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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第2章 ラストピース
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2-2

 太平洋に浮かぶムー大陸は、一人の皇帝と七人の王によって統治されていた。大陸の東海岸は欧米の、西海岸はアジアの影響が色濃かった。

 西海岸はアジアの激動に晒されていた。西海岸北部の森林地帯は軍国主義の絶対王政国家、拘薩羅コーサラ王国が、中部の農業地帯は啓蒙主義の啓蒙専制国家、迦尸カーシー王国が、南部の湿地帯は重商主義の立憲王政国家、阿槃提アヴァンティ王国が治めていた。

 中部の武振王家は様々な矛盾を抱えながらも、いわゆる「上からの近代化」を強引に推し進めていた。最大の障害は、強大な軍事力を持つ東部の田村公爵家と、西部の豊かな港湾都市を治める亘理伯爵家だった。田村正貫公爵は改革を憎んで反乱したが、王子と田村佑国の軍に鎮圧された。その後、王子は病に伏せっていた国王と佑国を殺した。

 王国と田村公爵領の境目に、古い城塞都市があった。土壁と堀に囲まれた街で、中心部には熊本城のような堅城が聳えていた。城外には豊かな田畑が広がっていた。

 城外の畑では、戦争に備えて稲の早刈りが行われていた。畑仕事には機械動力が積極的に導入されていた。稲を刈り取るトラクター。蒸気エンジンを使った脱穀機。彼らは反乱軍と違って、機械文明に抵抗がなかった。

 鉄道も導入されていた。金色の田畑の中を、蒸気機関車が煙を上げて走っていた。

 王子と頼朝似の鬼庭将軍率いる青服隊千が、今、この国境の城塞都市に突如として現れた。輸送部隊を連れていないので、身軽だがスタミナに不安を抱えていた。

 城側は完全に不意を衝かれた。城外で作業していた農民は、「蟠龍起萬天」の旗を見るなり平伏した。

 城壁に掲げられていた田村家の旗が下ろされた。門から、「使」と書かれた白旗を持って、一人の坊主が出てきた。


「降参!降参!鈴木元治、官軍に降参致す!大逆人の子、田村佑民を討つ義戦の先鋒を務める事をお約束致す!」


 王子は鬼庭に「鈴木は拘束して裁判。軍は解体しろ」と命じると、部隊半数を動かして風のように去っていった。

 公爵領の南部を反乱軍が、北部を田村佑国が治めていた。王都~北部間は列車が通っており、この鉄道の南部延伸問題から、田村正貫の反乱が起こった。佑国の後を継いだ佑民は各地に救援の使者を発したが、「裏切り者」に味方する勢力はなかった。

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