11-3
ゆるパパは大反対した。
「黙って聞いてりゃあ……馬鹿げてる!何のために苦労してきたんです!?後一歩ですよ?後一歩で全てが手に入るのに、それを全部捨てるって言うんですか?」
坊やは頷いた。「ガキが!」とゆるパパは毒づいた。
「いいか!?お前は国を作ったんだ!作ったなら、その国を豊かで平和で立派な国にしてかなきゃいけないんだよ!お前なら、千代浜を世界一の国に出来る!お前の下で働くのが、俺の夢なんだ……」
A「僕はヒーローだ。政治家じゃない」
B「これが千代浜を守る最善手だ」
C「子供が助けを待っている」
アシュリーは耐えられなくなって部屋を飛び出した。提督は「孫泣かす奴とは戦えねえな」と言った。坊やは彼女を追いかけた。
坊やは廊下でアシュリーに追い付いた。遊戯室前の廊下は人払いされていて、衛兵もいなかった。アシュリーは涙を拭ってから、坊やに振り返った。
「……気付いていました。あなたに無理をさせていた事。私達は、魔王から逃げてきたあなたを別の檻に閉じ込めた。もう、自由にしなきゃいけない。本当なら、こんな所にいてはいけない人なのだから。
でも……駄目です、どこにも行って欲しくないんです。わがままだっていい、卑怯だって言われて構わない。ずっと、ずっとここにいて欲しい……」
A「どんなに離れていても、ずっと大切な友達だ」
B「もう誰の下にも付かない」
C「生まれ変わったらアシュリーのパンツになりたい」
↓
A、B アシュリーはまた後ろを向いた。
「ごめんなさい。少し一人にさせてください、すぐ、すぐ戻りますから……」
彼女は両手を顔に押し当てた。声は出なかったが、時折肩を震わせた。彼女の背中は小さくて、そして悲しかった。
C アシュリーは泣きながら平手打ちした。
「幾らでも見せるから、死ぬような事言わないで。絶対帰ってきて……」
坊やは彼女の両肩に手を置いた。アシュリーは振り解こうとしたが、彼は強く押さえて放さなかった。坊やは謝ってから、綺麗にアイロン掛けされた絹のハンカチで、泣き腫らした彼女の涙を拭った。
「先生には蔑まれても、無視されても感謝するのに、何なのごめんなさいって……私にはありがとう出来ないの?……」
坊やは微笑んで、感謝の言葉を述べた。
テリーとゆるパパが様子を見に来た。アシュリーは急いで涙を拭い、鼻を啜った。テリーは妹の肩に優しく手を置いた。ゆるパパは嘆いた。
「娘のどっちかと結婚してくれば、アーバイン家は永久に安泰だと思ったんだがな。もういい。お前達は好きな男と付き合いなさい」
アシュリーは坊やの右手を、テリーは左手を握って宣言した。
アシュリー「この男です」
テリー「揺るぎなくこの男です」
ゆるパパ「このアマ~、違うだろ~……」