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好意も悪意もどうぞ喜んで

タイトル付けるのがだんだん面倒に(ry

 大きく分厚い扉を開けて、目当てのものを探す。


「よっしゃ咲いたっ」


 昨日の朝、副会長が咲いたばかりの姿を見たいと言った花。その子が、綺麗に咲いてくれていたのだ。

 この花は赤や橙などの色があるが、この子は淡い桃色だ。


「菊屋副会長は、いつ見に来るのかな」


 この花は夕方になると閉じてしまう。だから見に来るのなら朝か昼休み。昼休みだと人が多いかもしれないから朝に来るのをオススメしたが······。

 彼の仕事の都合もあるし、当分は来られないかもしれないな。


「······君が咲き終わる前に来るといいね」


 花が初めて咲いた姿を見ると、やはり興奮するものだ。昨日のあの花は、なかなか咲かなかったという事もあり、凄く嬉しかった。嬉し泣きするかと思った。

 今のところ温室にゴミが捨てられたり、花を踏み荒らされたりはしていない。もしされていた場合、私が対処していい事になっている。

 今までそんなことした輩は極僅かだったし、あまり心配はしてないんだけどね。

 千尋によれば、今日の朝は椿先輩と柳瀬さんの出会いイベントがあるらしい。椿先輩の方は温室で発生するものだからな。もしかしたら花咲さんが来るかもしれない。


「どうしましょっかね~あの素晴らしきアh······勘違いレディは」


 椿先輩は来るはずがないし、ヒロインだけ来てもイベントは起こらないから、見ることも出来ない。

 あの子をここに入れるだけ損なのだ。あの子やかましいし。何故か私があの子の邪魔をする為に動いてると思ってるし。『世界は私の為に出来てるの!』みたいな勘違いしてるし。私がここにいるのを見たら発狂するかもしれないし。あの子に発狂されたら、頭痛がまた酷くなりそうだし。昨日程じゃないけど、まだ頭痛がしてるんだよね。

 あの子とはタイプが違いすぎるからかな、一緒にいたくないんだよね。この静かな空間にアイツを入れる事を本能的に拒絶するレベルで。

 どうしよう。扉開いて花咲さんの顔が見えたら、『校則違反』とでっかく書いた紙を押し付けて扉閉めようかな。ん~、でもそれでやめるような人じゃないしな。

 徹底的に痛めつける程、アイツ悪いことしてないし。もう無難に『帰って下さい』って頼むか。うんそうしよう。絶対帰らないだろうけど。

 アイツは何やれば良いかわかんないよ。アイツの思考回路とか理解できないし。

 自分の考えに乾いた笑いをこぼしながら、植物の調子を見ていく。出来る限り環境を整えているつもりだが、人間の手ではどうしようもない事はあるからな。環境を整えたからと放置していたら、後で恐ろしい事になる可能性があるのだ。

