1-6 大天使
part レヴィ
修練場を怒りながら出たレヴィは騎士団本部内を宛もなくさまよっていた。
(なんなんですか!皆して不気味だの化け物だの挙げ句の果てに男と間違えるなんて!ベージュさん最低です!第一なりたくてこの体になったんじゃないんですから!騎士の皆に舐められるから人間の姿じゃなくてあの体の方がいいとポピー君に言われてあの姿になったのに!ああ、もう!私だって女なんですよ!腹が立ちますよ!それに・・・)
と考えた所でさっきの入り口広間についた。警備の2人はいないようだ。もう時間は夕方頃で、おそらく交代の時間なのだろう。とそこで螺旋階段からハルス隊長とデュラン団長が降りてきた。
「おい、そこの女!ここで何をしている」
これが悲劇の始まり。
part ハルス
ようやくデュラン団長の説教から解放された俺はジャイアントレッドオーガの角を渡した。
「これが巨赤鬼の角です」
「うむ、ご苦労だったなハルス、俺は今から休憩室まで行くんだが、一緒にどうだ?聞かせたい話しもあるんだが」
聞かせたい話し?
もちろん俺に団長の誘いを断る事が出来る立場ではないので一言で答える。
「わかりました」
俺はそれだけ言って廊下を出た団長の後に続く。
窓から外を見ると、もう太陽が地平線に隠れそうになっていた。扉を閉めると団長は歩きながら話を始める。
「実はミビリス火山付近で変異種モンスターの調査していた第一部隊がお前達より早く帰って来ててな、こんな物を見つけてきたのだ」
第一部隊が戻って来ていたのか、隊長のグラックさんがそろそろ引退するとか言ってたな。
俺がそんな事考えていると団長がポケットから取り出したのは瓶に入れられた小さな虹色に輝く宝石のようだった。だが周りの空間が淀んで見える。まさか
「まさかこれは、マナですか!」
マナとは魔力が結晶化したもので、大量の魔力を放出し続ける危険な代物だ。
魔力は全ての物や生き物が持っているが、魔力過多状態になりそのままの状態でいると突然変異を起こしてしまうのだ。
魔石も、宝石や鉱石が魔力を帯びたものでそのまま魔力を浴びせ続けるとゴーレムというモンスターになるのだ。今問題になっている変異種モンスターは、大量の魔力を受けて魔力過多状態のモンスターが突然変異してしまった姿だ。
魔族にも影響があり、多くの魔力を浴びると理性を失い暴走状態になってしまうのだ。魔力は目に見えなく体で感じ取るものだ。それが結晶体になる程魔力濃度が高いと言う事は・・・
「ミビリス火山で何かが起こった?」
「その可能性がある。お前達の倒した巨赤鬼の出現と時期も被る・・・もしかしたら変異モンスターの大量出現の謎も分かるかも知れないのだ。そして今、手が空いてる部隊といえば?」
「なるほど。第5部隊という事ですね。話はわかりました」
「ああ、第1部隊も送りたい所だがここ最近デアントで不穏な影もあってな、魔王様の身に何かあったらいかんからな・・・頼んだぞ」
と話していると螺旋階段を降り入り口広間についた。
そこで赤い髪をした見知った顔を見つけた。人間モードのレヴィだ。だが何かがおかしい。よく見てみると顔を真っ赤にし頬を膨らませており、目尻に涙を浮かべていた。ここまで見れば今どんな状態かわかる。
(おいおい、これまた不機嫌だな。リチャードの野郎何したんだ)
絶対怒らせないようにしようと心に誓うがそれは無駄に終わった。
「おい、そこの女!ここで何をしている」
団長が何か言い出した。ああそうかこの人レヴィがあの姿で会ったからこの姿を知らないのか。俺は説明を行う。
「団長、彼女はレヴィです」
「何、レヴィだと?バカを言うな。レヴィは赤い甲殻で全身を覆った不気味な一つ目の男だろう。何言ってるんだハルス」
プッツン
そんな何かが切れる音がした。音源に顔を向けると・・・アカン奴だこれ!レヴィの瞳から光は消え目尻に涙を浮かべた絶望の部分、そして額からこめかみは血管が浮き出ている憤怒の部分。そして最後に口がつり上がっている嘲笑の部分。この顔は今まで見たことがない。分かることはただ1つ、マジギレということだ。
ヤバいヤバいヤバいやばい!!冷や汗が止まらない。プレッシャーで空気が重く感じる。足がガタガタ震える。そして後ろに何か見える。血に濡れた殺戮夜叉が見えてるぅ!!?これがシジマの言ってたやつか!団長も変化に気づいたのか慌てている。笑いながら着実に此方に近づいてくる化け物。
「え?あ?え!?レ、レヴィ、ちょっと待とう!!待て!話会えば分かる!!!」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・<攻撃甲殻>・・・」
レヴィの拳の部分が赤い甲殻に包まれるが・・・何か増えてね?トゲとかついてんだけど!アレは殺す気じゃないか!?
俺は団長を殺させない為にも静止を促す声を出す。
「れ、レヴィ!止まれ!止まらないt」
「隊長黙ってて下さい」
「はい!」
団長が非難の目を向けてくる。仕方ないじゃないか!怖いのだから!!そしてレヴィが団長の前に付く。
「何か・・・遺言はありますか?」
「待て!知らなかったんだ!!女なんて気づく訳ないだろ!あんな全身を不気味な甲殻で覆ってい・た・・・ら」
自分の失言に気付き絶望するバカ団長。そして
「ふふ・・・誰が・・・不気味だおらああああああああああああああああ!!!!」
「ご、ごめんなさああああああああああああああ!!!! 」
ドカバキゴリベキゴキボリグシャ・・・
団長の血が空中を舞う。帰り血で汚れるレヴィ。極刑・フルボッコが発動。だがそこに何かが二階から投げ込まれる。
「あああああああああああ!?シジマさんなんでぇぇぇぇぇ!!?」
ポピーだ。
この言葉からおそらくシジマに投げられたのだろう。ちょうど団長と殺戮夜叉の拳の間に落ちる。ポピーの顔の前でトゲ付きの拳が風圧を伴いピタリと止まる。ポピーは完全に涙目である。因みに団長はギリギリ生きてる。
「・・・退いて下さいポピー君」
「まず何でこんな状況に!?新米騎士が団長をフルボッコとか何やってるんですか!!??」
舌打ちが聞こえた。レヴィの後ろにいた殺戮夜叉が消えていく。それと同時にレヴィが糸が切れた人形のように気絶する。
止まった?あの殺戮夜叉を止めた?ポピーが?
思わず俺は呟いていた。
「大天使ポピエル・・・」
「ミカエルじゃないのですか!?」
その後騒ぎを聞きつけたリチャードとベージュに事情聞き納得がいった。
ほとんどの騎士に男扱いされたらそりゃキレる訳だ。俺だって女扱いされたらキレる。寧ろレヴィはよく耐えた方だと思う。
今回は団長の運が無かっただけだろう。こうして騒ぎは収拾していった。問題はレヴィが立ち直れるかどうかだが・・・後でフォローしとく必要があるか。




