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勇者38名の召喚②

結局クラスメイト全員の名前は考えれなかったけれども。半数はできた。

 





「━━━━━━━ようこそ勇者様方。」




 

 その声の出所へと顔を振り向かせる総勢38名。

 彼らが振り向いた先には、可憐な少女が立っていた。その後ろには騎士らしき格好をした者。それも複数。


 突然のことに、彼らは脳の処理が追い付いていなかった。ここで平静を保てる人間がいるのならば、それは常人ではなく、狂人であるに違いない。

 普通の人間であるならば、起こり得ない事象が起こったときにとる行動は必ず『思考放棄』か『現実逃避』のどちらかであるからだ。

 だがここに、その心持ちを一切崩すことなく。平常心を保っている者がいた。しかし、その人物は狂人などではなかった。いや、そもそもその者は半分しか人間ではない。その存在は一体何者なのか。




(さて。で、どういう状況なのかね)




 そう。『神』である。




 ★★★★★★★★★




「申し遅れました。私は、ルテミス王国第一王女ソフィア=ルテミスです。私が貴方達を召喚致しました。」


「し、召喚…?」



 誰かが呟く。それもそのはず。

 召喚など、ドラマや小説などの創作物でしか耳にしたことのない彼らからすれば。なるほどそれは耳を疑う話であろう。


「はい。」


 自らのことを王国第一王女と名乗った彼女は、何気ない仕草の一つ一つがとても優雅に見えた。


「私が、この世界を脅かす存在である、『魔王』を倒してもらうために。あなた方を呼んだのです。」


 ここまで来ると、冷静さを取り戻しているものが半数を占めていた。彼らは悟ったのだ。目の前の少女は狂言を言ってないであろうことを。自分達は『召喚』されたのだ、と。


「………………ふざけんなよ」


 ここで、少し小さいが、あからさまに怒気を孕んだ声が発せられる。それは誰が発した言葉であったのだろうか。今となってはもうわからない。なぜなら、それを発端として、口々に不平不満を叫び始めたからである。



「そうだよっ!何が召喚だっ!頭おかしいんじゃないのか!?」


「け、携帯が使えないぞ!」


「私たちを学校に戻してよっ!」



 彼らはパニックに陥る。

 そんな彼らの中から、一際大きな声で語りかける男がいた。



「みんな!まず、彼女の話を聞いてからでも遅くはないんじゃないか?」



 彼の名前は結城(ゆうき)正義(まさよし)。クラスのリーダー的存在であった。



「まぁ、正義がそう言うんなら………」


「まあ話を聞いてからでも、なあ?」


「とりあえず聞くだけ聞いてみようぜ」



 と、一瞬にしてクラスを纏めあげる手腕は、こんなときにも健在である。



「ありがとうございます。えっと………」


「あぁ、えっと、僕は結城正義。正義が名前で、結城が名字。」



 爽やかな笑顔で握手を求める正義。そんな彼を見てソフィアは、一瞬だけ顔をしかめ、握手に応じる。それは、誰もが見逃す程の時間であった。普通の人ならば気付きもしないだろう。そう、普通の人ならば。



「結城様。ありがとうございました。」



 ソフィアはさっさと正義の手を離し、説明にうつった。





 ★★★★★★★★



「つまり、俺たちには神からこの世界で生きていくための『力』が与えられていて?それを使えば魔王は倒せる、と。」


「はい。」


「でもそんなこと言われてもなぁ………」


「大丈夫です。いまから全員のステータスを確認しますので」



 何でも、この世界では生命力や攻撃力など。他にも諸々のことが数値化されて表示できる手段があるのだという。それが魔法であると。



「では皆さん。それぞれステータスと言って見てください。」



 クラスメイトは、若干恥ずかしながらも口々に「ステータス」と口にする。魔法なんて本当にあるのか。これはドッキリなのではないか。と未だに信じていなかったものも。百聞は一見にしかず。からだの前に写し出されたステータスプレートを視界に収め、これは現実であると全員が認識した瞬間であった。

 そして同時に、この状況を受け入れ始める。



「俺、火の魔法適正めっちゃ高い!」 「私のこのスキル強すぎない?」「まぁ、俺のステータスは同然だろうな」「お、俺のスキルめっちゃ多い!」「どうせゴミばっかだろ?」



 誰もが一度は夢見た剣と魔法の世界に来たのだ。それが現実であると認識したと同時に、クラスの興奮は最高潮まで達した。



「では皆さん。ステータスを表示したまま、私のところに来て下さい。」



 ソフィアの言葉に従うクラスメイト。ソフィアの前に一列に並んで順番を待つ。



「正義様。貴方のその力は、魔王を倒す手段の主体となるでしょう。今回の勇者召喚での勇者は、貴方であると推測します。」



「おお、正義勇者だってよ!」「まぁ、結城だからなぁ」「正義君カッコいい!」



 口々に言葉にする彼ら。曰く結城は勇者で当然だと。結城以外勇者はあり得ないと。

 クラスのカースト上位者という存在の大きさが改めて思い知らされるのであった。




「おい、小鳥遊のステータスみろよ!」



 そこで、生物として当然の行動であるが、この場では起きてほしくないことが起きた。

 そう。弱者の淘汰である。






次は一週間以内に

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