最終話
「これでよかったのでしょうか……」
椅子に座る女神は思案気に、テーブルに置かれた資料を眺めた。そこには魔王カエンダーが討伐された後の顛末が事細かに書かれていた。
魔王カエンダーの攻撃により瀕死となったために緊急措置として元の世界へと女神が連れて帰った勇者一向の高校生活。魔王カエンダーの自作自演による、娘のシルクによる大逆転魔王退治。そしてその後のシルク女王の半魔女王時代。死んだことになったカエンダーの……、いや、勇者サイトウ・タケシの影のフォローや闇の支配者ぶり。そして何より目立つのは、とても大きな文字で書かれた一文だ。
『作者、世界樹のめーきゅう(RPGゲーム)にハマったことにより更新意欲が減退したため、打ち切り』
どうなのだろうか。
これは本当にどうなのだろうか。
ここまで。そう、魔王との戦いのシーンまで描写しておいてなぜ。そんな気持ちが女神の胸の中を渦巻いて仕方がなかった。あと少しだ。そうだ。あと少しなのだ。クライマックスだ。クライマックスだったのだ。大一番の斬ったはったの特大クライマックスだったのだ。ここからさらに起承転結ではなくて起承転転結とさえなるはずだったのだ。
それがどうしてこうなったのか。
女神は頭を両手で押さえた。
いいや。確かに『世界樹のめーきゅう』は楽しい。古き良き時代を踏襲したダンジョンRPGはかつてのファミコン時代を彷彿とさせる。多様なキャラクターメイキングは非常に面白く、無数のパーティ編成を可能にさせる。脳内で作られていく各キャラクターの性格や個性が世界樹攻略をとても色鮮やかにさせてくれる。
しかし。
だがしかし、だからといって打ち切りはないだろう。ここまで続けてきたのだ。たとえ作者がプロットを忘れていようが、外国人風メイクや編み込みヘアアレンジにネイルなどを研究していようが、読者にとっては関係ないのだ。
それが打ち切り。
あまりにも残念な結果だ。
「だいたい、これ、完結させることが目的だったじゃないですか……」
そう。
この物語は、完結することが目標だった。けれども結果は打ち切り。いいや、これを完結させたと主張するのならば、もしかしたら、とても強引すぎるが可能なのかもしれない。『完結済』とすることができるのだから。しかし本当のところは飽きたから止め……、じゃなくて、ゲームが楽しくて完結する意欲が無くなったというのだからたちが悪い。
いやいや、実はこの連載の途中から書き始めた小説は完結している。これと同程度の文字数でありながら短期間に書き上げている。これはプロットと初期段階の計画、起承転結の計算の仕方、テーマや文字数の設定などがきちんと計算してあったからこそできた所業なのかもしれないけれど、きちんと完結することができたのだ。
だがこの小説は完結できなかった。
女神はハッとした。
「そうなんだ。小説って、書く前からきちんと計算していないと書けないんだっ!」
そうと分かれば納得だ。
確かに、計算していなくとも書き上げることは可能だろう。けれどもそれは作者にとっては非常に難しい行為のようなのだ。いわゆる作者の小説の作成タイプというものなのだろうか。そんな言葉はないが、しかしそう考えると辻妻が合う。書けなくて当然なのだ。
「(小説の)ご利用は計画的に、ってやつね! あはは。そうね。そうよね。今度から小説を書くときは計画的に書けばいいのねっ! あ、でも結局は趣味なんだから、別にだらだらと書いて完結できなくてもいいかもしれないわね。そうよね、結局は趣味なんだから……、って! 騙されるかっ!!」
……っちぃ!(舌打w
…………えっ?




