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仮面☆戦士 カエンダー!  作者: アキ
仮面☆戦士 カエンダー 誕生!
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第三話

 

 絶世の無自覚美男子、一宮(いちのみや) 勇人(ゆうと)は放課後、教室で、丸太のような腕のイケメン筋肉男、青木 裕也(ゆうや)と裕也の彼女、モデル並みの美人スポーツウーマンである高花(たかはな)クリスの三人で練習場所について話をしていた。男子、女子の差はあれど、三人ともにバスケ部であり、今日は体育館が使えず、しかも雨が降ってきたことから、どこで練習をしようか悩んだのだ。先ほどまではグラウンドに向かおうとしていたのだが、急に大降りの雨が降り出し、その案が白紙となってしまった。


「雨が降らなきゃよかったんだけど……。どうしようか?」


 勇人は椅子に再び座り、つぶやいた。

 勇人を囲むようにして、二人も椅子に座っている。


「筋トレするとしたら、体育館への通路しかないな」


 裕也が腕を組んで答えると、クリスも同意した。


「そうだネ。筋トレがいいと思うよ」


 クリスはイギリスと日本人とのハーフだ。生まれて15年ほどイギリスで暮らしていたので、言葉に少し訛りがある。


「うぅ~ん……。それしかなさそうだねぇ」

「なんだ? イヤなのか?」

「筋トレをし続けるのって、あんまり楽しくないよね」

「大事なことだぞ」

「ムキムキ裕也を見たらよく分かるよ。でもガードって、そんなに筋肉必要? 司令塔でしょ?」

「あるに越したことは無いぞ。勇人はもっと太れ。花形のシューティングガードっていったって、インにカットすればすぐにゴリラの群れだ。俺は中学のころ、レイアップしにいっても弾き飛ばされた」

「裕也の中学って、全国いったりする強豪じゃん。ここは弱小だよ?」

「弱小でも何でも、強いチームとあたるのは同じなんだよ、エース」


 対して、勇人は弱小校出身だった。先輩が威張り散らしていて、キャプテンになるまではグラウンドを走り続けていただけのクラブ活動だった。シュート練習は自主練習でしかできず、そんな経験からか、一年生のころからボールを扱えた現在の環境は勇人にとって天国で、だからこそいつでもボールを使いたがっていた。


「ワタシは高校からコッチだから知らないけど、昔の裕也は細かったノ?」


 クリスは今の体格のいい裕也しか見たことがないらしい。そんな裕也がアタリ負けするなんて信じられないみたいだった。


「今は男性平均の身長ぐらいけど、昔はチビでガリだった」

「なんで筋トレにハマッたノ?」

「武に天狗の鼻をへし折られたから」

「テング?」

「あー……。調子に乗ってたら、コテンパンにやられたんだよ。同じチームメイトに3on3で」

「へぇ。裕也がネェ」

「で、悔しくて筋トレしまくった」


 裕也が笑いながらダンベルを上下にあげるフリをした。

 クリスもつられて微笑んでいる。

 勇人は初めて聞くキッカケに驚き、それから過去に対戦した試合を思い出し、納得した。そして疑問を口にした。


「それで、リベンジできたの?」

「いいや。勝ち逃げされた。一年間の行方不明。で、ひょっこり戻ってきたと思ったら、いきなり辞めたんだ。バスケはもうできないからって。行方不明の理由を聞いても自分探しとかなんとか、適当なこと言ってた」

「ふぅん。そういえば、ボクのとこでもいきなりいなくなったのは噂になったなぁ。そんときは、またあの人に50得点されずに済んだ、なんて思ってたけど……。行方不明になってたなんて……。自分探しって、家出とか?」

「行方不明!? ってか50得点ッ!? うそでショ!?」

「全部ホント。しかし、もったいねぇよなぁ……」


 クリスが驚いていた。

 勇人も行方不明には驚いたが、武は同じクラスいることから、それほど心配ないと思った。身体は健康らしく、夜、走っている姿を何度も目撃している。心についてはわからないが、何か触れてはいけない事情でもあるのかもしれない。

 ただはっきりしていることは、勇人の心に、試合でボロ負けた悔しい経験として根付いているということだ。情けないことに、たった一人にこれほどやられたことが衝撃的過ぎて、悪夢と思ったほどだったのだ。

 しかし、そのころより上達しているという自負が勇人にはある。


「でもさ、今は『ゆうゆうコンビ』だよ?」

「その『ゆうゆうコンビ』ってのは恥ずかしいんだが……」


 裕也が頭をかいた。

 悪くないネーミングセンスだと思うんだけど、なんて勇人が考えていると、ガラリと教室のドアが開く音が聞こえてきた。振り向くと、マネージャーの綾瀬と話題の武が近づいてくる。けれどもなぜだろうか。勇人の目の前で、二人の姿がぼやけてきた。白く、霞がかってきた感じだった。少なくとも、勇人にはそう見えていた。


「綾瀬、どうしたノ?」

「忘れ物しちゃって。ついでに傘も」

「斉藤クンも?」

「そうですよ」

「裕也のトモダチってことで、敬語じゃなくていいヨ」

「そう? ありがと」

「ドウイタシマシテ」


 会話も、近くにいるのに遠く聞こえる。おかしい、ボクだけなんだろうかと、勇人は見渡すも、何かを落としたのか武が下を向いて驚いている以外、他のみんなは普段通りに振舞っているように感じられる。

 ……何か聞こえてきた。とても小さな声だ。やがて、それは段々と大きくなっていった。耳をすましていると、今度ははっきりと聞き取れた。悲痛な、女の子の叫びだった。


「お願いします。助けてください!」

「えっ、あっ……、うん」


 思わず返事をすると、瞬間、光に包まれた。

 

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