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更なる要素

 在校生による校歌斉唱、校長達の長ったらしい話······と、式は順調に進む。

 ゲームのシナリオ通りなら、そろそろ面白いものが見られる。

 私がほんの少しだけ口角を上げると同時に、女生徒達がキャーッと騒ぎ出す。

 生徒会長が、前に立ったのだ。先程の声からお察しの通り、会長は超(多分)イケメンさん、つまりは攻略対象だ。まぁいくらイケメンさんだとしても、入学式でキャーキャー騒ぐのはどうかと思うけどね。

 そんな騒がしさに苛立ったのか、会長はマイクを乱暴に取り上げてやや怒鳴り気味に言葉を発した。


「静かにしろ。俺は桐生(きりゅう) (みこと)。音羽学園高等部生徒会の会長を務めている。俺の名を聞けたことに感謝しろ。そしてお前ら、何があっても学園の恥にならないようにしろ」


 ・・・・・・。

 キタァァァァァッ!!俺サマ(笑)キタァァァァァッ!!!!

 感謝しろって言ったよあの人!?うっひょどれだけ上から目線なんだ。そのセリフがもはや恥だろ。あぁほら副会長(ちなみに彼も攻略対象だ)の麗しいハズの笑顔が引きつってるよ?お疲れ様っす副会長!!

 ついつい爆笑してしまいそうになるのを必死で隠す。

 まわりからは「桐生様、今日もステキ······」とか聞こえる。あんたらの目と耳は大丈夫か。

 心の中で一通りつっこみ終えると、新入生代表の名前が呼ばれるところだった。この新入生代表は、外部生の中で入試の点数が最も良かった人が選ばれる。ゲームではヒロインが呼ばれ、所々噛みながらも言葉を述べる。その時、生徒会メンバー=攻略対象達に顔と名前を覚えられるのだ。

 ヒロインちゃん、容姿が優れてるからな~。男子達はどんな反応するんだろう。

 そう思っていたら、既に名前を呼ばれていたらしく、一人の生徒が前に向かって歩いている。

 その生徒を見て、私は目を見開いた。

 ──────前に出たのは、ヒロインちゃんではなかったのだ。

 ドクン、と心臓が大きく音をたてる。

 ヒロインちゃんの方を見ると、彼女は大きく目を見開き、そして小さく呟いた。

 声は聞こえなかったが、何を言ったかぐらい唇の動きを見ればわかる。


『シナリオと違う』


 彼女は確かにそう言っていた。

 ······シナリオ、ね。ヒロインちゃんは転生者だな、絶対。

 彼女が転生者であることは予想の範囲内だ。私の他にも転生者がいることは聞いていたからな。やはり愛されヒロインになりたい者は多いだろう。

 だが、スタート直後からシナリオと大きくずれるとは。

 しかもヒロインちゃんのあの言い方からして、きっと特別な努力をしなくてもシナリオ通りになると盲信していたのだろう。場合によっては、この代償はかなり大きいぞ?イベントの中にはヒロインが新入生代表だった事を褒める物がいくつかあったはず。もしヒロインが新入生代表でなければ、それらが発生しないことは確実だからな。

 これは予想外の要素だ。そうか、転生者の考え方によっては、こういうケースも有り得るのか。

 普段ならこういう新要素は喜ばしいのだが······。これで彼女に意欲をなくされて、面白味がなくなるのは嫌だな。そこは彼女の根性に期待したい。もし彼女が意欲をなくしたら······そうだな、こちらから仕掛けてみるか。

 元から傍観者を気取るつもりはない。よっぽどつまらなくなりそうなら、多少の面倒事は進んでやるだけの覚悟はある。平穏も好きだが、やはり期待していた物がなくなるのは味気なさ過ぎるからな。

 彼女の方を見ると、彼女は再びその目を異様にギラつかせていた。

 どうやら不要な心配だったようだ。

 その根性で、全く君を認知していない攻略対象を頑張って落としてくれ。出来るだけ面白く、ね。




「えっと、乙さんっていますか?」

「ねぇ、乙 綾って誰のこと?」


 入学式が無事?に終わり、生徒達は各々の教室に散っていった。私は椿先輩と立ち話をしていたので、少し遅れて教室に入ろうとしたのだが······。何やら二人の女生徒が私をお探しのようだ。

 私を呼び捨てにしたのはヒロインちゃん。ゲームと同じ声だからすぐにわかった。まぁゲームより高圧的な言い方だがな。おそらくシナリオ通りに生徒会メンバーについて説明してほしいのだろう。

 だが、もう一人は誰だ?······考えても仕方ない。入ろ入ろ。


「おはよー。乙 綾は私のことだよー。ルビ無かったのによく名前読めたね。誰かに聞いたのかな?」


 私が入った瞬間、クラスの半分ほどの人がこちらを凝視する。もう一人はあの子か。ゲームにもいたキャラだけど、あの子が何故?······まぁいいや。後で聞こう。

 いやぁ、にしてもわかりやすい。今こちらを凝視しているのが外部生。外部生の反応を見て、呆れたり笑ったりしてるのが内部生。中には「今日も平常運転だなぁ」とか言ってる人もいる。


「ん~とりあえず、座っていい?」

「······な、な、なによその格好!?乙 綾が猫耳ローブ着てるなんて聞いたこともないわよ!?」

「君色んな意味で失礼だね?初対面の人呼び捨てにするって失礼だと思わない?あと私のコレは猫の耳じゃなくて狐の耳だよ。ほら、猫の耳より大きいでしょ?」

「そんなのどうだっていいのよ!それより、生徒会メンバーの説明をしてほしいのよ!」

「謝罪より先にそれ?実に失礼極まりないね?生徒会メンバーの説明なら他に頼んで?」

「なっ!?失礼なのはあんたもじゃない!そのローブ取りなさいよ!」


 予想以上に失礼なヒロインちゃんが、私のローブを取ろうと手を伸ばしてくる。避ける必要はないか。別に取られても構わないし。

 私が動かずにいると、ヒロインちゃんがローブを強引に取る。ローブの下は内部生の者も知らないからか、こちらを凝視して──────息を飲んだ。

ヒロインちゃんこんなに失礼な子の予定じゃ無かったんですが······。

次回新キャラ視点の予定です。

名前今回で出したかったのに出せませんでした(--;)

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