1-7 緊急会議
pert リチャード
緊急会議 議題 「レヴィの処遇とその他諸々」
俺はレヴィを医務室に運び、二階の会議室にやってきた。会議は本来各部隊長と副隊長が参加するため、俺がここに来たのは初めてだ。
この会議室は石壁に白い塗装を施してあり、水の入った木製のコップが7つ置かれている円状の大きなテーブルが真ん中にある。
そこには猪を二本足で立たせたような見た目の第1部隊の隊長グラックと副隊長ベージュ、第5部隊のレヴィを除いた全員、そして包帯でグルグル巻きのデュラン団長が椅子に座っていた。会議の進行役はポピーだ。
「えー、これよりレヴィさんの諸々について会議したいと思います。まずレヴィさんをこの騎士団に置いて置くかを決めたいと思います。意見のある方どうぞ」
団長が手を挙げ、杖を足代わりにして床を突き立ち上がる。大丈夫なのかあの人?相当ボコボコにされていたけど。
「俺はレヴィをこのまま騎士団に残すことにしたいと思ってる」
第1部隊隊長のグラックが怪訝な表情で質問する。まぁ堅物のあのおっさんなら当然だよな。
「なぜですか?話しに聞く限りだとかなりの危険人物だと思いますが」
「だからこそだ。そんな奴を野放しにして騎士団に敵対したらどうする?言っとくが、俺があの女と戦う事になったら全力で逃げるぞ!」
俺はてっきり騎士団から追い出すかと思っていたが、なるほどそういうことか。あの力を手放すのを惜しんだかとも思ったが、違うようだ。それほどアレが効いたらしいな。そんなに怖いのか、トラウマになってるみてーだなその殺戮夜叉って奴は。
「団長がそれ程恐れるとは相当の実力者ですな。ベージュお前も戦ったのだろう、どうだったんだ?」
「はい、使っていた武器はロングソードでおそらくは達人級の称号をもっていたと思われます。試合の結果は僕の完敗でした」
俺から見たら剣術は同等だったけど、身体能力の差が激しかったよな。
因みに悔しいが俺はベージュには勝てない。
「ふむ・・・騎士団に残すべきと思うか?」
「はい、正直勿体ないと思います」
「そうか、ならば第1部隊もレヴィを騎士団に残すべきだと意見しよう」
おっ、第1部隊が賛成意見を出した!そこにハルス隊長も賛成意見をだす。
「我々第5部隊も同じように意見します」
「ではレヴィさんはこのまま騎士団に残します。ですが・・・やはり何か罰を与えないといけませんよねデュラン団長」
そうやってレヴィを騎士団に残す事が決まった。よっしゃ!
だが罰か・・・
「そうだな、仕方ないにしても騎士団本部内で問題を起こしたのだ。その辺りキッチリしないと他の騎士に示しがつかないしな。そこで何がいいと思う皆?」
うーん、団長を瀕死になるまでぶん殴ったんだからなぁ・・・俺がいつもやってる掃除程度では済まないよな。みんな同じようで頭を捻っていると団長が顔を上げた。
「そういえば・・・昔、魔王様が作ったけど誰も似合う魔族がいなくてがっかりしてた服があったな。確か・・・<コスプレ>だったか」
「「「「「「こすぷれ?」」」」」」
何だそりゃ?新しい戦闘服か?魔王様も変なの思い付くな、今に始まった話じゃないけど。
「何でも
「<萌え>と言う感情を引き出し、ありとあらゆる勧誘活動に役立てる事が出来、さらにグッズも売れてウハウハだぜヒャッハー!」
とか酔っぱらいながら言ってたが・・・やらせてみるか?」
萌え?なんだ炎系の魔力付与でもしてんのか?
