集まって、スカイツリーに勝るとも劣らない数多の腕に変貌した。それらの腕は、黒い血、そして赤い皮膚に覆われていった。
坊やは松葉ガニ似の赤鬼千手観音に化けた。
「俺達の力、お前に全部預ける!」
「これで決めろやああああああ!」
「勝って、ヒーロー!」
百万の白鬼が一斉に飛びかかってきた。坊やはスカイツリー腕でラッシュを繰り出した。ピースキーパー(核ミサイル)全力乱打が、百万の白鬼を木っ端微塵に粉砕した。
オリジナルの白鬼は吹っ飛ばされて、川の上に大の字になった。腕を消した坊やは、彼の前に立って、太刀の切っ先を突き付けた。
A「力を貸してくれ」
B「俺に仕えろ」
C「人間の国は広いぞ。おっぱいのてっぺんを見せてやる」
↓
A 白鬼は弱々しい声で「刀を向けて頼むのが人間流かえ?」と非難した。坊やは刀を置いて、白鬼に深々と土下座した。
「……完敗じゃ。アスラ王もそなたになら力をお貸しになるであろう」
B「またワシは人間に負けるか。人間の言いなりになるか。あな口惜しや……」
C「ワシはお尻の方が好きじゃが、見せてくれるなら正直どっちでもいい……」
白鬼は坊やに約束した。
「田村俊宗との契約は終わった。今日、新たな契約を貴様と結ぼう。鬼と人の世に光あれ!」
全ての鬼が、黒い光の粒子となって消え去った。血吸の太刀の刀身に、「瑞亀十三年 約」という黒い字が刻まれた。