 全ての植物を一通り見たが、特に問題はない。学校に頼まれていた物は揃っているから、今度少し花を頂こう。

 さて、植物の方は片付いたし、今日は何をしようか。まだまだ時間はある。やりたい事は、たくさんあるのだ。

 何をするか迷いながら、私は管理室へ向かった。




 ギィ、と音をたてて扉が開く。

 まだ8時にもなっていない。

 イベントにしては早すぎないか、と不思議に思いながらそちらに目を向ける。


「······乙さん。良かった、いましたね」


 そこにいたのは安堵した様子の副会長。花咲さんではなかった。

 朝早くに登校しなくて大丈夫だと言ったのに。やっぱり信じてもらえなかったか。


「あの花を見に来たのですが······」

「この子ですよ。後、おはようございます」

「あ、おはようございます。あぁそうだ。昨日の放課後に、ファンクラブの人達が謝罪に来ました。貴女がおっしゃってた事は本当でしたね」


 そう言って微笑む副会長。あの気持ち悪い笑い方ではなくなっている。


「菊屋副会長、どうしてこんな早くに?」

「今日、準備しなくてはいけない事がありまして。僕の他にも、尊が既に登校していますよ。今藤崎先生と生徒会室にいます」

「何の準備ですか?」

「内緒です」

「楽しそうですね。でも、準備があるならここにいて良いんですか?」

「はい。後は尊と先生がする事ですから。僕の方はもう終わったんです」

「お疲れ様です。まぁやる事終わらせたんなら、ゆっくりしていって下さい」


 そういえば、イベントは何時からなのだろう。遅い時間だと授業に間に合わなくなるから、そこまで遅くはないと思う。8時過ぎぐらいじゃないかな。

 だったらそろそろか。花咲さんにはなるべく速やかにお帰り願いたい。安らぎの時間を邪魔して欲しくないのでな。


「乙さんは何をなさっているのですか?」

「本を読んでいる、が近いですかね」

「それ、どこの言葉ですか?英語みたいですが、ちょっと違いますよね?ドイツ語ですか?」

「いや違いますよ。トルコ語です」

「······お父様かお母様がトルコの方なんですか?」

「両方違いますよ」

「じゃあ外国の言葉が好きなんですか?」

「違うと思います。勉強したとき、楽しいとは思いませんでしたから」

「では何故?」

「······何故でしょう」


 理由は何だったっけ。好きだとは思わなかった。必要だとも思わなかった。強制されたわけでもなかった。

 ただ、勉強した。


「何で勉強しようと思ったんでしょうね」

「乙さんは、一度教科書を見たら全て覚えてしまう人なんですか?」

「いえいえ。むしろ他の人より頭の出来は悪い方ですよ。謙遜でも何でもなく。実際にコレ勉強したとき凄く時間かかりましたし」

「いつ勉強したんですか?」


 あれ、いつだっけなー。死ぬ2、3年前じゃないか?

 だから大体小4か小3だな。前世の事だし、正確に説明するわけにはいかないな。適当に誤魔化そう。


「結構昔の話ですよ。細かい事は覚えてませんね」

「そんなに昔の事なんですか?」

「さすがに赤子の頃ではありませんが」

「他に何ヵ国語を使えるんですか?」

「さぁ?数えた事はないですね。それに使えるって言ったって日常会話と、その他一部の言葉が使えるだけですから」

「それでも充分凄いです。日常会話が成立するレベルって、案外高いんですよ」

「そうで······菊屋副会長、ちょっと来てください」


 今微かに扉の方から音がした。

 そちらを見れば、ゆっくりと扉が開いている。

 副会長も気付いたようだ。扉の方を警戒しながら、私についてくる。

 私の姿を見ると、彼女が発狂するかもしれない。私は出来る限り穏便に事を済ませたいのだ。副会長には私と一緒に隠れてもらおう。


「──────この部屋は、どこかしら······」


 可愛らしい声を出したこの人。はい、花咲さんでーす。ではでは、トラップ発動!


 ビーッビーッビーッビーッ


 聞いた者を即座に警戒態勢にさせる大きな音。案の定花咲さんも驚いて周りを見ている。ついでに副会長も。


「何よこの音!?」


 トラップの音さ。コレは君の為に今日作ったばかりのトラップ。酷い出来だけど、急いで作ったから、仕方ないよね☆


『いらっしゃい、侵入者さん。そしてさようなら。校則は守ってね』


 私が裏声を使って入れたセリフをBGMに、扉が自動で閉まる。花咲さんみたいな女の子らしい声だから、多分私の声とは思わないだろう。そうだな、乙女ゲームのドジっ子系主人公のような、可愛らしい声だと思ってくれ。

 花咲さんの喚き声が消えると共に扉が完全に閉まり、私は鍵を閉める為に扉の方へ向かった。

 ──────それが、まずかったのだ。


「わっ」


 バンッと勢いよく扉が開く。花咲さんがゴリラ並みと思える力で扉を開けたのだ。とはいえ、トラップのスイッチは切っていないので、結局開いたのは五センチほどで、すぐに再び扉は閉まった。