ピンと来ないが、要するに魔王様がしたがっていたことをやらせるつー訳だ。それなら騎士達にも示しが付くし、騎士団としても人材集めができて良いことばかりじゃないか。
「いいんじゃねーのその<コスプレ>で」
「リチャード・・・団長にそんな言葉使いするな!すいません団長」
「今に始まったことじゃないしな・・・もう気にしない事にしたぞ」
「リチャード君・・・君、団長相手でもそれなのかい。・・・ハルスさんも大変ですね」
「いえ、慣れたので・・・」
「心中お察しいたします」
なんだ、俺が悪いみたいな空気だな。俺は悪くない俺は悪くない。と思ってると隊長が俺を見てるのに気づいた。
「よし、リチャード。お前レヴィの様子見て来い。医務室にいるはずだ。起きていたらこの事を話しとけ。あと・・・ちゃんとフォロー入れとけ、女はいい男に惚れるんだぞ!」
「俺全力で頑張ってきます隊長!!ってだから違う!俺はそんなんじゃ・・・」
みんなが俺を見てニヤニヤしてやがる・・・!俺は逃げる様にその場をあとにし医務室に向かった。
「あー!くそ!」
part デュラン
「いったか・・・」
「レヴィの機嫌が良くなっているといいのですが・・・」
俺の言葉にハルスが答えてくれた。だがまだそんなに時間は経っていないし微妙なところだろう。
「リチャードを送ったのはその為だ。もしレヴィの機嫌が悪くても、アイツをボコボコにする分には誰も困らないからな」
「そういうことでしたか」
アイツの扱い雑だなー、当然だろうけど
とそこで第5部隊のポピーが口を開く。
「そういえば、レヴィさんって何者なのでしょうか?」
みんなが頭にハテナを浮かべる。ハルスがみんなの声を代弁する。
「何者ってそりゃオリジンだろう。キャンサーという種族で怒りっぽくて、人間の姿が好きな魔族だろう。どうしたんだいきなり?」
「あ、いえ、なんというか、おかしくないですか?あんな実力者がなんでゼリア海岸にいたのか。あの剣術は誰から習ったのか。いくらオリジンとはいえ騎士団最強の団長を圧倒する力は異常じゃないですか?それになんであんな人間の姿に固執するのかとか。それに・・・前々からなんか見たことがある気がするんですよね、あの人間の姿」
・・・確かに謎が多いが確かめようがないな。
「あ、ポピーさんもそんな気がしてましたか!僕もどこかで見たことあるんですよ」
「実は・・・俺もだ」
ハルスまでそんな事をいいだした。俺もなんか引っかかっていたが思い出せないのでそのままにした。レヴィの姿を見てないグラックが完全に蚊帳の外だ。
まぁとりあえずリチャードの帰りを待つか。その間にミビリス火山についてハルスに言ったことを皆に伝える。
「お前ら、もしかしたら聞いてるかもしれないが第1部隊のミビリス火山調査を第5部隊に引き継がせようと思う。皆何故かと思うので一気に話すと、魔族街デアントで反魔王団体が動き出してると言う情報を得た為だ。10年前の戦争で負傷を負い療養中の魔王様に何かがあると不味いので最初は第5部隊と第1部隊を街に残そうと思っていたが、その後ベージュの報告でミビリス火山の更なる調査が必要だと考えた為だ。そのベージュの報告は火山付近でこれが見つかったからだ!」
そう言いきって俺はテーブルにマナの入ったビンを置いたが・・・皆「なにいってんだコイツ?」見たいな顔をしてた。ポピーが恐る恐る質問してきた。
「あの・・・デュラン団長・・・その空のビンは?」
「え・・・」
そう、ビンの中身が空で蓋も無かったのだ。振っても開けても中から何も出なかった。まさか・・・そう思い回りを見るとビンの中身を知っていたハルスとベージュ、グラックが聞いてきた。
「「「団長・・・まさか・・・」」」
「やっべぇ・・・!」
思い当たる節は1つ、レヴィにボコボコにされたときだろう。
さて、ここで問題・・・
「マナは常に大量の魔力を放出してる」
「石やら鉱石は魔力を浴びると魔石になる」
「魔石に更に魔力を与えるとゴーレムになる」
「騎士団本部の壁石は攻められてもいいように硬質化を魔力付与した魔石にしてる」
・・・俺を含めた四人の顔が青くなる。
「「「このバカ団長!!!」」」
「あんなにボコボコにされたんだ、仕方ないじゃないか!というか早く落としたマナを探してビンに入れないと不味いぞこれ!!」
だが事態は俺達が想像の斜め上を向いて進行していた。それを実感したのはリチャードが帰ってきてからだった。
次回!遂にアイツが喋る予定!!・・・おもしろくなればいいなぁ(遠い目)