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千代浜市内は不穏な空気に包まれていた。
新聞社は駅で号外を配った。、市民は食い入るように、黒血を流す三刀流剣士の写真を見つめ、または、桃太郎と鬼の癒着を暴く大竹の言葉を読んだ。騙された元ファンは、市役所の入り口に自動車で突っ込んだ。一部のファンは、新聞社に火炎瓶を投げ込んだ。
商店街は「坊やも食べた○○」「坊やおススメ○○」といったポスターをコソコソと外した。剥がさなかった店は石を投げられた。
千代浜城の白壁には「売国奴」「鬼の仲間」といった落書きが書かれた。ゴミ捨て場には、「坊や変身セット」や「坊やカレー」といった関連グッズが山のように捨てられた。
街の大通りでは、一部の熱狂的ファンが坊や支持のデモ行進を行っていた。しかし大勢の市民は、彼らに冷ややかな視線を送るだけだった。
「だっさ」
「まだ坊やとか言ってんの?死ねって」
「最初から怪しいと思ってたけどね。だって国王殺しの息子だろ」
「王様殺したの坊やって聞いたぜ」
「今坊やって言った!きめえ!お前信者だろ!」
「安否不明って何だよ。早く死亡確認出せよ、使えねえなー」
「聞いた?全部坊やが裏で計画してたんだって!鬼の国を作ろうとして」……