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仮面☆戦士 カエンダー!  作者: アキ
仮面☆戦士 カエンダー 誕生!
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第二十八話

 

「ご指導、ありがとうございました」


 ついに、出発の時がきた。

 勇人はプランコとビューテ、シータに見送られていた。旅の仲間は五人。メンバーは裕也、クリス、綾瀬、コルト、タンネだ。それから『風の馬』が五台。二つの車輪によって絶妙なバランスを保つソレは、完全に『自転車』である。別名ママチャリとも呼べる風の馬の前方には、道具を入れるためのカゴまで搭載されている。間違いなく自転車だった。

 そりゃないよ。

 はじめてみたときはみんな驚いた。

 旅の訓練の大半は、自転車に乗れるようになる訓練の予定だった。予定だった、というのは、剣や魔法の訓練に変更したからだ。というのも、そもそも勇人らは現代人であり、自転車はたいてい、乗ることができる。その例にもれず、勇人たちはみながみな、きちんと自転車に乗ることができた。「さすが勇者様です! これを乗るのにどれだけ苦労したことか……。勇者様は素晴らしい!」と、コルトやタンネは瞳を輝かして、しきりに感激したものだったが、勇人からすると、正直なところ自転車に乗れることを褒められても、恥ずかしいばかりであった。

 いろんなことの元凶である武は現在、旧見張り台において魔族の侵入を警戒している。魔族がきたときの対抗策として、旅のメンバーを外れたのだ。三人を難なく撃破したことから、多少の悪感情も手伝って、五人は武がいないことに納得していた。

 とうとう、お礼を伝えられなかったな……。

 勇人は、いや、勇人を含めた旅のメンバーは、あの日以来、武と会話ができないでいた。最初は圧倒的な暴力に対して恐怖を抱いて、それから日にちが経つにつれて気まずさと申し訳なさが募り、最終日には感謝を思えるほどにまでなっていたが、やはり、気が引けてしまっていたのである。


「こちらこそ、勉強になりました。ありがとうございます。勇人様、今のあなたなら魔族とも互角に戦えるでしょう」


 プランコが微笑んでいる。

 こちらも笑顔だ。

 そう言って貰い、今までの訓練が報われたような気がした。

 事実、あの日以来、勇者一行の訓練に対する気迫は目を見張るものがあった。『死』というものを明確に意識したからだろう。また、目標ができたということも大きかった。実戦を経験したからこそ、彼らは非常に有意義な時間を過ごすことに成功していた。初日と今では、一つ一つの動きからして、洗練された身体の使い方となっている。


「ありがとうございます。これからも精進します」


 そして、握手をした。

 プランコの手は大きく、ゴツゴツしていた。また、温かみがあり、自分の成長が確かに感じられる、安心させられる握手となった。

 プランコは、一人、一人に、丁寧に挨拶をしている。

 コルトなんて、憧れの人物からの激励に、感動して涙を流しているくらいだった。穏やかな時間。一抹の寂しさはあるものの、みな、一様に自信に満ちた顔をしている。

 それから、プランコは割り箸のような、鉛筆のような、先端が削られた木の棒を渡してきた。まるで、大切なお守りのように、丁寧に。


「これは、カエンダー様からの贈り物です。木製の歯ブラシというもので、歯を磨くためのものです。使用した後、先を少しだけ削れば、何度でも使うことができます」


 それは、五人に配られた。予備も含められており、手作り感のある、優しいプレゼントだった。


「これから、『キャプテンアベジン』、『ショフトドリダニ』『エースマエノケン』、『テツワンイワゼ』、『ホンルイダオウパレンディン』と出会うことになります。そのとき、もしかしたら、役に立つかもしれません。覚えておいてください」


 勇人は頼もしく、力いっぱい頷いた。


「はい。任せてください! 旅の目的は変わりましたけれど、必ずやり遂げてみせます」


 そうなのだ。旅の目的は変わっていた。魔族の突然の奇襲を受け、ヨゴバマヘイズダースは魔王ドラキュリア軍と交戦状態になりかけていた。ゆえに、援軍を呼ぶことになった。かの有名な、言ってみれば人間側のタイトルホルダー級である、武の昔の仲間たちを頼るのだ。

 

「その意気です。では、援軍要請、頼みましたよ。これは勇者様方しか説得できないことでありまして、人類にとって大切な、重要な仕事です。このような機会に立ち会えた事を幸せに思います」

「こちらこそ、そのような仕事を任せてくださり、ありがとうございます。では、行ってきます」

「いってらっしゃいませ」


 ビューテも微笑んでいる。その引き込まれそうな魅力にゴクリと唾を飲み込むと、クリスが咳払いをして、綾瀬が「一宮くん、行きますよ」と声を掛けてきた。慌てて勇人が仲間たちに振り返ると、裕也が「しかたないなぁ」といったふうに、肩を叩いてきた。


「行くぞ、エース」

「わわわ、わかってるよ」

「締まらないなぁ」


 そうして、勇者たちは跨った。

 それぞれの愛馬に。

 裕也はこれから世話になる愛馬に向かって声を張り上げた。


「よし、行くぞ! 太郎丸!」


 彼らは走り出した。

 広々とした草原を。暖かい、ぽかぽかとした陽気の大地を。明日につながる未来へ!

 

「やっぱりそのセンス、なんとかならないか?」

「なんで? いい名前じゃん」


 いつものように。

 マイペースで。

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