第六話
「おっ。武、どうだっ……た?」
裕也の笑顔が固まった。
どうしたんだろうと、クリスも視線をたどる。するとそこにはスッキリとした女神と変な仮面のデカイ人、それからハリセンを持った知らない男性がいた。おそらく仮面の男が武なのだろう。大きな身長から把握できる。けれども、女神様の我慢していたナニカを放出したときのような表情と武よりも一回り小さな綺麗な男性や、その男性が手にもつハリセンの意味が不明だ。ハリセンが与えられた武器なのだろうか?
うん、わけがわからない、とクリスも理解できないことを悟った。
異様な雰囲気に包まれる。
しかし、このままではいけない。何があったのか聞かなければならないというのは本当だ。
クリスは思う。こういうときって、日本人は話をするのためらうのよね。
「斉藤クン、どうしたノ? 武器ってそのハリセン? ハリセンでモンスターを倒すノ? それからそこの男の人は誰?」
これから行くらしい世界にはモンスターが出ると聞いた。これはクリスだけの情報ではなく、みんな女神からもたされた知識だ。ゴブリンやハーピー、狼男や雪女だっているという。そんな中、怪しい仮面をつけたマントの姿で生きていけるのだろうか。しかもハリセン持って。
ワタシだったら絶対無理だ、とクリスは断定した。
「おぉ、これは失礼。我はウィンと申すもの。タケシのサポート役で、風の使い手だ。武器といえば、我こそが武器といえようか。このハリセンも女神からいただいたハリセンだ。よろしく」
クリスはしっかりと握手した。
「よろしくお願いします。ワタシはクリスといいます。女神様から弓と水の魔法をいただきました。それから彼は裕也デス。ホラ、裕也。挨拶」
「……えっ!? あ、あぁ。裕也です。青木裕也。この剣、ツヴァイヘンダーと身体強化の魔法を女神様からいただきました。よろしくお願いします」
よろしく、と裕也が困惑気味に、しかし力強くウィンと握手した。
「そして、彼女が綾瀬デス」
「綾瀬です。よろしくお願いします。杖と回復の魔法、それからローブを女神様からいただきました」
綾瀬は優しく握手していた。
「最後に、彼が勇人デス」
「勇人といいます。虎王剣と虎王の鎧、雷の魔法をいただきました。よろしくお願いします」
勇人はウィンの手を確かめるように握手した。
「いい子たちばかりですな」
「そうですね。よかったです」
「あの阿呆と違って」
「……本当に」
女神とウィンの会話を聞いて、クリスは抱いていた違和感に気付いた。
そうだ、雑なんだ。二人は斉藤クンに雑なんだ。でもおかしいな。初対面のはずだし、斉藤クンが別に何かしたわけでもないと思うんだけど……。
そのまさか、武がよからぬことをしでかしているがゆえの接し方なのだが、クリスも他の面々もそんなことは知るわけがない。
クリスが思案していると、ウィンが武を肘でつついていた。
「ほら、お主も挨拶せんか」
「えぇぇ。本当にやるの?」
「だが、そうしなければお主はさらに落ちていくぞ」
「コレだって十分ヤバイ気がする……」
「いいから、はやくっ」
「そうですよ、タケシさん。きちんと今のあなたを見てもらってください」
「わかったよ……」
「斉藤クン?」
そこで、武は意を決したように、コブシを握った。
「俺の名前はカエンダー。仮面☆戦士、カエンダーだ!」
……はぁ!?
「どうしたの、斉藤クン?」
「斉藤武ではない。カエンダーだ。中の人などいない!」
「斉藤クン?」
「カエンダーをよろしく!」
「斉藤クン?」
「……お願いします。カエンダーということにしといてください。斉藤武という名前は出さないでください。お願いします。まだ高校生なんです……」
「よくわからないけれど、病気というヤツ?」
「もうそれでいいので、お願いします」
言って、哀れなデクノボウは泣き崩れた。




