第九話
「プランコか……」
ボソッと呟いた武の言葉に、ウィンは一応の確認をした。
「知っているのか?」
いや、こんなろくでもない異名をつけるぐらいだから知っていて当然で、コイツが名前をつけたのは確実なんだが。それにしてもあの国名、ヨゴバマヘイズダースだったか、これもまた、どうせこの阿呆が関係しているのだろうが……。気の毒に。
ウィンは誇り高く自らの異名を宣伝している男を不憫に思った。
「ヤツは首位打者だ」
「ここが玉座じゃなければハリセンで叩いていたところだ」
「あの手数の多さや攻撃の力強さはこの大陸一、二を争うほどだ」
「ツッコミどころが多すぎる」
「優しいヤツだったよ……」
こそこそと未完の情報交換をしているのをよそに、王へのプランコの意見は続いていた。
「プランコと謳われるものよ。どうした」
「はい。勇者様の武力についてです。ご存知のとおり、私は荒れくれ者でしたが、勇者タケシ様によって改心させていただき、共に魔王との戦いに出向きました。かの有名な『ホンルイダオウパレンディン』、『テツワンイワゼ』、『ショフトドリダニ』、『エースマエノケン』、『キャプテンアベジン』とのパーティで挑んだ決戦を知らないものはいないほどです」
どこにツッコんでいいのやら。
ウィンは頭を抱えた。
「お主、やりすぎだ」
「無敗のマ王に勝つにはそれしか思い浮かばなくて」
「魔王だ。引っかかるぞ」
けれどもプランコの話には熱が入っており、二人の小さな内緒話を聞くものなど一人もいなかった。
「しかし、そのような伝説を作りました勇者タケシ様におかれましても、当初、力を上手く使えなかったとお聞きしております。どうでしょうか。この私に、どうか武術指南役をさせていただけないでしょうか」
「ふむ……。シュイダシャプランコよ。お前が勇者タケシを救えなかったことを、とても後悔していることを余も存じておる。しかし本来の護衛任務のこともある。……そうだな。一週間だ。全国を渡るとしても、風の馬であれば一ヶ月で足りるのだ。一週間で旅に支障が出ないようにしろ」
「はっ。ありがたき幸せ」
満足したのか、笑顔でプランコは所定位置まで下がった。
意見は以上で、他には何もなく、謁見は終了した。
ビューテ姫が率先して勇者一行を客室に案内する。三部屋あり、綾瀬とクリス、勇人と裕也、武とウィンという内訳になった。
なにはともあれ、激動の一日が終わろうとしている。




