★恋する気持ち
「6つのグループに分けるんで、くじ引きで決めます!!」
あれから、毎日は忙しく過ぎていく。
優は、真心と実行委員の仕事をしているうちに、クラスの女子とも仲良くなることができた。
彼の周りでは、常に笑い声が飛んでいる。
そして優もまた、以前からは考えられないほど積極的な行動を身につけていた。
「じゃあ、俺らが最後な。」
そう言って、カラのティッシュの箱に入れたくじを引く彼。そして、優もくじを引く。
真心と一緒のグループだったら…楽しいだろうなぁ。
優は、最後に引いた藁半紙のくじに、密かな願いを込めた。
恐る恐るくじを開くと、書いてある数字は“5”。
周りに気付かれないように、さり気なく真心の手の中を覗く。
目に映った数字は“3”。
心の中で、がっかりとした気持ちが込み上げてくる。
「んじゃ、班ごとに飯盒炊きの役割決めて、今日はおわり!」
真心はくじをヒラヒラと振りながら、クラスメート全員に大声で話し掛けた。
優は淋しい気持ちで自分の班に向かった。
すると、真心が声を掛けてくる。
「残念。一緒じゃ無かったな!」
特に深い意味があるわけでもないが、彼の言葉で妙な嬉しさが込み上げてくる。
「…うん」
優は、彼に話し掛けられたことが嬉しかった。
「最近さぁ、5組来なくなったね。友達できた?」
下校途中、夏樹が優しく微笑みかけてくる。
「うん!結構皆と仲良くなったよ」
優は満面の笑みで頷いた。
「でも最近、実行委員の仕事で大変なんでしょ?しんどくない?」
久々に何もない日を迎え、優は夏樹と一緒に帰ることができた。
彼女は、面倒くさがり屋の優を心配する。
「ううん。まぁ、楽しいし」
夏樹に指摘され、改めて気付く…面倒くさがり屋だった自分。
ここ最近、優は真心と一緒に仕事をすることが楽しくてたまらなかった。
密かに隠していた…胸の奥の気持ちを、夏樹に話そうか、話すまいか、迷いだす。
「何?もじもじして‥気持ち悪い」
少し頬を赤らめ、照れる彼女に、夏樹は眉をひそめ問い掛けた。
「え?…へへっ」
口をフニフニと動かす優。
「本当に何?マジで気持ち悪いって」
今までに見たことのない態度に、夏樹は戸惑った。
すれと優は、夏樹の耳元に手を添え…小さな声で打ち明けた。
「…マジ?」
耳に入った言葉に、夏樹は口をポカンと開けた。
「マジです。」
優は、恥ずかしそうに目を伏せる。
「え、でも…背ぇ小さくない?あいつでしょ?実行委員で一緒の…」
身長に不釣り合いを感じ、夏樹は何か言いたげな顔をする。
「背とかあんま関係なくない?」
少し自分でも思っていた問題を突かれ、優は声を上ずらせた。
「そっかあ、好きな人かぁ」
夏樹はニッコリと頬の力を緩めた。
「誰かに言ったりとかしちゃだめだからね!!」
「はいはい」
いつの間にか胸の奥で生まれていたもの…それは真心への恋する気持ち。
優は彼を好きになっていたのだった。