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第二章かなり短くなりそうです。

「おはよう、野見山くん」

「······は?」

「やだなぁ、私だよ~。どうして分からないんだい?」

「······ああ、乙か······?」

「うん、そう。はいこれ、前言ってたテスト問題」

「マジで!?え、見せて!」

「どーぞ。······すまないね、昨日渡す約束だったのに」

「や、気にすんな。お前昨日は走り回ってたしな」


 私が渡したテスト問題に目を落とし、野見山くんは私の前の席に座る。

 今日は温室に行った後に生徒会室に寄らなかったため、かなり早い時間に教室に着いた。その証拠に、私が来たときには誰も教室にいなかった。······が、五分と経たないうちに野見山くんが来て、今に至る。

 野見山くん、家近いのかなー?じゃないとこの時間に来るのは結構キツいからね。


「あー、全然解けねぇ。ここの問題って本当に難しいんだな」

「解けないことはないけど、解き方を知らないと短時間では無理だね」

「······お前何でこれの解き方知ってんの?授業レベル高くないから、授業で解き方教えるとも思えないんだけど」

「こういう一生必要としないであろう問題の解き方を解説している本もあるんだよ、世の中には」

「よく見つけたな、そんなもん。どうやって見つけたんだ?」

「······どうやって見つけたんだっけな······。······きっと運命の出会いを果たしたんだよ!」

「······そうか」

「それよりも野見山くん。君、家が近いのかい?この時間によく来れるねぇ」

「ああ、ここから歩いて五分程度だな。いつもは俺が一番だからな、お前が教室にいて驚いた」

「私は普段教室に来るのが遅いだけで、学校にはかなり早くに来てるのさ。別の場所で時間を潰してることが多いんだ」

「何でそんな面倒なことを······」

「ふふ、私にはやらなきゃいけない事があるからねぇ。君はどうしてこんな早くに?」

「なんとなく。朝は家にいると落ち着かねぇんだ」

「夜は?」

「特に気にならないな。理由は分かんねぇけど······。あ、なんか朝の学校は特別な感じがするからかもな」

「······うわぁ······」

「いや雰囲気が!雰囲気がだから!そんな目で俺を見るなよ!」

「あはは、冗談だよ。うん、君の言ってることの意味は分かるよ。ただ、君は意外と乙女チックだなぁと思いましてね」

「うるせぇっ」

「安心しなよ野見山くん。このことは誰にも言わないと思うから」

「思うだけかよ······」


 ぐったりと机に伏せる野見山くん。彼は元気にツッコんでくれるから、面白いんだよなぁ。

 野見山くんと喋っていると、大きな足音が聞こえてくる。音の大きさからしてまず男だろう。

 こちらに近付いてきてるのがハッキリと分かるから、この階にいるのは確かだ。それ以上の特定は難しいな。まぁ今は警戒する必要もないから、別に本気で特定する気もないんだけど。


「ビッグn」


 ガラッと一気に開く扉。勢いがつきすぎて、開いた後すぐに閉まった。しばらくの沈黙の後、今度は丁寧に開けられた。


「······ビッグニュース!」

「あ、やり直すんだね」

「はいそこツッコまない!なんと昨日転校生······が······?」

「転校生?入学式から一週間というこの時期に?珍しいねぇ」


 第一そんな情報こっちに入ってきてないんだよなぁ。この微妙な時期の転校生なら、確実に情報入るんだけど。

 なんらかの理由で今日から登校してきた子を転校生と勘違いしてるだけかな?それなら納得は出来る。


「······それ転校生じゃなくて、多分こいつだぞ」

「え?」

「······そうみたいっすね」

「ねぇねぇ、君達の話についていけてないので、説明していただけないでしょうか。後おはよう」

「おはようっす」

「······乙、前はアレつけてて顔見えなかっただろ?それで多分お前の素顔知らない奴が多いんだろうな。突然明かされた素顔を見て、お前だとは分からなかったんだよ」

「あ、乙さんだったんだ」

「そうだよ~、アイアム乙さん」

「何で急に素顔さらし始めたの?」

「なんだろう、その言い方に違和感を感じてしまうのだが」

「気のせいっす」

「まあいっか。いやね、私の額を見てくだされば分かるのだがね、昨日やや深めの怪我をしてしまったんだよ。その際に仮面は割れるしローブに血が着いちまってお釈迦になるし······」

