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仮面☆戦士 カエンダー!  作者: アキ
仮面☆戦士 カエンダー 誕生!
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第十四話

 

「後は我輩と貴様だけのようだな!」

「舞台は整ったということか」

「僕のことを忘れるなっ」


 荒れ果てた大地。

 魔王城では仲間たちが倒れている。終息に向けて玉座の間の戦いは、荒野へと移っていた。そこにいるのは二人。炎の剣を装備した学生服の勇者武と魔王のドラゴンだ。剣から言葉が発せられていることから、あれはエンなのだろう。武は満身創痍(まんしんそうい)であり、右手には包帯が巻かれてある。幾多の死線をくぐってきたのか、瞳は死んでおらず、油断無く隙を探している。

 対して、ドラゴンは巨大だった。さきほどウィンが受けた威圧感とは比べ物にならない、圧倒的な恐怖を周囲にばら撒いている。映像越しなのに足がすくんでしまう。何者にも屈しない、絶対強者のみが到達できる高み。魔王ドラゴンは最高だ。


「さぁ、タケシ。早く『合×体』しよう! 僕が鎧になって、魔王の攻撃を受け止める」

「フッ。どうやら右腕の封印を解く時が来たようだな。煉獄に抱かれるがいいッ!」


 武が若干アレな発言をしながら、ゆっくりと右腕の包帯を解いていく。すると、至って健康な腕が現れた。しかし、そこから武を喰らいつくそうと炎が燃え盛っている!


「タケシ、どうして無視するのさッ」

「見えるか? 流石は魔王だ。ならば――」

「ちょっ。タケシッ」

「相手にとって不足はない!」

「タケシ! 『合×体』しよう!」

「うるさいッ!」

「どうしてさッ!?」

「大事なシーンなんだ。合体するおっさんの喘ぎ声なんて需要がどこにあるッ!」

「仕方ないよ! タケシのアレが入ってくるんだ。気持ちいいんだよ」

「変なことみたいに言うなッ!」

「もう、動いちゃだめだからね!」

「逆レ○プ!?」


 炎の剣から光の粒子が溢れる。それはやがて大きくなり、武の全身を包み込んだ。そして二度と聞きたくない艶やかなおっさんのナニが大地に響き、やがて光が収まると、そこには、いかにも少年が好みそうな、完璧絶対防具的な、これでもかとツヤツヤな真紅の鎧を身にまとった、炎の剣を構えた勇者が現れた!


「ふぅ。よかったよ、タケシ。これでイケるね」

「……また一つ。また一つ、大切なものを失ってしまった……」

「あれ? もうイッちゃった?」

「ぐふぅ」

「タケシ!」


 上機嫌な炎の精霊とは対照的に、勇者は片膝を付いた。どうやら大ダメージを受けているようだった。


「いや、お前に魔力をごっそり取られただけだから」

「またヤろうね」

「イヤだッ! くそ。こんなことになったのも魔王、お前のせいだ!」

「何だと!? さっきから大人しく黙って聞いていれば不愉快なことばかり。貴様と我輩に限って言えば、そもそもは貴様が我輩の娘をたぶらかしたのが原因だろうがッ!」

「な……! あれは合意の上でだな。なななにもおかしなコトはなかったぞ!」

「何がおかしなことはないだ! 何が合意の上だ。貴様、自分がしたことを分かっているのか!」

「お父様、お止めください!」

「カリン!? どうしてここに!」


 魔王の娘、乱入。

 魔王と違って少女の姿をしている。見たところ歳は武よりも少し上ぐらいか。特徴的な大きな瞳はつり目であり、勝気な印象を与えている。十人いれば十人とも、通りすがりに振り向いてしまう魅力の持ち主であった。お盛んな武が手を出してしまったのも無理はない。

 

「お父様、確かにワタクシとタケシは結ばれました。誰にも知られないように、こっそりと。ワタクシも初めてでしたし、戸惑いましたわ。けれども、けれども……! そんなワタクシを優しく受け入れてくださり、二人でゆっくりと愛を育みましたの! そうです、ワタクシはタケシを愛しているのです!」

「貴様……、キサマァッッ!!」

「おおおお義父さん! 娘さんは気持ちよかったですよ!」

「死、死ねぃッ!!」

「タケシ! お父様!」

「ぬわぁーーー」

「どうしてタケシは火に油を注ぐんだろう。やっぱり面白いなぁ」



 ――プツン。

 突然、水晶玉が真っ暗になった。

 まるで電波環境の悪いトンネルの中に車で入ったときのラジオのようにノイズが走っている。

 ちょっと続きが気になるんだが……。

 チラッ。

 エンは気まずそうにしている。


「えっと、その。あはは。いや、ね。改めてみてみると、なんだかさ、ほら、ね? 恥ずかしくなっちゃったというか、その……。あはははは。ごめんね。こっちから誘ったのに。なんていうかさ、えーっと。……僕が味方だって、信用してくれる?」

「あやつを攻撃しそうにないのは理解したが……」

「ありがとう! 迷子なのは黙っておくよ。ウィンとは仲良くしていきたいなっ」

「考えておこう。それよりも、今は道案内を頼みたい」

「いいよ。客間はこっちだよ」

「助かる。あやつに知られると、笑いものにされてしまうからな」

「あはははは。わかるわかる」


 この日。

 世界で初めて、妖怪と精霊が肩を並べて歩くという快挙が成し遂げられたのだった。

 

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