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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第11章 命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人
121/136

11-9

 ―「限界だって時は思い出して。そうすれば、皆の力が壁をこじ開けてくれる」


 少年は師匠の言葉を思い出す。

 秋水と初めて会った時の事。孤独に打ちひしがれた彼女に手を差し伸べた時の、今にも泣き出しそうな顔。

 厳しくも優しかった父。妻を早くに亡くし、いつも写真を持ち歩いていた。戦う前、一人きりで写真を見つめるその寂しげな瞳。

 父の命令で、夜中城外の刑場に兄妹三人で晒し首を見に行かせられた時。武人とはこうあるべきだという、兄の大きな背中。

 鬼怒川の川沿いで、死体を漁って回る大竹。例え彼が敵であろうと、良い所があれば学ぶ。彼を倒すために。

 自分の足に刃を突き立てた鬼庭。犯人を追うその目は、怒りと憎しみに震えていた。

 提督は逃亡犯を暖かく迎えてくれた。老人達は嘘でも慰めてくれた。彼らの優しさが心に染みた。

 アシュリーの車に乗って、綿業会館に向かった時。機械の馬車を運転する彼女は頼もしく、美しかった。

 リオと初めて会った時、胡散臭いと思った。それは今でも変わっていないが、胡散臭い人間でも信用出来る事を、彼を通じて知らされた。

 ピアースと潜水艦に乗った時。これから全てのボケ処理を任せられると知った彼の、キレキレの例え突っ込み。

 炎上する船に取り残された瀕死の魔王。死の間際にあっても、彼から気高さが失われる事がなかった。

 子供達にコーチするテリー。軍人にさせられた彼女に、親近感や悲しみを覚えたが、彼女にそのような思いを抱くのは侮辱になるのだろう。

 赤い目の仮面の少女。鬼でも人間でもない彼女に、ソハヤは効かなかった。大竹が何故彼女をぶつけてきたか、彼女がどんな思いで戦ってきたか、今なら分かる。


 ―「君の源はここ。『限界』に限界はないよ?」


 さよならの代わりの、先生の甘やかな表情。

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