 しかし、丁度鍵を閉めようとしていた私はその衝撃をガッツリくらってしまったのだ。

 武道だの何だのと習ったことのない私が、体勢を保てるはずもなく。そのまま体勢が崩れる。

 が、直後に背後からしっかりと支えられる。


「大丈夫ですか?」


 上を向けば、すぐそばに副会長の顔があった。うっすらと頬が朱くなっている。慌てて来たからだろう。


「すいません、菊屋副会長」

「あ、いえ。······今の、凄まじい力でしたね」

「ですねー。鍛えてるんでしょうか」


 ありがとうございます、とお礼を言いながら体勢を立て直す。

 私は小柄ではないから、重かっただろうな。申し訳ない。

 まだ花咲さんがいたら嫌だから、鍵を掛けんのはやめておこう。どうせスイッチ切らなかったら入れないんだし。


「さっきの女子生徒······なんか怖いですね」

「あはは、でも可愛いですよ~?」

「ファンクラブの人達は、容姿が優れている者に限って面倒ですよ」

「菊屋副会長も凄く整った容姿の持ち主ですからね。そういう宿命なんですよ」

「そんなもの喜んで貴女に差し上げます」

「お断りしますよ」


 愛される立場というのは羨ましいが、私は自分が仲良くしたいと思った人以外からの愛は、どんな愛だろうといらないのだ。

 そのまま話していると、ヴヴ、と音がした。私の携帯ではない。ということは、副会長か。


「······僕、ですね。ちょっとすいません。······乙さん」

「どうしました?」

「さっきの、尊からのメールだったのですが、貴女を探しているようなんです」

「私を?わかりました。桐生会長は、生徒会室にいるんですよね?そちらへ(うかが)います」

「あぁいえ、もう既に尊はこちらに向かっているようです」

「え?探しているって······」

「はい、一応は。でも、僕同様ここにいると確信しているのでしょう。そろそろ到着するようです」

「······まぁ今回は特別に許可を出しましょう。ですがこれからは私が温室にいたとしても、入室は許可を出しませんよ」

「すいません······」


 少し不機嫌になりながらも、二人で桐生会長を待つ。すると、一分程で彼ら(・・)はやってきた。

 小さく音をたてつつも、比較的静かに扉が開く。


「[管理者]、入室を許可して頂けませんか」


 私の顔を見てニッコリと微笑む藤崎先生。

 どういう事だ。聞いてないぞ。


「ハァ······名前を言いなさい。それと、自分の証明となる何かを」


 溜め息をはいて、適当に質問する。この場合の『自分の証明』とは、自分のクラスや担当の教室等だ。


「藤崎 飛鳥。生物研究室及び高等部1-A の責任者です」

「使用目的は言わなくて構いません。入室を許可します。······桐生会長もやるの面倒なのでもう入って下さい」

「お、おう······」

「······あの、今の何ですか?」

「本来なら、こうやって私の許可を取らないとダメなんですよ。何で藤崎先生まで来てるんですか」

「嫌ですか?」

「嫌だったら入室を許可しませんって」


 先生が私の隣に座ると、会長と副会長は目を見開いていたが、やがて会長は副会長の隣に腰を下ろした。


「ご用事は何ですか?桐生会長」

「ああ、乙 綾。お前に生徒会役員になってほしい」


 ・・・・・・。(チーン)

 え、ウソだろ?

 え、いや確かにそれっぽい事を昨日柳瀬さんが言ってたよ?でも会長が私を入れる条件を全部聞く前に言ったんだって思ってたよ。

 そんぐらい条件は多いんだよ?それを、それを、えー!?信じられねぇ·····。


「さぁ、乙さん。これは生徒会役員全員の意思ですよ?受け入れてもらえますよね?」

「ちょっ······藤崎先生、わざわざローブずらしてまで耳元で言う必要ないですよ」

「乙さん耳元で話してもくすぐったがらないからあまり面白くないですよね」


 じゃあやるなよ。


「髪が耳の上にかかってるからですかね。もっと近くで言われたらこしょばいと思いますよ」

「じゃあ今度試してみましょうか」

「役員の件ですが、ちゃんと藤崎先生から条件を全部聞いた上で、ですか?」

「おい、藤崎はスルーでいいのか?」

「アレは今に始まった事じゃないんで、適当に流して下さい」

「そうか······。条件の事だが、全て問題ない。お前の事は藤崎から聞いているし」

「その上で判断なさったのであれば、どうぞ喜んで。詳細はどうします?今決めちゃいますか?」

「そうしよう」

「んじゃまずは──────······」




「あ、予鈴が鳴っちゃいましたね」

「おう。じゃあまた四時間目に」

「また会いましょう、乙さん」

「はい、また。藤崎先生、行きますよ」

「······乙さん、気を付けて下さいね」


 そういう先生の視線の先には、扉の下の方にある真新しい傷。多分花咲さんがつけたもの。

 分かってますよ。


「ええ、勿論。私は防ぎはしませんが、(あの子)達が傷付けられたら──────」


 ほんの少しだけ。


「仕返しします」


 あ、そうだ。言い忘れてた。


「今日の放課後に私、用事があるからちょっと色々明日に回してもらって良いですか?」

「分かりました。後で尊くん達に言っておきます」


 二人で教室に入れば、花咲さんが物凄い形相で睨んできた。

 いつでも攻撃してくるといい。君一人からの攻撃なら、楽しみにしている。

 い~っぱい、可愛がってあげよう。君が限度を守る限りは。

活動報告の方でアンケートっぽいものをしています。気が向いたら一度ご覧下さいませ。


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