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昼休みになった。生徒は校庭や体育館を走り回った。先生のクラスのリーダー格は坊主頭の着物の子で、いつも三つ編みの女の子と、半ズボンの男の子を引き連れていた。
坊やと先生は柔道場で特訓した。坊やは体の右半分を骨で、左半分をかゆうまで覆い、その半々の状態を長時間キープした。先生は天井に立って、床の坊やを見下ろしていた。
「遠距離から強力な範囲攻撃を叩き込むのが君の勝ちパターン。君がピンチになるのはいつも接近戦から。だから接近されると、逃げて距離を取ろうとする。敵も君のパターンに気付いている。当然、そこを突いてくる」
坊やは体を曲げた。彼の背中から、セミが羽化するようにして、黒い血の体が生えてきた。坊やは二つの上半身と、四つの腕を持つ異形の姿になった。彼の四つの手から、黄金の骨の刀が各一本づつ生えてきた。
先生の剣ファンネル三本が、坊やの前に飛んできた。坊やは黄金骨刀四刀流で、剣ファンネルに高速乱れ突きを放った。剣ファンネル三本も負けずに激しく切り返した。三本は時に黒電撃を放ち、曼荼羅シールドでガードもした。両者は互いに斬撃を打ち合った。
「君は力を使うという意識が強すぎる。自分の心臓を動かずぞと思って動かしてる?手足の使い方どこで習った?肩肘を張らず、もっと気楽に、息をするように。鬼の力を使おうと思わないで。鬼そのものになる」
坊やの息が上がってきた。身にまとう血や、骨や、肉の色が薄くなってきた。
剣ファンネルは攻撃を止めた。
坊やは床に膝を突いた。黒い血の体が、破裂して消え去った。骨と肉も消失した。
「和平交渉が成功したとする。あいつが王宮から追放されて、しかも黒い鎧武者と分断出来たとする。そんな理想的な二体一に持ち込めたとしても、勝率はまだ四割。残り六割は作戦と君のレベルアップで補うしかない。時間ないよ」
坊やは立ち上がって、また異形の姿に化けた。「グッボーイ」と先生は飴ムチで褒めた。