「やっぱ血って取れないんすか?」

「取れないことはないさ。でも、ちょいと面倒だね。家で下手にやるよりは染み抜きを得意としているクリーニング屋さんにポイした方が良い」

「その辺のクリーニング屋じゃダメなのか?」

「染み抜きがあまり得意でないところもあるらしいからね」

「じゃあ染み抜き?が得意なとこに頼んだら大丈夫だったんじゃないんすか?」

「多分それでもアウトだったと思うよ。あの子はデリケートな生地使ってるし、何より年だから元々傷んでたのよ。近所の店に持ってったら、『無理です』って返されちまった」

「あちゃ~、それはショックっすねぇ。あれ、だったらこれからは顔を隠さずに生きていくんすか?」

「おおげさだよ。アクションマンガの主人公かよ」

「もうお前ら何の話してんの」

「あはは、だってこの人話してて楽しいんだもの」

「俺も乙さんと話してて楽しいっすよ~。どうします?いっそ付き合っちゃいます?」

「ちょっと、反応しづらいネタはやめてくれよ~。照れちまうじゃないか」

「勝手にやってろ」

「「野見山くん冷たいっ」」

「お前らが暑苦しいんだよ」

「てか君、野見山くんの名前知ってたのね」

「ああ俺ひろぴーと同じ塾出身なんすよ」

「その呼び方やめろ」

「······ひろぴー」

「ホントにやめてくださいお願いします俺が恥ずか死ぬ」

「ん?今なんでもするって言ったっすか?」

「言ってねぇぇぇぇぇぇッ」


 野見山くんもこの人もノリが良いねぇ。こういうノリ好きだよ~。

 あ、静かなのも好きだよ☆

 ······こういうテンションは後で心が疲れるがね。


「じゃあ俺は他の教室回るんで~」

「ガセネタ広めるためにか?」

「さすがにガセと分かってるのに広めるなんて真似はしませんよ。でもビッグニュースなのは変わりないっすからね!それじゃ!」

「バイバーイ」

「HRの時間には間に合えよ」

「······勿論さ!」

「おい!?」


 わずかな不安を残して、彼は去っていく。

 元気な人だったなぁ。


「そうだ野見山くん見てくれたまえよ!」

「······何だ?」

「ほら!君のイヤリングに似たものを作ってみたんだ!マークはうろ覚えだったから違う模様になっているがね!」

「······お前、こんな短期間で······?」

「君のイヤリングには一目惚れしてしまったからね!あの日から全力で作ったのさ。出来ればもう一度君のイヤリングを見せてほしい。そして写させてほしい。今度何か作るときにそのマークつけるから」

「別にかまわねぇよ。お前のイヤリングも見せてくれよ」

「どうぞ~」


 私がイヤリングを渡すと、野見山くんもイヤリングを外して私の方へ差し出す。

 そこに刻まれている模様は、やはり複雑で、写すのもやや難しい。


「綺麗だねぇ」


 これは、機械が彫ったのかな。それとも人の手?人の手なら、よくこんな細かいところまで彫れるなぁ。そもそもよくこんなマークが浮かんだなぁ。センス良いなぁ。

 私もこういう綺麗な模様を、考えてみたいけど、なかなかうまくいかないんだよねぇ。


「······お前、この間も同じこと言ってたな?」

「同じこと?」

「そ、同じこと。同じ顔して同じこと言ってる」

「顔まで?······まぁそう簡単に感想は変わりはしないからね」

「······お前さぁ、ローブとか仮面とか手に入れたら、またつけんの?」

「ローブの方は当分作れそうにないけど、一応は。······あの恰好は嫌いなのかい?」

「嫌いとかそういうのじゃないけど。顔が見えてる方が表情読み取りやすい」

「······仮面つけてたのは表情を隠すためでもあるんだがねぇ」

「そんなに顔見られたくないのか?」

「微妙なところだ。私は顔に出やすいのさ、良くも悪くもね。すぐ笑うしすぐ怒るしすぐに泣く。それで私の性格が良けりゃあ『気持ちが顔に出やすい子』、で終わる。だがあいにくとそう上手くはいかない。私はあらゆる意味で性格が悪い。そんな人間の感情は、他人に不快感を与えてしまう。······だから、見せるのは苦手だね」

「······でも、俺はやっぱり今の方が良い。そりゃお前の表情をあんまり知らないからかもしれんがな。それでもわざわざ隠す必要はねぇと思う。むしろ表情が読み取りづれぇ方が嫌だ」

「そういうものかね」

「そういうものだ」

「なら気が向くまではあれらをつけるのは出来る限りよそう。仮面作りはやめんがね」

「やめねぇのかよ」

「前にも言っただろう。『別に顔を隠しているわけではない』と。あれは少々言いすぎだったが、あながち間違いでもない。仮面をつける理由の八割は、単純に『仮面が好きだから』だしな」

