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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第10章 天使の証明
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10-13

 坊やの体が黒い血に覆われていった。血は固まって赤い鬼の皮となり、剥き出しの筋肉を包み込んでいった。骨と肉でパンパンに膨れ上がった体が、赤い皮膚に締め付けられて、人間サイズにしぼんでいった。坊やは不完全ながらも、多数の腕を持つ赤鬼の姿に化けた。

 皮膚は穴だらけで、所々骨や肉が剥き出しだった。腕の長さや太さはバラバラだった。人間そっくりの引き締まった腕もあれば、締まりすぎて棒切れみたいになった腕もあり、膨らんでお歳暮のハムみたいになった腕や、膨らみと引き締まりが交錯してえだ豆みたいになった腕もあった。

 スピードが一気に跳ね上がった。手回し式のガトリング砲だった打突は、一秒百連発のバルカン砲になった。一対十は百対十に逆転した。黒ローブは猛烈な打突の嵐を食らって、半年使った歯ブラシの姿になった。

 しかし、皮膚の虫食い穴の大きさも急速に広がっていった。剥き出しの肉は腐って飛び散り、露出した骨は折れ砕けた。坊やは骨、肉、血の三重召喚を維持し切れなくなってきた。千手観音の手が大量に崩れ始めた。

 坊やは崩壊する体で、最後の打突ラッシュを打ち出した。トマホークミサイル全力乱打が、黒ローブの全ての手を突き崩して、本体を吹っ飛ばした。

 坊やは全身を赤いドリルに変えて、止めの突撃を加えようとした。しかしドリルは空中で自然消滅してしまった。坊や本人は力なく地面に落ちた。

 吹っ飛ばされた黒ローブは、プールでターンする動きで、回転して墓石を蹴り、その反動で坊やに突撃してきた。

 坊やは空中に、電撃曼荼羅シールドを三枚重ねに張った。彼の姿は一瞬シールドに隠れた。黒ローブは白い炎の刀を出すと、シールド三枚を一刀両断に切り裂いた。

 シールドの後ろには誰もいなかった。坊やがいた場所には、大きな穴が開いていた。

 黒ローブは穴の前に立って、辺りを見回した。それから後ろを振り返って、誰もいない場所に左手を構えた。

 真正面の地面から、坊やが飛び出してきた。彼はソハヤで逆袈裟切り(斜め切り上げ)を放った。光の刃は黒ローブをすり抜けた。

 坊やは黒ローブの顔を見た。彼は白いキツネのお面を被っていた。その目は未だに赤く、ソハヤで切っても鬼の力は一切失われていなかった。

 黒ローブはゼロ距離から青い炎のビームを発射した。射線上の物体は全て蒸発した。地面や墓に、赤黒く焼けて抉れた一直線の跡が残された。

 坊やがいた場所に、傷一つ付いていないソハヤが落ちていた。黒ローブはその青い光の剣を拾い上げた。大竹は触れた途端腕が破裂したが、黒ローブの身には何の変化も起きなかった。

 黒ローブは白い炎でソハヤを燃やした。燃えゆく剣から、青い光の粒子が大量放出された。人魂に似た淡い青の光が、破壊された墓場を包んでいった。剣は燃えカスになって地面に落ちた。粒子は天へと昇っていき、神秘的な青い光柱を形成した。

 鬼殺しの剣、そして鬼と人間との不可侵条約の証は、鬼とも人間とも付かない存在に破壊された。

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