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軍艦二隻は街を離れて上流へ向かった。港は炎上しており、黒い鎧の残骸が散乱していた。
装甲艦の艦上に、ゆるパパ、ピアース、提督と、愛王妃、鬼庭がいた。重々しい空気だった。軍艦からも、天に昇る青い柱は確認出来た。
提督は光の柱を見上げながら、気休めを言った。
「あいつらなら大丈夫だ。集合地点に急ごう」
ゆるパパは取り乱した。
「だから言ったんですよ!鬼なんて仲間にするから!全部失った!何が大丈夫!?生きてようが死んでようが関係ない!詐欺師のために誰が戦うんだ!」
ピアースはゆるパパをなだめた。この後、大竹が勝負を仕掛けてくるのは確実だった。
「総裁、落ち着いてください。本当の地獄はこれからです。これで千代浜軍はもう戦えません。このニュースを聞いた兵士は皆逃げしますよ。いや反乱が起きて、俺達は処刑されるかも。大竹も既に遠征軍を準備しているでしょう。これが狙いだった」
提督はゆるパパに命じた。
「お前は高速船で先に戻れ。今のままじゃ戦う前に滅亡だ。市民を抑えろ、やれるな?」
「おおおおお!パパ、ワイやったるけんよ!」
愛は俯いていた。提督は彼女に問い質した。
「この企みを何時知ったんです?」
「幽閉されていた時に、偶然会話を聞いて。何とか将軍と連絡を取り合って、脱出は出来たんですが……」
「全ての責任は私にあります」と鬼庭。
「いえ、私のせいです。私はもっと前から、この計画に気付いていました。だけど、誰かに打ち明ける勇気がなかったんです」
愛は軽く息を吐いて、自分を落ち着かせた後、四人の目をしっかり見て話し始めた。
「全て大竹が仕組んだ事です。彼は反乱を唆して、田村一族を滅ぼしました。先王陛下を殺して、私の夫も殺させました。全ては、この国を乗っ取るために。鬼庭将軍、あなただって気付いていたでしょう?お義父様を殺した真犯人を」
「それでも、主は主です。魔王の下で戦えた事は、永遠に私の誇りです」
提督は疑問を呈した。
「魔王が死んだ所で、次に継ぐのは五郎八王女だ。あいつは精々宰相止まりで、王様にはなれっこない」
愛は両手で口の辺りを抑えて、下を向いた。その辛そうな顔を見て、鬼庭は席を外した。「娘、なんです」と愛は言葉を搾り出した。「そりゃ知ってますよ」と提督。
「違うんです……あの子は大竹の娘なんです……無理矢理……」