「······ローブの方は?」

「あれは狐が好きなんだ」

「······案外単純な理由なのな」

「物事すべてに深い意味があるわけではないからね」


 模様を写し終わって、野見山くんにイヤリングを返す。彼はまだ満足していないのか、私のイヤリングを見つめたままだ。


「······あ、これ見たことある模様だと思ったら、お前がつけてた仮面にあるやつと、同じ模様だな」

「ふふ、気に入ってるんだ、その模様。幼いころになんとなく描いた模様なんだが、描きやすいし彫りやすいし、非常に便利だ。安定の左右対称。左右対称にしとけばとりあえず綺麗」

「雑だな」

「私にはそういうのを作るセンスがないのだよ」


 野見山くんからイヤリングを受け取り、カバンにしまう。そこからは静かな時間を楽しんでいると、しばらくしてようやく他の人がやってきた。

 この時間に全然揃わないって、ちょっとみなさん来るの遅くな~い?


「おはよう花咲さん」

「······!」


 入ってきた花咲さんに、上機嫌に話しかける。こちらを認識した彼女は一瞬硬直すると、すぐに私をひと睨みしてから席に座る。

 潤んだ瞳で睨まれても怖くないって聞いたことあるけど、実際のとこはどうなんだろうね。切れ長の目の人が潤んだ目で睨んでも、充分怖いと思うけど。あ、そうか。目が潤んでいるということは泣いているってことだもんね。弱り切った人間に睨まれても怖くないのかも。

 今度実験してみたいけど、切れ長の目の人······う~ん浮かばないなぁ。三白眼ならパッと浮かぶんだが······。······あの子は人睨んだら本気で怖い。相手が漏らすぐらい怖い。でも彼女は泣かせたくないし、泣かせられるかも分からない。······実験に協力してもらえないね、うん。


「······」

「な、何!?何か用!?」


 ······花咲さんは論外だなぁ。可愛い子に睨まれてもさほど怖くない。命の危険を感じるぐらいの睨み方ならともかくね。さっきの睨みは目つきが悪い人レベルだ。実験?無駄無駄。


「······はぁなさぁきさぁ~ん」

「何よ気持ち悪いわね!」


 分かってるさ。そんぐらい甘ったるい声を意識して出してんだから。

 ニコニコと微笑みながら、花咲さんに近付く。聞かれて困る話ではないが、大声で話すようなものでもないしな。


「······メインイベ『向日葵の根』、覚えてるよね?」

「当然よ。逆ハ······」


 静かに。

 口には出さず、ジェスチャーだけでそう伝える。

 朝の放送と称して音楽が流れているとはいえ、『逆ハーエンド』なんてそうそう聞かせてはいけない。単なるゲームの話をしているわけではないのだから。


「望みを叶えたいならば、アホみたいにシナリオをなぞってはダメ。相手は認知すらしていないのだから」

「······アンタ、何がしたいのよ」


 ······ああ、君は以前にもそんな問いをしたことがあったね。あの時、答えてなかったっけ?······まぁいいさ。

 きみが聞きたいなら、いくらでも答えよう。

 はぐらかす必要など、ないのだから。


「私は、楽しみたいんだ。基本的にそれだけ」

「······っ」


 急に怯えだす花咲さん。

 何故に。

 もしかして後ろに誰かいるのか?と思って振り返るも、教室内にいるのは私達と野見山くんだけだ。皆来るの遅すぎだろ。


「······話を戻すがね。君なら知っていると思うが、『向日葵の根』の次には、これまたメインイベの『向日葵の花』がある。それぞれ誰のものかは······分かるね?」

「······勿論」

「君、二人を見分けられるね?」

「雰囲気とかで分かる」

「なら問題ない。これらはおそらくほぼ初対面の君でも、イベントは成立すると思う。肝心なところは、アドリブきかせなよ」

「分かったわ」

「ふふ、あまりヤバいことはするなよ~?変に焦って彼らにドン引きされたら、目も当てられないからね」

「みすみすチャンスを逃す気はないわ」

「その意気込みだよ!私達の利害は若干一致しているからね!頑張って!······あ、それから忠告」

「忠告······?」

「······君、知ってるだろうが彼らは親しくない者に下の名前だけで呼ばれるのを嫌っているよ。ちゃんと、苗字をつけてね」


 小さくうなずく花咲さんに軽く手を振り、彼女から離れる。

 先程私が言った情報は、友人に教えてもらったものだ。私がそんな明確に覚えているわけがなかろう(キリッ

 今度のイベントは邪魔する気はない。高みの見物を決め込む。

 ······実に楽しみだ。

······まさかの野見山くん(脇役)との会話が半分以上······。

······攻略キャラの魅力が上手く出せない······。魅力出せてるの椿先輩ぐらいですね(´・ω・`)

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