0-6 二度目の目覚め
part 蟹
ここは・・・いったい・・・どこですか?
私が目を開けるとそこには星空が広がっていた。どうやら今は夜のようだが、木などが見当たらないことから巨赤鬼と戦った森ではないようだが。
「確か・・・私は・・・ウグッ!」
起き上がろうと床に手を着けようと腕を動かすと痛みを感じた。そしてゆっくり手を前に持っていき確認すると、酷い有り様だった。
甲殻は割れて中身が見えていた。止血はしてるので手当てしてくれたのだと理解した。誰が手当てしてくれたのだろう?と考えていると。
「あ!目が覚めましたか!」
そう言って此方の顔を覗き込む茶色い髪と犬耳をした魔族の姿があった。まず事情を訊こうと話しかける。
「えっと、あなたは…」
誰ですか?と聞こうとしたが、犬魔族は
「隊長ー」
と言い私の視界から外れて走って行ってしまった。ため息を吐いてしまう。私は腹筋に力を入れ腕を使わず起き上がる。改めて周りを確認してみる。
辺りは暗くなっており、見ずらいが右側に砂利で舗装された道が見える。そこに狼マークのついた馬車があり、馬車に繋がれた馬がブルンブルンと首を振っている。
左側には森があった。さっきまで戦っていた森だろうと予想をつけた。
そして目の前には焚き火があり、その上に石や木で固定された鍋が置いてあった。美味しそうな匂いが鼻をくすぐる、思わず唾を飲んでしまう。
その周りには4つの全く同じのバッグがあり、1つは乱雑にもう3つがきちんと中身が崩れない様に置いてある。
そして最後に、掛けていてくれた毛布を捲り自分の体を見る。どうやら腕以外は完治しているようだ。とそこへ
「大丈夫か?」
唐突に落ち着いたというより暗い声がかけられる。思わず驚いて声を出してしまう。
「きゃ!?」
再度周りを確認するが誰も見当たらないが・・・気配はする。そしてそこへ顔を向け言う。
「そこですか?」
少しの間、そして
「バレたか」
そう言いながら、何もない空間から突然現れてきたのは全身緑色の蜥蜴、というよりもカメレオンに似た魔族だった。服はズボンだけで、上半身は心臓の部分を守るようにベルトで固定されたレザーアーマーを身に付け、腰の後ろに2つの短刀が差してあった。
私が狼狽えていると
「驚かせてすまない。自分の名前はシジマという。・・・では」
「え、ちょっと!?」
そしてシジマと名乗った避役魔族は再び空間に溶ける様に消えていった。
「な、何なんですか・・・」
ボソッと呟いた時、砂利道越しの向こう側から三人の魔族がこちらに向かっているのに気づいた。
一番小さい犬魔族が此方を指差し二人に何か言っている。距離が近づくにつれ段々聞こえるようになってくる。
「だって仕方ないじゃないですか!あの赤い魔族少し怖いんですよ!主に目が!」
グサ!
「いや、まぁ分からなくはねえけどよ。俺達を助けてくれた。命の恩人なんだぜ、てかお前、俺に同じ事言ってたじゃねーか。まぁぶっちゃけ・・・不気味だけど」
グサグサ!!
「お前らいい加減にしろ・・・もし聞かれてたらどうする、食われちまうかもしれねぇぞ」
・・・
そして三人組は焚き火の光りが届く所にまで近づき、狼魔族が声をかけてくる。
「よぉ、目が覚めたみたいだな俺は・・・?」
私が俯いてプルプル震えてるのに気づいたのだろう。心配そうに聞いてくる。
「お、おい本当にだいじょ「誰も・・・」え?」
「誰も食べませんよ・・・!」
その言葉を聞いて罰が悪そうな顔をする狼魔族。それに非難するような目を向ける鷹と犬。何もないはずの空間からため息が聞こえてきた。
「言っときますけど、好きでこんな見た目じゃありませんから!」
そういうと、鷹の魔族と犬の魔族さらに狼の魔族が頭を下げてくる。
「「「すみませんでしたぁ!食べないで下さい!」」」
「喧嘩売ってるんですか!?だから食べませんよ!」
何もないはずの空間からさらにため息が聞こえてきた。
避役はカメレオンと呼ぶそうです。